やわらかな夜に蓮の花が咲いた。
「花はどこへいった」
25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017
メリメリと内側から顔を破り裂き出現したこの蓮のようにみえる花は果たして脳髄から湧き出でそれを養分とし花開いたのでしょうか。 (蓮は泥の中から出て美しい花を咲かせるところから汚れなき花とされ特に仏教ではその象徴的な存在のようです。)
15年前になりますが上野の国立博物館で観た仏像展。多くは円空仏や木喰仏が人気の的だったようですが、ボクのお目当ては平安時代(11世紀)の今日では仏師のその名も伝わらない「宝誌和尚立像」(京都・西往寺)と 呼ばれる仏像(web検索で画像が見られます)。 この像はその顔が中心から左右に裂け、さらにその裂け目からもうひとつの顔がのぞいているというもので仏像ファンにはよく知られているようです。 この和尚は中国の南朝時代に活躍した実在の僧侶で外側の顔も内側の顔も 瞑想をしており伝承によるとこの内側の顔は本来は十一面観音なのだとか。 蓮の花の台座に立つ像高は160㎝余りで全容を針葉樹の一木から彫出しているとのことで、その赤さびにも似た色合からはヒノキを感じさせます。全身に非常に端正なノミ目をとどめており時間の風化によるザラつき感も独特の オーラを醸し出しているように感じました。
「人は誰しも体の内に仏が宿り、生きたまま仏と化す。」という教えが秘めれているそうです。
仏教には門外漢のボクなのですがこのたぐい稀なイメージの輝きを持つ立像の魅力は今もボクの内に特異な光を残しているのです。