【何故か人間関係が悪くなる危険な行動】シュン
私は以前、「介護業界で最速キャリアアップする為に必要な3つのマインド」という投稿において、「愚痴や不満を言わない」というアクションプランの提案を行った。まだ詳しく読んでいない方はそちらも参照されたい。
今回はこの行動が周りにとっても自分にとっても、何故有益なのか理解できない人のためにもう少し深掘りしてお伝えていきたい。
「馬鹿なことを言うな、何も知らないくせに。まともに業務が出来ていない人間を嘆いてるだけだ。愚痴の一つでもこぼしてなければやっていられない」という声が今にも聞こえて来そうだが、深呼吸をしてこの先を読み進めていって欲しい。
何故、愚痴や不満をこぼすとダメなのか。
結論から言うと理由は二つ。愚痴や不満は次のような性質を持っているからである。
❶ 承認欲求を満たすための自慰行為であるから。
❷ マイナスな「言葉と思考」に自らの「行動」が引き寄せられるから。
まず一つ目の理由から説明する事にする。
自己啓発の父と呼ばれる心理学者のアドルフ・アドラーは「承認欲求」を完全に捨てる事を持論とした。
特に日本人はその特有の社会的な構造故に「誰かに認められたい」という強い固定観念がある。子どもの頃から先生や親に「褒められる」「認めてもらう」事を至上の喜びとする環境下に常に置かれてきた。
そのため、多くの人々はまるで「承認欲求の奴隷」とも言うべき思考パターンを体得してしまっているのだ。
その際たる例が「他者への不満・愚痴」と言える。もっと攻撃的になれば「誹謗中傷」とも言えるかもしれない。
愚痴をこぼすという行為は自分の身の回りに起こる不都合な事柄について、結局のところ「耐え忍んでいる自分」を誰かに認めて欲しいだけなのである。当事者である相手に自分がどうして欲しいかを伝えるでも、自ら環境を変えるでも無く、誰かに愚痴をこぼす。それが実は一番心地がいいのだ。
「直接言うとめんどくさい事になる」と思うかもしれないが、むしろ逆だ。直接言わないから面倒くさい事がどんどん生まれている。そもそも人間関係とは面倒なもので、関係性が拗れる最大の理由は、シンプルに自分の想いを人に伝える技術が無いだけだ。
もし現状を変えたいなら、自分がお願いすれば良いだけである。これはアドラー心理学で言うところの「課題の分離」に相当する。相手を変える事などそもそも出来るはずがないのだ。それは他人の問題に首を突っ込む事であり、時間の無駄だ。先ずは自分がどうすれば良いのかという問題を解決するために行動すれば良い。それでも、状況が変わらないのであれば距離をとるか、環境を変える。残酷かもしれないがそれしか方法はない。間違っても「きっと分かってもらえるはずだ」などと勘違いしてはいけない。他人に自分の思い通りに動いて欲しいと考える方が傲慢なのだ。
2つ目の理由について説明する。
例えば親が子どもを車に置き去りにして子どもが亡くなったという悲惨なニュースがあるとする。時に、ニュースやワイドショーで一日に何度も同じ話を繰り返し聞くことがある。するとどうだろうか。「最近の親は子どもを置き去りにする」というネガティブなイメージが植えつけられはしないだろうか。
人は誰しも耳から入る情報に少なからず影響を受けている。しかも、人はネガティブな情報に注目してしまうという性質も持っている。ワイドショーが下らないゴシップネタを繰り返し特集するのは、この性質を利用している。
そして、耳から入った情報は脳の思考パターンに組み込まれ、先入観や固定観念を作り上げる。本来なら多角的に見るべき出来事も、がんじがらめの思考によって同じ結論しか出せなくなる。たちが悪いのがほとんどの場合、「先入観を持っている」という自覚すら全く無い。
話の意味が見えてきたかもしれない。愚痴や不満、その言葉を一番耳にしているのは当然のことだがそれを言った本人なのである。
つまり、ネガティブな情報を自分で発信し、さらにその考えから動けなくなっている。
思考パターンは実際の行動に現れ、さらに上手な付き合いが出来なくなる。言ってみるならば、「思った事が現実のものとなる」という事だ。
こうした悪循環を断ち切る方法で最も最適なのは「感謝を伝える」という事だ。何でもいい。些細な事にでも感謝を伝えてみると少しずつ自分の心境が変わってくる(あくまで相手が変わるわけではない)。実は相手は別の価値観で行動していたに過ぎないのだ。結局のところ自分の見方が狭くなっていただけという事に気づく事が出来る。
「人の動かし方」という謳い文句の書物は多くあるが、基本的に今述べたような事が大前提にある。もちろん人の心の動かし方の技法は数多くある。しかし、断言して愚痴や不満を撒き散らす人には実践できるものではない。
ここまで散々と愚痴や不満をこぼす事を否定してきたが、私自身完璧にそれを実践できているわけではない。
時には本当に苦しくなって愚痴をこぼしたり、時間に追われて周りへの感謝を忘れたりする事もある。
しかし、そのたびに「このままではいけない」と自分に言い聞かせている。明日から自分が何が出来るか。他人は関係ない。
結局はそうした心のあり方が人を巻き込む原動力になっていくのかもしれない。そこに価値を見出していくべきである。
現状に不満のある方、他者との劣等感に悩んでいる方、環境を変えたいと思っている方。是非明日から「自分」の抱えている課題にだけベクトルを向ける思考習慣を送って欲しい。
そこには誰にも邪魔する事のできない、無限の可能性が広がっている。
シュン