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act:26-水神様の祟りと御宿の謎のおばさん【後編】

 1976年(昭和51年)晩秋、小学4年生のオレは御宿からやってきた祈祷師のおばさんに、我が家が去年埋めた古井戸の水神様に祟られていることを聞いた。おばさんは急遽祈祷をあげてくれて、一旦は鎮まったということだが、なにせ相手は神様だ。再度あらためて祈祷に来るらしい。
しかしオレとユーイチは、実はその井戸でしょっちゅう連れションをしていたのだ!そもそも井戸に神様がいるだなんて、オレたち小学生が知るわけないだろう。なぜ誰も教えてくれなかったんだ!
‥とはいえオレたちは、いくら知らぬこととはいえ、どうもトンでもないことをしてしまったらしい。まったく後悔先に立たずだ。

(このように井戸の水神様が見ています、バチあたりなので井戸にオシッコしてはいけません)

連れションについては、もちろん最高機密扱いなので大人たちには一切知られていないが、たとえ大人たちが知らなくとも、連れションをしたオレとユーイチの罪は消えない。間違いなく激しく祟られていることであろう。
そこでオレたち2人は、埋めた井戸の水神様の怒りを鎮めるべく、我が町が誇る文化と生活水準の高さの象徴「スーパーデンベー」にてお供物を用意し、しっかりお詫びをすることにしたのであった。

‥と、まぁここまではプロローグでしかない、詳しくは前章 act:25-水神様の祟りと御宿の謎のおばさん【前編】を参照してほしい。


 オレとユーイチは、青龍神社せいりゅうじんじゃを出ると、すぐ酒造小路しゅぞうこうじに入り、ゆるい坂をあがる。この自動車一台分の幅しかない小道は、造り酒屋の豊乃鶴酒造とよのつるしゅぞうの脇を抜ける道なので、昔から酒造小路と呼ばれている。
そういやこの前の夏やすみ、この坂を登り切ったところに巨大なオオスズメバチの巣が出来てて大騒ぎだったんだよな。しかしツワモノぞろいのオレたち大多喜無敵探検隊は、大多喜の愛と平和を守るため極秘のうちに殲滅計画を立案し、そして果敢にも作戦を決行!
見事オオスズメバチの巣の破壊に成功したんだ(※1)。

まだその巣の残骸は残っているが、もうオオスズメバチたちはいない。まさに「兵どもの夢の跡」だ。きっとオレたちの活躍に、町民たちも陰ながら大いに感謝していることだろう。でもどうか気にしないでほしい、オレたちは決して感謝されるためにやっているのではないのだ。何よりこの大多喜町の愛と平和を守ることがオレたちの使命、その務めをただ真摯に全うしているに過ぎない。
‥とはいえ差し入れはいつでも歓迎だ、お菓子やお小遣いをくれてもいいんだぞ町民諸君フフフ、フフフフフ。

 そんな坂を登り切り、造り酒屋の建物に沿ってテクテク進むと、やがて酒造小路は国道297号線のカーブに突き当たる。道の向かいは魚屋「魚重うおしげ」だ。今日もオッチャンが威勢よい掛け声で近所のおばさんを出迎えている。
ここの魚屋は、海の町出身のうちの父さん母さんが揃って太鼓判のお店なんだ(※2)。おかげで年中活きのいいアジやサバ、カツオを母さんがここで買い込んできては、毎日せっせと食卓に並べてくれる。
まぁ確かに魚重うおしげの魚は間違いなく旨い、そこは認めようじゃないか。だがな、オレはこの魚重うおしげのせいでサカナを食べ過ぎじゃないかと最近では思っている。その反動なのか、一度でいいからマルシンのハンバーグを吐くほど食べてみたい。それも1個や2個じゃない、5個や10個は詰め込みたいぞ。そう、吐くほどにだ!
10個のマルシンハンバーグぜんぶにブルドック中濃ソースをベッタベタにかけて、バクバク腹に詰め込むのが最近のオレの秘かな野望なのである。

(現在も売られるマルシンハンバーグ、大人の私は3つが限界でした)

‥まぁ魚重うおしげの話は今はどうでもいいや。ちなみにこの国道のカーブは、正確にはクランクというやつで、カーブが90度になってて向こう側がたいへん見えにくいのが弱点だ。実際この魚重うおしげの前のカーブ(クランク)では、自動車の接触事故や人身事故が案外起きるので、オレたちは「魔のカーブ」と呼び第一級の警戒区域として注意している。
まぁ今日は、そんな道の向かい側には用はない、このまま道なりに角の八百屋と布団屋の前を抜けて、スーパーデンベーに一直線なのだ。


 ほどなくしてオレとユーイチは、スーパーデンベーの前に立った。
ここは、大多喜駅前のディスカウントストアーポピンズと同様、我が大多喜町の文化レベルと生活水準の高さを見事に反映した2大巨頭のお店のひとつだ。その品ぞろえと低価格は、県庁所在地の大都会「千葉市」にも引けをとらないであろう。ひょっとしたら日本国内でも有数の存在なのではないだろうか。多分そうだ、そうに違いない!

