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なぜ働いていると本が読めなくなるのか

有隣堂のキャラクター・ブッコロー氏に一目惚れして、有隣堂にどうしても行きたくなり、満を持して恵比寿店にお邪魔した時、ふと目に入った三宅香帆さんの本。

「なぜ働いているとと本が読めなくなるのか」

気づいたらノンフィクション大賞をとっていらした。

特に前情報もなく手に取った本がまさかこんなに売れているとは。三宅さんのあまりの若さに調べてみたらご自身がYouTubeチャンネルを持っているような明るい可愛らしい女性だった。今時の文芸評論家とはすごいなぁと思わずため息。

なぜ売れたかって?題に全てが凝縮されている。

読みたいのに…

そう、私は本を読みたいと思っていた。
世界の定義を深めたい。体系的にオーソライズされた知識を吸収したい。そして正しい選択をしたい。感情を使いたい。もっと色々な方向に感動して、生きてる醍醐味を味わいたい!

本にはぜんぶ詰まっている。なのに、本に手が伸びない!

こんな心の叫びを持っている人全員に、刺さったんじゃなかろうか。

減らない積読。
スマホを見ている時間はある。
漫画も読む。
テレビも新聞も見るし、Amazonプライムで映画やらドキュメンタリーやらは見ている。
なのに本を読まない。
なぜなのか。なぜこんなに食欲が出ないのか…?

ノイズと読書欲の関係

個人的には…この本の中には答えは書いていなかった。
(あくまで個人の感想です)

三宅さんの主張としては、読書には、予想しなかったノイズ的な情報が含まれていて、現代の無駄を省き効率化する仕事の仕方とは根本的にかけ離れた活動だからだとのことだった。一理ある。

自分の求めている情報だけが上部にソートされるアルゴリズムに支配されたSNS、調べものもピンポイントで欲しい情報だけを引き出せるネット検索。

しかし、パズドラは…欲しい情報なのだろうか?
私の中で「ハマってしまう」タイプのゲームは脳の快楽物質をカスカスになっても出し続けさせる、ジャンキーな、栄養のないポテチのようなものだと思っている。
あの類のものは、欲しい情報だからではなくて、ただ中毒性が高いだけだ。

比べて本は、果たして本当に雑音が多いのだろうか?予想外の情報が入ってくるから、働いていると、摂取したくなくなってしまうのだろうか?

私としては、本を選ぶ時点で題名から読みたいテーマについて書いてありそうな本を選ぶ。その時点でちゃんと欲しい情報ではないのか?

確かに、本には予想外の情報も含まれている。
しかしネットニュースをダラダラ眺めていても、予想外の、雑音のような情報は山ほど垂れ流されている。別にみたくもない芸能人のニュース、嘘か本当かわからない政治の話、興味のない生活情報、うるさい広告…

ネットで流れてくるアルゴリズムで好みに合わせてソートされたどうでもいい情報を摂取する面倒くささと、予想外の情報も含む(しかし体系的でオーソライズされた)情報を本から摂取する面倒くささと、何が違うんだろうか?

良質なAha体験と、集中すること

考えてみたら当然、後者の方が良質なAhaの量が圧倒的に多く楽しいはずだ。それならなぜ本からこんなに離れてしまっていたのか…。

三宅さんの分析に完全に同意することはできなかったが、時代の変遷がキーであることは間違いない。

読み終えて私は気づいてしまった。

単に、なんととなく、生活からハブられていた読書という行動に「慣れ」れば良いのではないか?
「あれも!これも!」の世の中で、頭の切り替え、静かに一つのことに集中すること、それこそ、瞑想のような作業が、できなくなっているだけなのではないか…?

ネットは集中せずともダラダラと脳の(質の悪い)快楽物質が得られる。読書で楽しくなるには、集中力が必要だ。

好きなだけ読んで良いのだ!

気づいてからはこれまでの遅れを取り戻すように読書を始めた。
三宅さんは年間365冊の本を読むらしい。
私はなぜ、1ヶ月に一冊は読む!などと目標を決めたりしていたのか…(まるでやりたくない宿題の扱いではないか)
なぜ必ず一冊ずつ読み終えないといけないと思い込んでいたのか…(苦行か?と、突っ込みたくなる)
そんな決まりはどこにもない。
時間の許す限り、好きなように並行して、1日に何冊読んだって、読み切らなくたっていいのだ。

三宅さんの本のおかげで、私の机上の左右には、十数冊の「お楽しみ」のタワーができた。常時更新されるやつで、ネットを見ているより何百倍も楽しい。毎月の家計簿に予算まで作ってしまったりした。

ここまで題名に全てが凝縮されているノンフィクションは初めてだった。

100%同じ分析ではなかったけれど、「情報」「知識」の定義や、働き方、生き方に対する三宅さんの意見にはもろ手をあげて賛成だ。
三宅さん、本当に大事な問題提起をありがとう。
おかげでこれから私は人生を生きられる。

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