ひとすじの涙が。
「解放」
25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017
( noteホームのヘッダーに使用している作品です )
「顔」は人間を最も象徴する存在確認の「装置」ではないでしょうか。
親子4人が一つの部屋で寝ていた幼少期。わが家の長押(なげし)にはなぜか能面が飾られていました。否、今にして考えればあれはきっとレプリカだったのだろうと想うのですが。それは僕が仰向けに寝て顎を少し引くとちょうど目線の先に見えたものでした。暗闇の奥からほの白く浮き出て冷えた面立ちで僕を見つめているのです。子供心には夜に見るそれは怖いものでした。「おかめ」を鋭く妖しげにしたような女性の顔で、「増女」と呼ばれる面相らしいというのは後付けで知ったことです。
ある時は笑っているようでもあり、ある時は泣いているようでもあり、またある時は怒っているようでもあり、実に不思議な見え方をするのでした。