(閉店して久しいスーパーデンベー 2013年撮影 現在跡地には太陽光発電パネルが並ぶ)

故にそんなスーパーデンベーの前にくると、いつも軽い緊張感をおぼえるオレなのだ。「今日はどんな商品に出会えるだろう、テレビCMでやってたあのお菓子はあるだろうか」とワクワクする反面、都会人にも引けを取らないお店だからこそ、店員たちに田舎ものと笑われやしないかと、どうしても身構えてしまうのだ。ちょっとドキドキするぞ!

ピンポーン‥
(ブィーーン)


店先で立ちすくむそんなオレの気持ちなど知る由もない自動ドアは、来店を知らせるチャイムと共に、曇った作動音を響かせガラス扉を横に開いた。
自動ドアなんて、め、珍しくなんかないんだからな!
実はこの自動ドアも、オレに軽いプレッシャーを与える存在だ。だって大多喜には自動ドアなんて滅多にない。そのせいか、いつも開かなかったらどうしよう挟まったらどうしようと余計なことを考えて緊張してしまう。
しかしデンベーの門は今こうして開かれた、どうやらオレたちは招かれているようだ。もう後戻りはできないぞ、いざ行かんスーパーデンベーに!

 スーパーデンベーの店内は今日も百花繚乱ひゃっかりょうらん、まるでテレビでみる大都会のようだ!ここはまちがいなく大多喜のどこより多くの商品であふれかえっている。うんうん圧倒的じゃないか、まぶしすぎるぞ。ここにいるだけで心の底から幸せな気持ちになれる!
お店は、入ってすぐに新鮮な果物が並び、その奥にパンやお菓子コーナーだ。最奥部には肉や魚などの生鮮食料品が並ぶが、オレたちが求めているのはこの店内の主に手前側、パンやお菓子コーナーだな。ここでササッと買い込んで、今日のところはとっとと帰りたいと思う。
まぁ今日のオレは、ナウでヤングなジーパン姿なので、都会派のスーパーデンベーのドレスコードでもまったく問題なかろう。だが問題はユーイチだ、ヤツはいつもの大多喜小学校のオレンジ色の体操着姿で、しかも秋も深まりつつあるというのに半袖半ズボン姿なんだ、田舎者丸出しであまりに危険すぎる。このままでは2人揃って田舎者認定を受けて、最悪の場合は店を追い出されてしまうかもしれない。気付かれないうちに一刻も早く買い物を済まし、速やかに店を出るのが望ましい。
どうでもいいが、ユーイチはいつもどおり愛用の金属バットを手にしたまま、当たり前の顔をして店に入ってきていた。
おまえなぁ、そういうものはお店に持ち込んじゃイカンだろう、田舎者認定だけじゃなく強盗に間違われて、大多喜警察署に通報されるぞ!

 「おい見ろよ隊長、こりゃースゲェぞぉ!」
ユーイチの声に振り向くと、そこにはハートチップルがワゴンに山摘みになっていた。一袋30円なのに、ここでは20円で売られてるぞ!つまり4個の値段で6個も買えるということじゃないか。ほほぉ、これはちょっと素晴らしい!
ユーイチは宝の山だと狂喜し、カゴにハートチップルをドサドサ詰めはじめた。今日の目的はあくまで水神様へのお供物の購入だ、水神様がニンニク臭いハートチップルをそんな大量に欲しがるのか疑問に思うが、さっきヤッチャンが言ってたとおりに自分が美味しいと思うものをお供物にという考えならば、少なくともユーイチお勧めのお供物はこれなのだろうな。
でもなぁ、水神様はともかく、ヤツはこんなにハートチップルを食べたいのか、息が過剰にニンニク臭くなりそうだぞ、まぁいいか‥。

(左:現在も関東で主に販売されるリスカ社製造「ハートチップル」写真はLサイズ 右:明治製菓が製造していた「カール カレーがけ」昭和44年/1969年版)

そしてオレが大好きなカールのカレーがけも他所では100円なのにデンベーでは90円!なんと浮いた10円で、駄菓子屋でクジが引けそうじゃないか!これもせっかくなので買っていくことにしたい。
でもこんなに安く売られちゃ、駄菓子屋もたまったもんじゃないな。

 オレが手に持った店内用の買物カゴは既にハートチップルでいっぱいだ、そこにカールのカレーがけと、ユーイチ所望のカールのチーズがけを突っ込み、オレたちはパンコーナーに向かった。次に狙うは山崎パンの傑作スペシャルサンド、これを買わずにどうするのか!
スペシャルサンドは、あんずジャムとクリームがサンドされ、中央にシロップ漬けのチェリーが入ったスペシャルなコッペパンだ、このゴージャスさは他に類をみない。正真正銘、まさに貴族向けの菓子パンといえよう。ちょうどオレのような高貴な子供にこそ相応しいものなのだ!
そんなハイグレードなパンゆえに、これには水神様も大喜びしてくれそうだ、きっとオレとユーイチへの怒りを、まさに水神らしく、きれいさっぱり水に流してくれることだろう。

(昭和から令和の現代まで、凡そ50年は販売されている山崎製パン「スペシャルサンド」)

