夜はじっと動かない。
「ふたつとない幸福」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017
その闇はやわらかいけれど香りを放たない。音楽も聞こえない。じっと動かずただ沈黙しているだけなのです。
夜の暗さは想像力を刺激します。子供の頃、暗闇はちょっと怖かったけれども不思議を感じる空間でもありました。陰影はまた単に黒一色ではなく繊細な何種類ものグレーや、インクがにじんだような複雑な濃淡があるように感じます。
「夜は昼よりもたくさんの色であふれているのだよ。」ファン・ゴッホ これは「星月夜」を描いたゴッホが弟テオに宛てた書簡に記したとされる言葉ですが、画家の実感だったのでしょう。
国、地域により違いはあるとは想いますが現代社会の夜はとんでもなく明るすぎてゴッホが見たような夜空は到底見ることは出来ないのかも知れません。 ローソクやランプの灯りは明るすぎず暗黒の中にゆらりかすかに存在するから神秘的なのでしょう。21世紀の夜に輝く膨大な数の高性能の照明は人々が想像を 膨らます絶好の暗がりを奪っているように想えてなりません。