サネモト

本の感想、音楽、旅行、展覧会などなど

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『みどりいせき』/ 大田ステファニー歓人 | 新しくて面白くて笑ってしまう

第37回三島由紀夫賞受賞作、第47回すばる文学賞受賞作。まず読み始めて思ったことは、読みづらい!だった…なんせ書き出しが 「あれは春のべそ。まぁ、そんなわけないし、もしそうなら、みんないつか死ぬ、ってことくらい意味わかんないし、わかんないものはすこし寝かせたい。」 って、もうなかなかすんなり飲み込みづらい…と思ってたけど、読み進めると止まらなくなって、最後は読み終わるのが寂しかった… 独特の口語体が評価されてるかもだけど、個人的にこの小説はストーリーが映画的に面白くて、何よ

    • 『きれはし』/ ヒコロヒー | 超文章上手い人のエッセイ

      マジでヒコロヒーってすごい。 芸人としてのヒコロヒーは、正直トークサバイバーで面白かった人、CMに出てる人、くらいのことしか知らなかった。なんかこう、説明しづらいけど、一周回ってオシャレでしょ?みたいな人だと思ってた…でもこの本を手に取るということは、何かしら気になってたんだろうな。 気分転換に芸人の軽めのエッセイでも読むかと思って読み始めると、読んで数分で違和感に気づいた。この人文章うますぎない? 芸人に限らず作家やその他諸々の人たちのエッセイを読んでも、こんなに文章う

      • 『まとまらない言葉を生きる』/ 荒井裕樹 | これからどんな言葉を残していくべきか

        いろいろな言葉が紹介されている本。単に偉人の発言や名言みたいなものではなく、ほとんどが、障害や病気とともに生きる人たちの言葉だ。 「言葉が壊れてきたと思う」という話からこの本は始まるけど、その通りだと思う。若者の言葉遣いや正しい言葉、みたいな話でなく、あらゆる場面の言葉が壊れているとは自分も思う。 切り取られたり、コンパクトにまとめられたコンテンツが多すぎる。でも別に自分もそれを享受しているからな…となんとなくモヤモヤした気持ちで読み進める。 代表的なこととしてあの「相

        • 『ここはすべての夜明けまえ』/ 間宮改衣 | ひらがな最終兵器彼女

          知ったきっかけは星野源がラジオでおすすめしていたから。 生きててよかったと思える本とは一体…?と思って読み始めたけど、面白い、というよりずっとうっすら悲しくて、読み終わった後の余韻がすごい話だった。何かに似てるな、と思ったら昔読んだ「最終兵器彼女」を読み終わった時の気持ちに似てた。 読み始めるといきなりひらがな。 ストロングスタイル…とまず思った。単純に読みづらいから、よっぽど面白くないと途中で読むのやめちゃうんじゃないか?と謎の心配をしつつ読み進める。面白い。でも悲しい

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          『俺が公園でペリカンにした話』/ 平野夢明 | 狂人しかいないキノの旅

          580ページ近くあるこの本、はっきり言って読み終わるとどっと疲れた。この分量の本で、こんなにまともな人が出てこない本は他にあるのか? ストーリーは簡単、ヒッチハイクでいろんな町に行くその日暮らしの男の話。マジでそれだけだけど、聞いたこともないような罵詈雑言が飛び交い、意味不明な行動原理の人ばかりがいる。嘘だと思うなら適当にページを開いてみればわかる。まともなページが存在しない。こんなに分厚い本なのに… 適当なページをめくってみる。 「あ〜おれゴメン。ニュースだめ。全っ然、

          『俺が公園でペリカンにした話』/ 平野夢明 | 狂人しかいないキノの旅

          『この素晴らしき世界』 / 東野幸治 | 悪意に満ちた芸人の面白エピソード集

          東野幸治による芸人の奇人変人エピソード集。 いや〜全部面白い。特に引用したキングコング西野は悪意がありすぎる。褒めてるかと思ったら結局イジリまくってる。 西川きよしや坂田師匠なんかの大御所から、南海キャンディーズの山里やピース綾部なんかの中堅芸人なんかの面白エピソードが満載。しかも東野幸治が書いていることもあって、笑えないような話も笑い話として書いてあって二重に面白い。 わかりやすいものでいうと次長課長の井上の回。 最後の晩餐には何が食べたい?と東野が井上に聞くと、井上は

