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~私たちは「抗議をする覚悟」を理解しているか~映画『カウンター・アクト』

私は覚悟を決めた。


その「痛み」を知っても、あなたはまだ立ち上がることが出来ますか?

真の覚悟とはなんなのか、映画『カウンター・アクト』を観れば理解できるはずです。

今回の記事では、映画『カウンター・アクト』の作品解釈と作中に登場した「抗議」について解説します!

まだ本作をご覧になっていない方はぜひこちらご覧ください!


作品情報
監督:Heath Affolter, Jon Affolter, Nathan Affolter & Thomas Affolter
制作国:カナダ
作品時間:15分32秒

あらすじ:
60年代アメリカには、人種差別が横行していた。
アリスの行きつけのレストランのカウンターにも、「白人のみ」の札が。
店に入ってきた黒人のカップルは、札を横目にカウンターに座った。
「デブが」と、意地悪な連中に罵られたアリスに、優しく味方をしてくれた女性の店員は、黒人のカップルにコーヒーの一杯すら提供してやらない。
そんな彼らの味方になろうと、文字通り立ち上がったアリスだったが、彼らと同じように酷い仕打ちを受けることになる。
徹底した無視を貫き、暴力にも屈しない彼らが立ち上がる姿は、彼女の目にどう映ったのか。
覚悟とはいったいなんなのか。


覚悟の違い:


"また太った? デブが!"

罵られる痛みを知るアリスは、黒人カップルのレイとメアリーを守る覚悟を決めて立ち上がりました。

しかし黒人カップルからは、「あなたに抗議する覚悟はない」「計画的にやってるの。ただの思い付きじゃない」と否定的な指摘をされてしまいます
黒人カップルの 覚悟 とアリスの 覚悟 はいったいどう違うのでしょうか?

それは、「痛みを受け入れる意志」にあるのだと考えられます。

アリスは黒人カップルの味方をしたことで投げつけられた罵倒に耐えられませんでした。その一方で、黒人カップルのレイとメアリーは、どんな事をされても無視・非暴力を貫きます。

レイとメアリーには、痛みを知ったうえでその痛みを耐え抜くという覚悟がありました。

「あなたに抗議する覚悟はない」というレイの言葉が重みを増します。

登場人物紹介:


ここで、黒人カップルの人物像を紹介します。
映画《Counter act》の公式Facebookでは黒人カップルのレイとメアリー、大学生のアリスの人物像が簡単に紹介されています。

レイ:「レイは頑固で協力的、そして忠実さを持った人物です。彼は公民権運動に熱心に参加していますが、制度的に人種差別の根深いコミュニティで育ったため、平等への道は危険が伴う長い旅であることを理解しています。」

Counter Act Facebookより引用

メアリー:「メアリーは、自分の信じるもののために立ち上がる(この場合は座る)ことを恐れない強いリーダーだ。都会で大学に通う彼女だが、夏休みに小さな町に戻り、地元の食堂の白人専用ランチ・カウンターで座り込みの抗議活動をする事に義務感を覚えている」

Counter Act Facebookより引用

アリス:「アリスは大学で神学を専攻する学生で、夏休みを利用して故郷のテネシー州の田舎町に戻ってきた。公民権運動の支持者でありながら、アリスは自分の信じるもののために立ち上がることで、矢面に立つ覚悟はなかった」

Counter Act Facebookより引用

アリスの目に映った、立ち上がる二人:

そんなアリスの目には、床に押し倒され暴行を加えられた二人が無言で立ち上がり、カウンターに着く姿がどう映ったのでしょうか。

店を出たアリスはそんな彼らの姿を、店の窓ガラス越しに見つめていました。彼らをみるアリスの目には、驚きと尊敬、畏怖が見て取れます。

アリスと同じく外野だった私たちの目にも、立ち上がる彼らの姿は同じように映りました。

彼らの姿を見るアリスの視線と、私たちの視線が完全にリンクした瞬間です。

作品の最後には、入口のドアに付いているベルが、静かな店内に鳴り響きました。

「痛みを受け入れる意志」を持った強い人間が、一人分空いた ”カウンター” に向かったはずです。

アリスが座ることになるだろう画面左の空間が空いたまま、映画は幕を閉じました。

これは、人種を超えた協力がまだ必要であるという訴えだと解釈できます。
「あなたたちもカウンターに来てくれ!」と強く言われた気がします。

座り込み抗議:


作中で、黒人カップルがカウンターに座り続けたのは、抗議運動のためでした。
特にこの作品で行われているものは、 “sit in” protest(座り込み抗議)と呼ばれています。

1960年1月ノースカロライナはグリーンズボロのデパート店内で、コーヒーの注文を断られた4人の黒人生徒が、断られてもなおカウンターに座り続けた行為が発端となり、この抗議運動の急速な拡大につながりました。

歴史上最初の “sit in” protestは、1939年にバージニア州アレクサンドリアの”白人専用”図書館で、黒人弁護士の主導のもと行われたといわれています。

運動の拡大に伴い、運動に賛同した白人もこの抗議に参加するようになりました。

座り込み抗議の強さ:


こうした歴史を持つ“sit in” protestの特徴は、「徹底した非暴力」と「抗議が与える経済的損失」にあります。

非暴力という「治癒の剣」:


1960年には、この抗議のために戦術会議が開催されました。その会議を開いたのは、かのキング牧師です。

キング牧師は後に、このような非暴力かつ直接的な運動を「治癒の剣」と呼びました。

つまり、 "sit in” protestとは差別という社会の「病」を治し、恐怖や劣等感などという「鎖」を断ち切る、平和の剣なのです。

経済的打撃:


また、”sit in" protestが世間に与える影響は心理的なものにとどまりませんでした。

デパートでで4人の黒人生徒によって実行された"sit in" protestでしたが、翌日にはその話を聞きつけた20人が新たにこの運動に参加しました。抗議運動の参加者は日に日に増加し、グリーンズボロのデパートでは、この "sit in”protestによって20万ドルにも及ぶ経済的な被害があったと報告されています。

映画『カウンター・アクト』は、公民権運動の歴史にライトを当てるだけでなく、彼らの 抗議する想い を私たちの心に刻んでくれました。

2024年現在、私たちの世界ではいまだ平等が実現されていません。

映画『カウンターアクト』はそんな状況を打破するきっかけを私たちに与えてくれました。

映画『カウンター・アクト』は、SAMANSAで配信中です!こちらからぜひご覧ください!


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