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映画『セーフティ』から、アメリカの銃撃事件を考える

SAMANSAの映画『セーフティ』は、とある小学校で起こった銃撃事件の悲劇を鮮明に、そしてリズミックに描きながらも、その登場人物たちの関係や背景についてはほとんど明かされていません。

しかし、その”空白”こそが、アメリカの抱える闇をまざまざと見せつけています。

平凡な青年は、なぜ犯罪に手を染めてしまったのか。
あの時の先生の行動は何を意味していたのか…。

今回はアメリカの銃事情とともに、『セーフティ』をお届けします。

〈作品時間〉13:52
〈監督〉Fabrice Joubert
〈あらすじ〉普通の小学校で、何気ない普通の日に響き渡る銃声。状況をすぐに察した先生と生徒は身を守るために隠れるが、犯人は予期せぬ人物だった。アメリカで毎年起きる銃乱射事件をリアルに描いた恐怖の作品。

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犯人の正体は?

銃撃事件を起こした犯人は、主人公の少年の兄・ダンでしたが、それ以外の詳細については描かれていませんでした。

SAMANSAユーザーの方々の間でも、ダンの素性について様々な考察がされていましたね。

残念ながら、こちらに関する監督からのコメントはなかったため、私たちの想像に任されていると言えます。

ただ、ダンの弟が通っており、家からも近い学校であったことから、ダン自身もこの学校の出身者である可能性や、ダンと先生が知り合いであった可能性は高いのかもしれませんね。

一つ謎であるのは、少年が部屋から飛び出していった時になぜ先生は助けにいかなかったのか?という問題ですが、

ダンと先生、そして弟の間になんらかの関係があって、感づいていた可能性がありますし、単に、下手に動くことで隠れていた生徒たちが被害に遭うことを避けた可能性もあるのかもしれません。

いずれにせよ、この映画に正解はないようです、、。


小学校の銃撃事件はよくあること?

アメリカでの銃撃事件はよくニュースで目にされる方も多いかと思いますが、この映画のように、学校での事件が多いのも現状です。

 「K-12学校乱射事件データベース」によると、1970年から2022年1月までに起こった学校乱射事件の数は、1924件。過去最高だったのは2021年の249件だそうです。

つまり、ひどい年ではほぼ毎日のように、学校で乱射事件が起こっているというのです。

また、銃乱射が行われた場所は、校庭が1086件、教室内が672件。
発生した時間は、午前中が約18%を占め、次いでスポーツ・イベントの最中、放課後となっています。

「銃が人口よりも多い国」と言われ、今やおよそ3億9300万丁の銃が出まわっていると推定されるアメリカ。

それだけに、この映画が描く現実は重みを増しています。


先生が走っていった理由

また、ラストシーンで先生がダンの元へ走っていった理由についても、あまりはっきりとはわかっていません。

ですが、おそらくダンと少年の姿が見えたため、少年を助けだそうとしたか、あるいはダンが自殺するのを止めようとしたのではないかと考えられます。

現在アメリカでは、銃規制反対派の意見として、「教師の武装化を進めるべきではないか」との声も上がっています。

実際、アイダホ州やフロリダ州など9州は、教育委員会や校長が許可した場合、教師が校内に銃を持ち込むことを認めているほか、ミズリー州やカンサス州など7州では、教師に銃携帯のライセンスを取ることを義務化しています。

さらに、フロリダ州やオクラホマ州など7州は、教師に銃使用の訓練を受けることを義務化しているのです。

ただ、武装化を進めることで、教師による銃の乱用や暴発に対する懸念の声もあがっています。

劇中でも、もし先生が武装していたら、また違った結末を迎えていたのでしょうか…。

銃撃事件への対応は、いまだ、厳しい議論を醸しています。


ダンは病んでいた?

劇中にはダンが書いたと思われるノートが登場していました。
このことから、当時ダンは精神的に追い詰められており、それが今回の犯行につながったのではないかと考えられます。

実際に、銃撃事件の犯人の多くは精神疾患を抱えているという報告もあるそうです。

そのため、アメリカでは銃購入の際、犯罪歴や精神疾患に関するチェックが行われています。

ただ州によって規制はまちまちで、十分なチェックを行っていない州があったり、通信販売を通じて他州から購入したりすることも可能なのだそうです。

さらに、劇中で使われていたようなライフル銃であれば、大半の州で18歳から合法的に購入することができます(拳銃に関しては、隠し持って犯罪に使われやすいという懸念から、どの州でも21歳以上にならないと購入できないそうです)。

ライフルは、安いもので日本円で6万円台と、比較的入手しやすいとされているのです。

こうした現状もあってか、銃撃事件の犯人の50%は合法的に銃を購入しているとも言われています。

これらのことを踏まえると、ただ単にダンの精神的な疾患だけではなく、アメリカでの銃へのアクセスのよさも、今回の彼の犯行を後押ししたのではないかと、つい思わずにはいられません。


一番怖いのは世間の無関心

これは仕方のないことではありますが、普段ニュースを見ていると、「誰が犯人で、誰が亡くなった」という、非常に無機質な情報しか伝わってきません。

しかしこの映画は、犯人である”ダン”の人物像や、その家族である弟たちにも焦点を当てていることで、平凡な若者が犯罪に走ってしまった背景にある社会のあり方を、私たちに問うているような気がします。


余談ですが、SAMANSAの映画『オビチュアリーズ 』では、生徒が起こした高校での銃撃事件について、加害者、被害者、そして傍観者ひとりひとりの人生に焦点を当てながらより詳しく描かれています。

また、同じくSAMANSAで配信中の映画『ディカルブ小学校』でも、小学校での銃乱射事件を見事に止めた1人の女性について、実話ベースで描かれています。

それぞれ違った切り口から〈銃撃事件〉を描いていますが、どの作品も、社会の無関心から生まれる残酷さと、現代社会の闇を鋭く描いた素晴らしい作品ですので、ぜひこの機会にご覧になってみてください!

さらに、学校での銃撃事件を描いたもう一つの映画『ロックダウン』についても解説記事を公開中です!よろしければぜひ合わせてご覧ください:)

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