あとは飲み物だ、やはりここはコーラ一択だろう。ただしオレが好きなペプシコーラはスーパーデンベーでは取り扱われていないので、今回はコカ・コーラでいこう。なんでもコーラならコカ・コーラが世界で一番売れているというので、神様に出すなら世界最高のコカ・コーラのほうが神様ウケがよさそうだ。そしてユーイチは我らが千葉県が誇るマックスコーヒーを選択だ。完璧じゃないか我々のセレクトは!
こうしてオレたちは一通り欲しいものを店内買い物カゴに詰め込むと、足早にレジに向かった。
そこでお店のおばちゃんは疾風はやてのような早業で商品を次々と手に取りレジを叩くと、これまた疾風のように買い物金額を計算してくれた。
シメて620円なり
うわ高けぇ!
‥そうか、いくらモノが安いスーパーだからって、色々買っちゃうと高くなるんだな、まぁ当たり前の話だ。でもまぁユーイチも半分出すだろうし、そうすりゃ1人あたり310円か。まぁそれでも大分高いけど、今回は水神様の怒りを静めるためだ、仕方のない出費だろう。
オレは、なけなしのお小遣いからお金を支払ってデンベーを後にした。
「ユーイチ、あとで半分払えよ310円だ」
ユーイチは少し間をおき、そして小さな声で「‥お、おぅ」とだけ答えた。

さぁ次はオレとユーイチで、水神様にお詫びをするぞ!これで一件落着間違いなし!今買ったお供物を井戸の跡に並べて、心の底から水神様に謝るんだ、そしてお待ちかねのお菓子パーティだぞフフフフフ。


 オレたちは来た時と同じく、酒造小路を通って帰路についた。帰りは下り坂なのでラクラクちん、坂の根元の一本杉まではボーナスステージだ。
そしていつもの青龍神社の前も素通り。
そう、今のオレたちには大いなる使命がある!相変わらずダラダラたむろする暇人のクニオやヤッチャン、ヒロツンとは違うのだよ。

(酒造小路の一本杉 2011年の夏に撮影 今は伐採されて切株だけが残っています)

オレたちは神社の広場を横目に、そのままオレんちとユーイチの家の隙間から、我が家の裏庭にたどり着いた。
ちなみにユーイチの家はオレんちの隣だが、さらにウチの裏手にはユーイチの父さんの作業場が広がっているんだ。ユーイチの父さんは大工の棟梁で、実はオレは裏庭からユーイチの父さんの大工作業をよく塀ごしにコッソリ覗いてる。職人さんって器用でかっこよくて、いつも見ててワクワクするんだ、まったく飽きないんだなコレが!
でも今はユーイチの父さんはいないようで助かった。秘密の儀式をするには好都合この上ない、どうやら天は我らに味方しているようだ。

 まずオレとユーイチは、古井戸を埋めたあたりに胡坐あぐらをかいて座り込むと、お菓子とジュースが入ったレジ袋を一旦逆さまにしてぶちまけ、それからきれいに並べ直した。ハートチップルの赤いパッケージがやけにまぶしいぞ。
さぁここからが本番、気を抜くと水神様の祟りが倍増しかねないからな!
‥だがしかし、ここでオレたちは考え込んでしまった。一体全体どうやって謝ればいいのだろうと。
やれやれ迂闊だったな、さっきヤッチャンにしっかり聞いとけばよかった。うーん、初詣の時みたいに頭の中で思って謝るか、それとも声を出して詫びたほうがいいのだろうか。しかし今は幸いなことに、付近に聞き耳を立てる大人はいないようだし、声を出して謝っても安全だな。
第一水神様は年齢不詳だ、ひょっとしたら歳を喰い過ぎてウチのバァチャンと同じで耳が遠いかもしれない。まぁここは確実性を重視で声を出して、そして出来るだけ大きな声で謝ったほうが良いだろう。
せっかく謝っても水神様が聞こえてないなら意味がないし、これだけ大金つかって選び抜いたお供物も無駄になってしまうぞ。
しかしだユーイチ、そこで問題なのだが、謝る内容を万一誰かに聞かれた場合は、かなりまずいことになるぞ。オレたちが井戸に年中ションベンをしてたことが公にバレるんだ、きっとトンでもないことになる!
ここは念には念をいれ、一人ずつ順番に謝らないか?その際もう一人は付近にスパイがいないか見張るというのではどうだろう。
ではどっちが先にやろうか?
ユーイチは言うには、そもそも何ていって謝ればいいのかまったく見当がつかないので、まずはオレに先にやれと言ってきた。
やれやれこれだから甘えん坊の年少さんは面倒だな。でもまぁ仕方がない、ここは年長さんで、さらに大多喜の愛と平和を守る大多喜無敵探検隊の隊長のオレが、まずはお手本を見せる場ではあろう。

オレは覚悟を決めると井戸の跡に向かって両手を合わせた。そして出来る限り大きな声で井戸の神様に心をこめてお詫びした。

「井戸の神様、水神様、オレとユーイチがしょっちゅうションベンをして申し訳ありませんでした!死んだカブトムシやカエルを捨ててすいませんでした!どうか許してくださいもうしません!」

