「どの子」ってどんな子? 中3国語俳句の授業で知る、経験と俳句のステキな関係
こんにちは、といです。
中学校で国語を教えています。
今日は珍しく、国語の授業のお話です。
中学3年生の国語では、俳句の学習をします。
去年、こんな授業をしてますよーという記事を載せました。
一年ぶりに、今日はその続編。
私が選んだ俳句を紹介して、どんな句なのか想像を爆発させた後は、教科書に載っている句について考えてもらいます。
教科書には俳句と解説文がセットで載っていて親切なのですが、
韻文の「書いていない部分は自由に想像して読む」ができないので、普通にこの解説文を読んでしまうのはちょっともったいないと思っています。
そこで、『これまで勉強してきた、季語、季節、切れ字、その他の表現技法を手がかりに、俳句の意味や背景をグループで考えて発表しよう』というのをやっています。
さて、どんな解釈が生まれるかというと。
どの子にも涼しく風の吹く日かな 飯田龍太
この句の一般的な意味は、
「どの子にも涼しい風が優しく吹いている、そんな夏の日だなあ」という感じ。
でもそれだけだと味気ないというか説明不足なので、読者は自分の脳内に浮かんだ情景をプラスしてこの俳句を味わいます。
例えば…
「自分の小さな子どもたちが、夏の公園で汗だくになって遊んでいる。そこに一瞬吹いた風。ウチの子どもたちを少しだけ涼しくしてくれてありがとう、夏の日よ」というお母さん目線の解釈だったり、
「校庭での体育の授業。暑い!熱中症予防のために、みんなで木陰で休憩。そこに涼しい風が吹いてきた。涼しー!みんなで笑った、夏の日の思い出。」という中学生目線の解釈だったり。
そんななか、あるグループの解釈にはっとさせられました。
(このグループは「涼し」が夏の季語だということを忘れていたので、秋の情景として解釈していますが…)
「稲穂が実ってきた。作者はたんぼ道を散歩しながら、稲穂の1本1本を子どものようにいとおしく思い、彼らが涼しい風に吹かれていることを喜んでいる。もうすぐ稲刈りの季節だなぁとしみじみしている」
おお、斬新!稲穂を子どもと捉える感覚にはっとしました。
彼らは田んぼの多い地域で育ってきました。学校の行き帰りにも毎日稲穂の育ち具合を見ています。
そんな経験が「どの子」という言葉を稲穂だと感じさせ、それらが風に吹かれている情景を喜びだと感じさせたのでしょう。
教科書の解説文では、このあたりについて「この句を読んで、『どの子にも』とは自分のことだ、と思う人もあるだろうし、校庭の木陰でクラスメイトとくつろいでいるときのことだと思う人もあるだろう。幼児の頃、海辺で遊んだ体験を思い出す人もあるだろう。」と表現しています。
海のない地域で育つ彼らにとっては、海辺の風景よりも田んぼの風景の方がずっと身近で、心の中に刻まれている風景なんだなぁと感じさせられました。
こんなふうに、自分の経験によって解釈が変わってくるのが、俳句の解釈の面白いところ。
教科書やネットに載っている解釈だけでなく、自分ならではの感じ方ができるのが素敵なんだということをみんなで共有できた時間でした。
あなたの思う「どの子』は、子どもたちは、誰ですか?
それはどんな風景の中にありましたか?
よろしければ、あなたの解釈、コメント欄で教えてください😊
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