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震気楼№012

昨日、久しぶりに死の匂いを嗅いだ
薬のおかげでもう縁がないのかと思っていたけど、猫みたいに急にスイッと戻ってきた
匂いというのは失くなっても案外気づかないもので、何時ぶりかで香った瞬間に「ああ、こんな匂いだったのか」と認識した
優しい泥のようなものだったんだな


これは比喩ではなくて本当に匂いがした
匂いがする、って事自体はその時に初めて知ったけど、確かに嗅いだ経験はあったんだ
それがどういった事柄なのか苦しみの中では理解どころか認識すらしていず、もう一度同じ体験をして漸く全てがつながり膝を打つ、実生活の中の伏線回収のようなもの
だからこそ敢えての「久しぶり」なのだ
もう既にどんな匂いだったか忘れたけど

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