ふぅ~これで一段落だ。本当はいるならいると、なぜ先に言ってくれないんだ水神様と問い正したかったところだが、さすがにそれはやめておいた。きっと怒るに違いないからだ。聡明なオレには神の心もわかるのだ。
オレが手を合わせて水神様に謝っている最中、ユーイチはあたりをきょろきょろと伺いながら、聞き耳をたてるスパイがいないか気にしてくれていた。どうやら誰にも聞かれていなかったようだぞフフフフフ、オッケーだ!
ひとまずこれでオレのお詫びは完了した、もうこれでオレへの祟りは無くなったに違いない、まさにフリーダム!
さぁ次はユーイチの番だ、年長さんのオレを手本に、しっかり水神様に謝ってくれたまえ!
オレに続いて、今度はユーイチがいそいそと井戸の跡の前に出た、
そして手を合わせると、ヤツは声を大にして謝りだした。

「水神さまぁ~~!いつもここにションベンしてすんませーん!!でも井戸の色がキッタなくてまるで便器だし、神様がいるって知らなかったんです!第一いるならいると何で先に教えてくれなかったんですかぁぁ!あまりに意地悪で性格悪すぎですよぉぉ、ひどいじゃないですかぁぁー!!‥でもすんませんでしたぁー、もうしません!!」

オレはズッコけた。
いやいやユーイチよ、それじゃーまるで神様が悪いみたいな言い方だ。そもそも反省しているように聞こえない。普通は恐れ多くて、たとえ思っててもそこまで絶対言わないぞ!少なくともオレは辛うじて踏みとどまった!
挙句の果てに井戸をまるで便器だとハッキリ言ったな言い切ったよな、しかも思いっきりデカい声で‥。
さすが恐れを知らない特攻野郎ユーイチだ、ある意味見上げたものだ!でもオマエは本気で水神様を怒らせたんじゃないか?
すぐに謝りなおせと伝えたが、こんな恥ずかしいことを何度も出来ないの一点張りだ。アイツはそういうところは強情だからなぁ、まぁ仕方ないか。
でもな、オレは確かに忠告したからな、あとは知らないぞ!
間違いなく祟られるぞ!!

 その後のオレたちは当初の予定通りに、お菓子をひろげてジュースを飲んでささやかなパーティをはじめた。宴は滞りなく和やかに進み、やがてお菓子を全部食べ終えたオレたちは、ゴミをデンベーの白いレジ袋にグシャグシャと詰め込んで、ウチの勝手口に放り込んでおいた。あとはウチの母さんが宜しくやってくれるだろう。
そうしてオレたちは、一人3つ分のハートチップルの強烈ニンニクスメルを漂わせたままで、みんながいる青龍神社へと向かった。
ふぅ、まずは終わってよかったぜ、これであとは近々御宿のおばさんが来て、何事もなくシメの祈祷を終えたら我が家への祟りも完全無欠に鎮まることだろう。でもひょっとしたら水神様の怒りは既におさまったかもしれないな、なにせオレたちがこうして誠心誠意、真心こめて心の底からお詫びをしたんだ、効果がないわけがないじゃないか。
あぁそうだ、どうでもいいけどユーイチよ、310円払えよ!

 オレたちが裏庭から家の前の権現坂通りに出たその瞬間、事件はおきた
「うぉぉぉおーーっ!?」
突然ユーイチが雄叫びをあげたかと思うと、ヤツは道の真ん中めがけて、勢いよくゴロゴロゴロッと転がっていった!
なになにどうした?一体なにが起きたんだ?
オレはユーイチに駆けよった、どうやらビーチサンダルの鼻緒がいきなり切れて、つんのめってしまったようだった。
ヤツの額からは血が流れ、大事なハチマキにも血が滲んでいる。転んだ拍子に、おでこをアスファルトで擦ったようだ。
でも車が通ってなくてよかったな、まさに不幸中の幸いだ。
「おいおいユーイチ、サンダルの鼻緒が切れるなんて、分かりやすいほどに不吉じゃないかハハハハハ!」
オレの言葉に一瞬ビクッとするユーイチだったが、そんなヤツの顔はみるみると青ざめていき、終いには道路の真ん中にヘナヘナと力なく座り込んでしまった。
そしてうわ言のように「す、すいじんさまが‥。」と‥。
どうやらユーイチは(鼻緒が切れたことを)水神様の祟りだと思い込んでいるようだった、年中そればっか履いているからゴムの鼻緒が傷んだんだよ。
いやいや待てよ、でもこのタイミングで鼻緒が切れるって、偶然にしては少々出来過ぎだな‥、こりゃーホントに水神様の祟りかもしれないな。井戸の前であんなことをいうからバチがあたったんだ。

 実はユーイチは、この手の呪いや幽霊などの怖い話が昔からめっぽう苦手で、今回も水神様の祟りというキャッチフレーズに過剰に怯えている。オレが知らないとでも思ったか、知っているからこそ会話の要所要所で祟りを強調しているオレなのだよ。
しかしそれもこれも、ひとえにキサマに強くなってもらいたい親心からだ、けっしてオマエの反応を面白がっているわけではないぞフフフフフ。
そんなヤツなので、もちろんテレビの心霊番組は絶対見ないし、人気漫画のうしろの百太郎恐怖新聞(※3)も絶対読まない、面白いのにバカなやつだな。
でもそうして逃げてきた分、ヤツには心霊話の免疫がまったくないんだ。その結果、オレに言わせりゃたかがサンダルの鼻緒が切れて転んだだけなのに、このように多大な精神的ダメージを被って、いまや道の真ん中で放心状態になってしまっているのだ。
ユーイチよ、おとこは逃げちゃダメなんだ!強くなれ!