          『この素晴らしき世界』 / 東野幸治 | 悪意に満ちた芸人の面白エピソード集

          『極限推理コロシアム』/ 矢野龍王 | どストレートなタイトルのデスゲーム

          第30回メフィスト賞受賞作。 メフィスト賞はなんというか、自分の好みに合ってるんで、気に入っている小説にメフィスト賞受賞作は多い。そのうち全作読みたいと思ってるくらい。 そしてこの本。まずタイトルがいい。 極限推理コロシアムって…マジで直球ストレートすぎて、最高。 読み終わってみると、たしかにそんな話だけど、ちょっとした恋愛要素もあって、「極限推理」というほどではないかも…いや、まぁ生き死にはかかってるという意味では極限か。しかし読む手が止まらない本。一気に読み終えた。

          『極限推理コロシアム』/ 矢野龍王 | どストレートなタイトルのデスゲーム

          『同志少女よ敵を撃て』/ 逢坂冬馬 | 狙撃兵になったロシアの少女

          2022年本屋大賞受賞作。知ったきっかけは、バキ童ことぐんぴぃのnoteで、何年か前のベスト10に入ってたんで、なんとなく気になってた。戦争ものっぽいけど、本屋大賞受賞作だからあんまりシリアスな感じじゃないかと思ってたけど、思ったよりシリアスだった… 舞台はドイツと戦争中のロシア。家族や村を焼かれた女の子セラフィナが狙撃兵になる話。 ドイツ兵に村を襲われ、セラフィマは狙撃兵に母親を撃たれて殺される。その後やってきた味方のロシア兵の中に、後の狙撃の師匠になるイリーナがいる。

          『同志少女よ敵を撃て』/ 逢坂冬馬 | 狙撃兵になったロシアの少女

          『想像ラジオ』/ いとうせいこう | 死者と生者をつなぐもの

          『いとうせいこう』のイメージは、子どもたちにとってはNHKの教育番組に出てる人で、自分にとっては日本語ラップ黎明期のラッパー。 『東京ブロンクス』はクラシックだよな〜、みたいなイメージ。久しぶりに聴いたけどやっぱいい曲。センスがいいんだろうな…今でも古びない。ただ、小説となるとどうだろう…という勝手な心配はあった。 とりあえず結論から言うと、素晴らしい小説だった。ただ、同じ東日本大震災を題材にする作品を少し前に観ている。映画『すずめの戸締まり』だ。 『すずめの戸締まり』

          『想像ラジオ』/ いとうせいこう | 死者と生者をつなぐもの

          『あの子が考えることは変』 / 本谷有希子 | 邪悪な同居生活会話劇

          いやー変な本! 話の内容うんぬんより、設定だけで常人には思いつかないパーツの組み合わせだな〜と思ってたら劇作家だということを思い出して、すげーと思いながら読んでた。 一言で言うと、いわゆるイタい女2人のワイワイ生活本。そのうちの1人の変な部分として、自分が臭いと思ってることがけっこうあらすじとか帯とかでアピールされてるけど、うーん、そこはあんまりメインじゃない気がする。 この本ですごいと思ったのは、家族の話が全然ないこと。よくあるイタい人の話であるような、家族環境の悪さ

          『あの子が考えることは変』 / 本谷有希子 | 邪悪な同居生活会話劇

          『ABURAYAMA FUKUOKA 』に行ってきた | 子連れ日帰り

          2024年3月20日に旧モーモーランドこと『ABURAYAMA FUKUOKA』に行ってきた。目的は乳搾り体験。 到着したのは12時40分くらい。祝日だけど駐車場はぜんぜん混んでない。 昔はモーモーランドという名前の牧場みたいなイメージの施設だったけど、今は『ABURAYAMA FUKUOKA』という名前のアウトドア施設に変わって、オシャレ度が増すとともに、夜景が見られるキャンプフィールドや、前なかったスタバやスノーピークなんかができていた。 前受付があったところに行く

