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下鴨納涼古本まつりで買った本【古書-#2】【下鴨納涼古本まつり2023】


はじめに

たっぷり買った。もはや古書を買うというその行為が心地よいのかもしれない。


下鴨納涼古本市を存分に楽しんだ話は前回した(↑参照)ので、今回は古本市で買った本を一冊ずつ、未読の状態で紹介する。
買った順番とかは覚えていないので、トピックごとにまとめて紹介する。

<<ウンベルト・エーコ関連>>

先日、丸善地下の古書コーナーで『薔薇の名前』(著:ウンベルト・エーコ【東京創元社】)を買った。是非とも読みたいのだが、どうやらそう簡単には読み通させてくれない難物のようだった。しかし噛めばしっかり味がすること請け合いの本を読まずにみすみす逃すのも悔しい。そこで、読む際の資料も一緒に欲しいと思った。既にユリイカのエーコ特集の号は手に入れている。今回は3冊の本が手に入った。

<1>『エーコ 記号の時空』(著:篠原資明)講談社

ウンベルト・エーコについては「小説家であり、哲学者でもあった」のだと思っていた。しかし本当にそうだろうか。逆なのかもしれない。「哲学者であったエーコが小説をかいた」のか?まずはそこから知ることが『薔薇の名前』を読み解くのに必要になるかもしれない。人物と作品は切り離せないとは言わないまでも、互いに影響を与えあうものであるのは事実だ。映画『君たちはどう生きるか』が宮崎駿という人物の持つコンテクストを以てはじめて解釈できるようになるのと同様に、エーコの人物像から作品を読み解く鍵になるかもしれないと思った。

<2>『「バラの名前」便覧』(著:A.J.ハフト/J.G.ホワイト/R.J.ホワイト)(訳:谷口勇)而立書房

<3>『『バラの名前』後日譚』(著:L.マッキアヴェッリ)(共訳:谷口勇/G.ピアッザ)而立書房

これら2冊は『薔薇の名前』を読み解くための副読本として買った。実際のところは読んでみないとわからないが、ある種の二次創作的な面白さも味わえるかもしれないとひそかに期待もしている。物語を外部から眺めるとか、物語についての一つの解釈を与えると主に1970年代後半から本書が出版された1997年までのミステリー作品のなかから201作を選出して、それぞれに見どころを紹介する文章が付されている。対象となる年代が広めにとられているので、ここで評価されている作品は期待してよいのではないだろうか、と思う。選者の感覚とマッチすればの話ではある。ともあれ、指針があることは心強いものである。か、そういうことも広い意味での二次創作なのではないかと思う。

<<ブックガイドたち>>

国内で毎年数えきれないほどの新刊が発行されては、新刊書店から消えていく。新刊の情報に比べると、まだ見ぬ過去の名作を知る手段は実はそうそうない。数少ない手段の一つとして、過去のガイドブックがある。これを探す絶好の機会が古本市だ。今回は3冊手に入れた。

<4> 『2006 本格ミステリ・ベスト10』(編著:探偵小説研究会)原書房

今なお毎年出版されている、本格ミステリの定番ガイドブックの一つである。ランキングはもちろんのこと、ミステリ作家たちが当時の新作執筆の近況を報告するコーナーや作家のインタビュー記事、対談記事が掲載されているのが嬉しい。この年は国内ベストに『容疑者Xの献身』が選ばれていた。

←ミステリベスト201
2006本格ミステリ・ベスト10→

<5>『ミステリベスト201 国内篇』(編:池上冬樹)新書館

主に1970年代後半から本書が出版された1997年までのミステリー作品のなかから201作を選出して、それぞれに見どころを紹介する文章が付されている。対象となる年代が広めにとられているので、ここで評価されている作品は期待してよいのではないだろうか、と思う。選者の感覚とマッチすればの話ではある。ともあれ、指針があるのは心強い。

<6>『ミステリ・ハンドブック』(編:早川書房編集部)早川書房

海外ミステリと海外SFほど、棚の前でうろつくコーナーも他にないだろう。マニアは滅法詳しいが、「一般」の読者には誰が誰やらまったくといっていいほどわからない2大ジャンルである(と僕は勝手に思っている)。なんだかそれでは悔しいではありませんか。せっかく面白いものがそこにあるかもしれないのに、それを知らないから逃すというのは。ということで、ハヤカワの「海外ミステリ」に特化したガイドブックを手に入れることには十分な価値がある。そこに安さが背中を押して購入に至った。

<<ハヤカワ・ポケット・ミステリ>>

「ポケミス」と呼ばれるレーベルがある。横線入りのビニールカバーがかかった装丁の縦長の本である。俗っぽい言い方をすれば「ミステリ通っぽい」。(ときに文庫化されている作品を敢えて)ポケミスで読むことは、形から入るような気恥ずかしさと楽しさがある。ポケミスの付加価値はそこにあると思っている。