オレは、力果てて道の真ん中から動きそうにないユーイチを、危ないからと無理やり引っ張って隅にどけると「じゃー先に行ってるぞ」とだけ伝え、ひとりで青龍神社に向かった。
どうもユーイチの復活にはしばしの時間が必要そうだ、でもそれは己にしっかりと向き合い自らに勝って乗り越えるしかないのだ。いいかよく聞くんだ、けっしてオレは薄情でオマエを放置していくのではないぞ、あくまでキサマに考える時間を与えようとしているのだ、そこはくれぐれも誤解しないように。
‥フフフ、さーて、みんなと何して遊ぼうか。


 悪魔でも呼ぶ勢いの不気味な呪文で祈祷する御宿のおばさん、そしてオレとユーイチが水神様に心からお詫びをして、その後に開催したお菓子パーティ、そんなモーレツな日曜日が終わり、またいつもの退屈で憂鬱な一週間が始まった。

(大多喜町立大多喜小学校 撮影は1977年頃)

正直オレは学校が大嫌いだ、ショッカーやシネシネ団(※4)が突然乱入してきて、爆弾で木っ端みじんに吹き飛ばしてくれないかと常に願うぐらい大嫌いなので、学校に通っている間の記憶はあまりないのだが、ここのところ、ただ一つだけ気になることがあった。
実はユーイチにまったく会わないのだ!
そういや日曜日に放心状態のユーイチを見てから一度も会ってない。月曜日も火曜日も、そして水曜日の放課後も、我らが大多喜無敵探検隊駐屯地の青龍神社に、ヤツは顔を出さなかった。
おやおや、日曜日に道端に放置したのをよっぽど恨んでいるのかな?意外とアイツは根に持つからなぁ、めんどくさい男だ。
それにしても月・火・水と三日連続で顔を出さないとはな、根に持つにしても単純なアイツにしては少々長いぞと不思議に思い、同じクラスの弟のクニオに聞いたところ、なんとユーイチは月曜日から熱を出して、ずっと学校を休んでいるということだった。
家が隣で同じクラスの我が弟クニオは、ヤツが休んだこの三日間、ヤツの分の給食のパンや、学校から配られた父兄宛の連絡物などをユーイチの家にせっせと届けていたという。
なーんだ、最初からクニオに聞けばよかった!でもさぁ、クニオもクニオで早く教えてくれりゃいいのになぁ、まぁクニオは元々寡黙なヤツだし、さらにユーイチとは普段から性分が合わないので、アイツのことを話題にすらしたくなかったのだろう。しかし、まさに灯台下暗しだな!
‥おっと思わずオレの知性が溢れてしまった。

 そんなユーイチは、ようやく木曜日に登校してきたらしい。
その様子はずいぶんとやつれ果てており、徐にクニオをジッと見つめたかと思うと意味深に
「‥水神様の祟りは本物だった」
そう呟いたそうだ。

その日、つまり木曜の放課後は、ユーイチは青龍神社には来なかったが、明けて次の金曜の放課後に、愛用の金属バットを杖のように使いながら青龍神社にやってきた。オレたち一同はもう拍手喝采!
みんな口々におつとめご苦労様!と暖かくヤツを迎えいれた。
久しぶりにみたユーイチは、確かにクニオの報告通りゲッソリしていた。それに足元もおぼつかずヨレヨレとしていた。
なんでも日曜日の夜から高熱が出て、小高病院おだかびょういんで風邪と診断されて太い解熱剤の注射とメチャクチャ痛い抗生物質の注射を続けて2本も打たれたそうだ。挙句にクソ苦い薬を毎日山ほど呑まねばならず、さらに眠ったら眠ったで、白い格好をした爺さんが毎回夢に出てきてはユーイチを睨めつけるんだそうで、お陰でずいぶんうなされたという。
ヤツいわく、あの白い爺さんは水神様に間違いないらしい。
そして最後にひと言「‥水神様の祟りは本物だった」と‥。
あれ?クニオに言ったセリフそのまんまじゃん、もしや気に入ってるだろ、そのセリフ!
でもなー多分な、それ祟りじゃないぞ単なる風邪だぞ!