          『ABURAYAMA FUKUOKA 』に行ってきた | 子連れ日帰り

          2016SS / SUPREME ステッカーコレクションまとめ

          世の中にあまりなかったステッカーコレクション。海外にはちらほらコレクターはいるみたいだけど、更新が止まってたりできっちりまとめたものがない。そこで随時更新しつつ、アーカイブ化できればと思っている。まずはコンプした中で1番古かった2016年のSSのものを紹介したい。 2016SS2016SS① メインはメンディーニのボックスロゴステッカーだけど、メンディーニの銃モチーフもけっこう好き。パーカーやTシャツをいつか買いたいと思ってる。メンディーニコラボはトレイもいくつか出してて

          2016SS / SUPREME ステッカーコレクションまとめ

          『長沢芦雪展』に行ってきた。

          2025年3月 日に長沢芦雪展に行ってきた。 九州国立博物館に来るのは久しぶり。駐車場からなかなか距離がある。 中にはどデカい山笠の山車が飾ってあった。 中は完全に写真禁止…写真OKなパネル的なものもない。なんで印象に残ったものを買ったポストカードで紹介。 まずはやっぱり『龍・虎図襖』の虎。チラシにもデカデカと書いてあるだけのことはある。 この虎の屏風、思ったよりもデカい。そして迫力がすごい。見に行く前は顔がかわいい虎くらいの印象で、全然思ってたものと違った。体が横から

          『長沢芦雪展』に行ってきた。

          『そして生活はつづく』 / 星野源 | どんなスターにも生活がある

          星野源のことはまず歌手として好きだ。 POP VURISは超名盤だと思うし、素晴らしい曲を作る人だと思う。 そんな星野源の初エッセイ集。今じゃドームツアーをしてる星野源がまだ庶民的な生活をしていた時代の話を知ることができる。単身赴任のお父さんが住むようなマンションに住んでおり、乾燥機を使いに共有スペースに行ったら、大量の女性用下着が入っていてあせったり、皿洗いがめんどくさいと言いつつ、生活自体が苦手なんで楽しもうとする星野源の姿に共感できる。 クスッと笑える話が多いけど、

          『そして生活はつづく』 / 星野源 | どんなスターにも生活がある

          2023年日本語ラップベスト30

          もう3月になったけど、今更個人的な2023年の日本語ラップベスト30をまとめました。最初はベスト10で考えてたのに、全然入りきれずベスト30がちょうどよかった…多すぎるし長いしで時間がかかっていつのまにか3月に…ただ2023年は豊作だったんだろうな。時間がある人はぜひ。 30位『Expert』/ KREVA そりゃ、今年はオジロとの『Players’ Player』がビッグニュースだけど、この曲も良かった。歌ものクレバで、いい歌詞だし。 29位『Higher Remix

          2023年日本語ラップベスト30

          『私がオバさんになったよ』 / ジェーン・スー |誰かの話は心に刺さる対談集

          いいタイトルの本。 オバさんでなくても刺さる話がどこかにある。 昔からジェーン・スーは頭が良くてフェアな人と思ってる。相手の話の要点を掴んで、膝を打つような返しをする。ワードセンスもあって、秀逸な例えをする。そんなジェーン・スーの対談集なら、そりゃ面白い。 対談相手の人選もいい。光浦靖子に山内マリコや海野つなみ、宇多丸ときて、最後は能町みね子。 女性が多いので、ジェンダー論、フェミニズムの話になることもある。しかし、田中俊之との対談では、男性の生きづらさの話をしっかりしてく

          『私がオバさんになったよ』 / ジェーン・スー |誰かの話は心に刺さる対談集