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「あんかけ焼きそばの謎」を読んだ

著者:塩崎 省吾

カリッと焼き上げた中華麺や揚げ麺に、熱々で具材豊かな餡をたっぷりからめて楽しむ「あんかけ焼きそば」。その発祥や伝播について考えたことがありますか?この料理は、私たちにとって馴染み深いものですが、その歴史にはソース焼きそば以上に謎が満ちています。

たとえば、中国には揚げた麺の「炒麺」は存在しない?では、日本の「堅焼きそば」と「細麺皿うどん」の関係は?著者はこれらの謎を解き明かすため、戦前の東京から横浜・長崎、さらにはアメリカへと壮大な旅を繰り広げています。歴史を辿りつつ、美味しさのルーツを解明する姿はまさに「焼きそば探偵」と呼ぶにふさわしい。

私はこの本の前作にあたる「ソース焼きそばの謎」を読んでいなかったのですが、そんな自分を悔やむほどの充実感!「読まなかった自分が損している」と思わされる内容でした。

知られざる「炒麺」の世界

「あんかけ焼きそば」や「ソース焼きそば」が当たり前のように存在している私たちの食卓。しかし歴史をひもとくと、江戸から明治の時代にかけて「炒麺(やきそば)」が日本に伝来し、当時は「ヤキソバ」と呼ばれていたのだとか。

横浜に存在した最初の中華料理店「会芳楼」の古いメニューには、「ぶたそば」や「ぶたまんぢう」と並んで「鳥やきそば」という文字が。著者は、この一枚のメニューを手がかりに、実際に食べ歩きながら物語を紡いでいきます。

途中では長崎名物の「皿うどん」と「ちゃんぽん」の深い関係、さらにはアメリカ式中華料理「チャプスイ」にまで話が広がります。この探究心、どれだけ貪欲なのか!読み手としては、次々とめくられるページが止まりません。

読後の余韻

読み終えた後、一言で言うならば「濃い」。著者が一つのテーマに対してここまで徹底的に調べ尽くせるのか、感服すると同時に、自分も何かを極めたくなるような気持ちになりました。

途中で私の好きな横浜中華街の「萬珍楼」が登場したのも、個人的に非常に嬉しいポイント。最後まで読み切った後には、満足感とともに、ちょっとした達成感すら感じる本でした。


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