 そして土曜日、オレは半どんで昼に帰宅すると、ユーイチの両親がユーイチを連れてウチにやってきていた。
なんとヤツは、ウチの井戸にションベンをしてたことを自分の両親に自白してしまったようだ、それで揃って我が家に謝りにきたらしい。
どうやら風邪で休んでる最中、散々家族にこの病(風邪)は水神様の呪いだぁ~祟りだぁ~と、うわ言のように言っていたようだ、そりゃーまともな親なら心配して問いただすわな。
いやいやでも待てちょっと待て、キサマが謝るのはこの際どうでもいいんだが、しかしオレはどうなる?オレも井戸にションベンしてたことがバレるじゃないか!
案の定、ユーイチの家族の話を聞いたうちの父さんと母さんは、驚きの表情と同時に飽きれた目でオレをジィーッと見ていた。
なんだかオレ、いきなりピンチ!

 そんなオレの気持ちなど知ったこっちゃないぞとばかりに、ユーイチはうちの両親にも、水神様の祟りで色々とヨクナイことが起きているんだと語り始めたぞ、またソレかよ!
良くない事だと?
ハァ~?
オマエのボロいサンダルの鼻緒が切れただけだろう、それで転んでオデコを擦りむいたことか?他になにがある?風邪ひいたことか?
秋も深まり薄ら寒いのに、年中半袖半ズボンだから風邪をひいたんだ!
さらにユーイチは太い注射も苦い薬も全部水神様の祟りだと言いきりやがった。まったくトンでもないやつだ!
案の定、ユーイチの両親も笑ってら、つられてうちの両親もクスクス笑いはじめた。そりゃそうだよな、まわりの大人が真人間でよかった!

 そんなユーイチの話を聞いてた父さんが切り出した。
明日の日曜日に祈祷師が来るので、一緒にご祈禱を受けたらどうかと持ち出したんだ、それで勇一くんも、少しは安心できるでしょうと。
オーイェーなんて展開なんだ想定外だ‥。
そして明日、あの恐ろしい呪文を唱えるおばさんが来るのも初耳だ。せっかくの日曜日が台無しじゃないか。
しかし良いこともあった、ユーイチの謎の祟り話のお陰で、調子が狂ったのか場が和んだのか、父さん母さんからのオレへのおとがめはウヤムヤになった。ちょっと助かったな。


 そして日曜日、父さんが言ってたように、御宿の祈祷師のおばさんがやってきた。正確には父さんが車で迎えにいったんだけどな。
しかし今日の御宿のおばさんは、なんというのか、やけに物々しい、物々しいというか禍々まがまがしい姿だ。何だろうこの異様にカラフルでヘンテコリンな和服は?赤、青、黄、緑の和服なんて初めて見た。なんとも形容しがたいが、あえていうなら信号機のランプが全部灯ってるような鬱陶うっとおしい派手さだ。少なくともオレは並んで歩きたくない格好だな。
さらに今日のおばさんはテッペンに花がついた金色の冠を被っている。冠からは妙な紐が垂れているぞ怪しすぎじゃないか!

(巫女の正装をした御宿のおばさんは、こんな感じでした。)

そして色とりどりの紐を巻き付けた大きな扇子を大事そうにしっかりと握っていた、これは檜扇ひおうぎという名前だそうだ。暑くなったらそれを広げて仰ぐのか?それともオレたちを叩くつもりか?
他にも大きな鈴がいっぱいぶら下がった謎のアイテムもご持参だ、コレはよく見ると長いリボンが付いてら。いったい何をする道具だ?名前は神楽鈴かぐらすずというらしい。本気で悪魔でも召喚できそうだな。

(神楽鈴とは、こういうものです)

聞けばこれが巫女の正装なのだという。
ヘェー巫女の正装なのかぁ。でも巫女さんって、あの神社にいる白い服のネーチャンのことだろ?御宿のおばさんみたいに派手じゃないのはオレだって知ってるぞ。第一おばさんは祈祷師じゃなかったのか?うちの父さんはそう言ってたぞ!
‥ははぁ、子供だから知らないと思ってオレをだまそうとしているな、
やはり御宿のおばさんは極悪で怖い呪術師に違いない!

 そして今日はユーイチと、その両親も参加だ。父さんは迎えの車の中で事情をあらかた説明していたようだったが、ここであらためてユーイチの家族を御宿のおばさんに紹介、その経緯も具体的に話しはじめた。
そしておばさんは、オレとユーイチの話、つまりオレたちが井戸に連れションをしてた話を聞くと口に手をあてて笑った、そしてあまりにバカバカしかったのか笑いが止まらなくなったようで、いつまでもホホホホホッと笑っていた、‥なんだか無性にイラッとするぞ。
そして最後に「困った子、オホホホホッ」だってさ。
しかしこの笑い方は聞き覚えがあるなぁ、あぁ!同級生のマサキフジコに借りた漫画「ガラスの仮面」月影先生(※5)みたいじゃないか。
月影先生みたいに恐ろしい子、オホホホホッじゃなくてまずはよかったかもな、連れションのことで実はムチャクチャ怒られるんじゃないかと、戦々恐々としてたんだ。