<7>『古書殺人事件』(著:マルコ・ペイジ)(訳:中桐雅夫)早川書房

この前、これまた古書で買った『推理小説に見る古書趣味』(著:長谷部史親【図書出版社】)の冒頭で言及されていたのがこの『古書殺人事件』だった。どうやら界隈では有名な作品のようで、「これはみなさんご存じだとおもいますが……」のトーンで語られていた。そういわれると、大変気になる。当然悔しさもあり、見つけたときは思わず声が出た。こういう出会いがあるから楽しい。

<8>『二流小説家』(著:デイヴィッド・ゴードン)(訳:青木千鶴)早川書房

に、このミス(このミステリーがすごい!)など2011,2012年の各種ミステリランキングで1位をとった作品らしい。裏のあらすじを見る限りでは、冴えない中年作家がNYを震撼させた連続殺人鬼による告白本の執筆を依頼されるという話らしい。悪くない。状態と値段のバランスが良かったのもあり、買った。何より、僕はランキングに弱い人間である。

<9>『ミステリ・ガール』(著:デイヴィッド・ゴードン)(訳:青木千鶴)早川書房

『二流小説家』の作者の第2作らしい。この際一緒に買ってしまえ。買う理由などそんなもので十分。

<<その他ミステリ関連>>

<10>『事件当夜は雨』(著:ヒラリー・ウォー)(訳:吉田誠一)東京創元社

シンプルで冷たい印象のタイトルに惹かれた。作品についても作者についてもほとんど何の情報もないので楽しみに読みたい。あらすじの「本格推理の醍醐味を満喫させる」という文言を信じてみる。

<11>『ミステリーでも奇術でも』(著:泡坂妻夫)文藝春秋

泡坂妻夫はミステリー作家であり、マジシャンでもあったらしい。恥ずかしながら作品はどれも読んだことがないのだが、米澤穂信が『米澤屋書店』で何度も好きだと言っていたのでずっと気になっていた作家だった。ちなみに索引で確認したところ15の箇所で言及があったようだ。作家のエッセイは元来好きだ。作品を読む前にエッセイから入るもそれはそれで良いのではないだろうか。どうせいずれ作品を読むことになるのだから。

<12>『推理小説をどう読むか』(著:チャンドラー/ナルスジャック他)(編:中田耕治)三一書房

目次をみると、どうやらレイモンド・チャンドラーをはじめとする海外のミステリ作家たちが推理小説について語った短い文章をそれぞれ邦訳して編んだものであるらしい。タイトルは例えば『殺人の簡単な技術』『犯罪の精神病理学』などといったものから、『窮地に立つ推理小説』『メグレ警部論』まで様々である。創作論として面白い文があるかもしれない。ここから発掘する楽しみがある。

<<日本の現代文学>>

<13>『共喰い』(著:田中慎弥)集英社

ずっと気にはなっていた。田中慎弥といえば芥川賞受賞の際の某都知事に対する放言のイメージが強く、そこから興味は持っていた。あの人がどんな小説を書くのかを知ってみたかった。既に文庫化されている書籍ではあったが、いわゆる「純文学」という類の文章(とまとめるのはあまりに乱暴だが)と上製本との相性が良いという理由で買うことにした。手触りは読書体験に影響を与えるのではないかというのは単なる直観にすぎないが、これは信じるに足る直観なのではないかと思っている。

<14>『文藝 2021年夏号』河出書房新社

リニューアルしてからの『文藝』が興味深くて、たまに買ってはつまみ喰いしている。年4回の刊行なのに時期によって買っていたりいなかったりする。
この号の特集は「もふもふ文学」である。なんなんだそれは。収録作の中では、「もふとん」(著:酉島伝法)が気になっている。酉島伝法といえば、つい最近『ユリイカ』の奇書特集の対談で気になった『皆勤の徒』(著:酉島伝法【東京創元社】)を買って読み始めてみたはいいものの、わけがわからなすぎて一旦寝かせることにしたところだった。もふもふなら、読めるのでは?そしてその流れで『皆勤』も読めるように……はならないか。そちらは時期が来るのを待つのもひとつか。

総括

まだ読んでいない本を紹介するのは初めてである。当然内容もパラパラとめくって確認した程度の情報でも紹介はできてしまうことに驚く。中身だけが本ではない。製本の感じや、経年変化したであろう手触り、また「その本をなぜ僕が手に取ったのか」だって本の紹介になるというのはやってみて初めて知った。

これをお読みになった方の中で、紹介した本の有益な情報をお持ちの方はご教示願いたい。もちろん、無益な情報も大歓迎である。

次回は残りの21冊を一挙紹介する。
SF」「幻想怪奇の文学」とジャンルに収めきれなかった「その他」の本たちである。
※そんな回は存在しなかった。まやかしまやかし……(追記:2024/2/17)


【紹介した本】
いっぱい!!

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