 程なくして祈祷の準備が始まった。今はなき井戸の前には棚が置かれ、右から野菜、正月でもないのに鏡餅、塩、日本酒、鯛、果物が並べられ、その向こうで、うちの父さんとユーイチの父さんが一緒に井戸の跡に穴を掘り、用意した空気抜きの竹竿を埋める。
その間、御宿のおばさんは、あの派手な格好に似合わず、静かに手をあわせて、ずっと祝詞をあげていた。
空気抜きの作業が終わると、今度は並べられた食べ物や酒の前に香炉が置かれて、なんとも不思議な匂いのするお香が焚かれた、間もなくあたりにモワーンと謎めいた匂いが漂い始める。そして数本の大きなろうそくに火がともされたぞ。
いよいよ準備万端か、どうやらここからが本番だ。
あの激しくも恐ろしい呪いの儀式が、いやいやうっかり間違った、気合いの入った祈祷が始まるようだ。

 狭い裏庭には敷物が敷かれ、そこに一同が座りこんだ。
おばさんは相撲取りのように辺りに盛大に塩を撒くと、今度は演歌歌手のようにコブシを利かせた喋り方でなんだか語りはじめた「‥かしこみかしこみ~」「‥はらいたまえぇ~きよめたまえぇ~」とか言ってる、漫画みたいで面白い言葉だな!でもあとはなんだかゴニョゴニョしててよく聞き取れないや。
おばさんが井戸に向かって深々と頭を下げると、オレたち一同も、一緒になって頭を下げた。
そして前回と同様に、呪いの呪文みたいな祝詞が静かに唱え始められた。
祝詞は時間が経つうちに徐々に激しさを増し、さらにところどころで両手を激しく合わせてパーン、パーンと乾いたデカい音を鳴らす。
これは柏手かしわでと言い、神社でもよくやる作法だけど、それにしてもデカい音でビクッとさせられる。

 いよいよあの謎装備のお出ましだ、大きな鈴がブドウの房のようにたくさんくっついて、その先に長いリボンがついた神楽鈴が出てきたぞ!
おばさんは神楽鈴を手に持つと、今度は祝詞の抑揚に合わせて虚空にクギを打つように振り始めた!そのたび大きな鈴の音が、これまた恐ろしいほどの大音響でシャリン!シャリン!シャリーン!と鳴り響き、付近一帯に不気味にコダマする。この音は脳みその奥底にこびりつくぞ、うるさいどころか本能的な恐怖を感じる音なんだ!
よく見ると御宿のおばさんは、神楽鈴を持ったまま両手をそろえて動かして、なんだか踊っているようだった。おぉ!なんだか前の祈祷とまったく違うな!よくいえば荘厳だけど、もっというと見てはいけないものを垣間見ているような‥、なんとも不思議な光景だ。
埋めた井戸の前に置かれた皿で、祝詞の合間で御札みたいなものを次々燃やしている、御札が燃えるたび大きな炎が噴き上がって、火の粉が舞うんだ。こんな狭い裏庭で火を炊いていいのかな?火事にならないかちょっと不安だ。
でもそんな不安さえ軽く吹き飛ばす勢いで、祈祷の祝詞は一層激しくなる、どんどん、どんどん激しくなって、、
やはり今回も御宿のおばさんは目を吊り上げて真っ赤な顔になってら、この形相だけだと誰かにこっぴどい呪いをかけているようにしか見えないんだが‥、どうも今が祈祷のピークのようだった。
それにつけても、このお香の不思議な香りと、抑揚があってリズミカルな祝詞、さらに時折振り回すあの神楽鈴のデカくて耳障りな音に、鈴の柄から生えるリボンが蛇のように宙をくねる様よ!
ちょっと現実離れなこの場の空気に呑まれたのか、オレは次第に頭がクラクラしてきて、だんだん何も考えられなくなってきていた‥。

 今日は前回以上に、永遠に続くかのような激しい祈祷だったが、それでもやがて、嵐が過ぎ去るときのように徐々に穏やかになっていった。
そんな時だった。おばさんの謎の鈴踊りに圧倒されボンヤリしていたオレの頭の中に、唐突に白髭の爺さんが浮かんだんだ。
驚いて目を大きく見開くと、なんとオレの眼前に小さくて白い光がふわふわと浮いていた。
ボンヤリしてて目のピントが合わなかったから、今まで気づかなかったのかな、なんとも不思議な温かみを感じる光だった。
その白い光は井戸の跡を、ゆっくりとゆっくりと右回りにまわると、今度はまるでミミズのようにスーっと緩い曲線を描いて宙に伸び、そのまま空に向かって登っていったんだ。

 いつしか、辺りは静かになっていた。
御宿の祈祷師のおばさんは、口をポカーンとあけたままいつまでも空を見上るオレに気づくと、薄く微笑みながらいった
「見えたのね?あれが水神様よ」
おばさんの説明では、祈祷は無事に終わり、水神様の障りはこれでしっかり治まったとのことだった、もうこれで大丈夫らしい。
ユーイチも問題なしだということだった。


 終わらない悪夢にも似た摩訶不思議で奇妙な祈祷はこうして終了した。
そうしてしばしの間みんなで談笑したのち、父さんがおばさんを御宿に送っていくというときだ、
おばさんはオレだけに話しかけてきた。

‥いい?よく聞いて
あなたはね、いずれこの町を離れるの
ここにいてはダメ、あなたは伸びない。
でもね、根付いた土地で家を継ぐから大丈夫よ。
それはあなたのご先祖や産土神様、護り神様が望んでいるの。
ご先祖たちが何人も何人も
今も、これからも守ってくれているから最後の最後で強い。
天寿を全うするまで新しい土地で、自分を活かしなさい。
ただね乗り物には気をつけなさい、特にオートバイはダメ。
死にそうになるわよ、でもね死なない大丈夫。
‥あとね、初めて会った時から気になってたんだけどね、
まだ子供だからわからないでしょうけど
あなたには、はっきりと女難の相が出てるの。
あなたが悪いわけでもないのに、
何度も何度も女性と揉めるから十分注意なさい。
でもあなた、女の敵だわホホホホホッ
(※6)

なんだなんだオレの未来が視えるのか?
それにしても何なんだ、たった今そこで見てきたような不気味な物言いは!
急に背筋が寒くなったじゃないか、まったく気持ち悪い!
最後の最後の別れ際だというのに、このおばさんは、どうして不安になるような言葉をオレに浴びせるんだろう、眠れなくなりそうだ勘弁してくれ!
オートバイはともかく、オレに女難が出てるだと?
‥フ、フフフフフ、オレは大多喜無敵探検隊の隊長として、おとこを磨くべく日々精進しているため女っ気などまったくない!これでも硬派なのだ!
そんなこのオレが女の敵だと?なーにがホホホホホだい!
上等じゃないか、オレはオンナなんか大嫌いだぁぁーー!!


 1976年(昭和51年)晩秋、
我が家の祟りを無事静めた御宿のおばさんは、その別れ際にまるでテレビの予告編のように不安感たっぷりのオレの未来を語って去っていった。
お陰で本当にしばらく眠れなくなった。
まったく酷いおばさんだ!
そんな少々オカルトじみたオレの思い出ばなしだ。
‥あぁそういえば、スーパーデンベーで立て替えたお金、まだ返してもらってないや。
ユーイチ、310円払えよ。

【注意】登場人物名及び組織・団体名称などは全てフィクションであり画像は全てイメージです…というご理解でお願いします。

【解説】
(※1)オオスズメバチの巣の破壊については「act:6-オレのなつやすみ オオスズメバチを征伐せよ【強行偵察編】」と「act:7-オレのなつやすみ オオスズメバチを征伐せよ【真夏の死闘編】」をご覧いただきたい。当時の私たちは、確かにオオスズメバチの巣を完膚なきまでに破壊殲滅したのだ。ただし大人になった私は声を大にして言いたい。令和のチビッ子は、絶対こんなことをしてはいけない。最寄りの自治体などの所轄機関に、まずは連絡することを強くお勧めしたい。
(※2)私の父は、南房総市和田町、母は鴨川市の出身だ。だからなのか両親ともに魚の鮮度を含めた良し悪しには異様に口うるさく、私自身もそんな両親のもとで育ったので、自ずと私も魚の目利きが出来るようになった。しかし私が好きな食べ物は、干しそばで点てる毎朝の一杯と、から好しの唐揚げ弁当だ。魚には両親同様にうるさいことを言うが、実はそれほど好きじゃない。
(※3)「うしろの百太郎」と「恐怖新聞」は、心霊研究家としても知られる「つのだじろう氏」による心霊現象をテーマにした恐怖漫画だ。私は彼の漫画が大好きで子供のころからよく読んでいた。
(※4)ショッカーやシネシネ団、きっと一度は聞かれたことがあるかもしれないが、ショッカーは仮面ライダーの敵の、悪の秘密結社だ。しねしね団は愛の戦士レインボーマンの敵で、日本人を憎悪し日本国家の滅亡と日本人殲滅を企む組織で、外国人によって組織された謎多き秘密結社である。私は実は昔からヒーローものの敵側にずいぶんと入れ込んでいた。
(※5)「ガラスの仮面」は美内すずえ氏による日本の少女漫画。月影先生(月影千草)はその物語の随所で強烈なインパクトを放つ往年の大女優で、劇団つきかげ主宰者、主人公の北島マヤの師匠である。
(※6)今回せっかくなので、御宿のおばさんから教えてもらった私の未来予知内容を記してある。もちろんこれは全部じゃなく、且つ内容はもっと具体的だった。それに実はこの後も何度か会って、そのたびに私の未来を教えてもらっていた。その上で公開して差支えある内容は思いきり省いている。
でもはっきり言って私の人生は、まさに御宿のおばさん(鈴木さん)の言った通りになっているのだ。そのことに最近あらためて気付く機会があり、今更ながらかなり驚いている。
そしてこの御宿のおばさん「鈴木さん」の祈祷は、基本的に神道の祝詞をあげていた。神道の祝詞については、私自身が最近、神社に深く関係するようになってあらためて気づいたことだ。そして彼女の祈祷は、随所に陰陽道や修験道の九字切り、九字護身法などが混じっていたように記憶している。
加持祈祷とは、その術者それぞれで、神道をはじめ陰陽道や修験道、真言などを巧みに混じり合わせて使用していると聞いたことがあるが、御宿のおばさんもきっとそうだったのだろう。

大多喜町MAP 昭和50年代(1970年代)

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