新NISAはつみたて投資枠も活用しよう(全世界株式、S&P500、NASDAQ100、ETF)
概要
年も暮れになってきたので来年の新NISAについての解説をしたい。
次年度よりいよいよ新NISAが開始される。
随分と改善された。
参考にした英国のISAに一歩近づいたと言える。
そもそも、わざわざ改悪して導入した財務省がおかしかったのだが。
新NISAになって何が変わるのか。
基礎的なことからおさらいしていこう。
年間の上限額が120万円から360万円になること。
非課税期間が5年から無期限になること。
非課税保有限度額が1800万円になることなど色々あるが特筆すべきは別にある。
つみたてNISA枠と一般NISAの併用が可能となったこと。
これが一番大きい。
併用できなかったがために40万円の非課税枠よりも120万円の非課税枠を求めて一般NISAで個別株を買い求めてきたという読者もいるだろう。
誰だって非課税枠は最大限に使い倒したい。
しかし、次年度からは併用可能となる。
投資信託で浅く広くリスクヘッジをしながら個別株を購入することが可能となったのだ。
筆者にはこれが大きかった。
読者にもリスクヘッジの一助としてつみたて投資枠の併用を是非考えて頂きたい。
つみたて投資枠、つまり投資信託だ。
投資信託のメリット・デメリットを解説したい。
投資信託のメリット
まず誤解のないよう先に説明するが、筆者の言う投資信託とは低コストのインデックスファンドへの投資を指す。
アクティブファンドについて説明するつもりはない。
メリットを羅列していこう
1:指数(市場全体の指標)に投資するため時代の変化に強い
2:浅く広く投資できるため分散投資ができる
3:信託報酬が安い
4:考えなくていい
5:複利
6:安定した成長
1:
例えば何事もなく10年、20年と保有する以上は時代の変化が訪れる。
かつてはiPhoneもなく、AI企業も躍進を遂げていなかった。
世界経済は成長しているのに、世界全体の時価総額は成長しているのに、自分の持ち株は相対的に退化しているということもありえる。
このリスクを回避できる。
2:
情報通信、自動車、防衛産業、貿易船、エネルギー、金融などなど、様々な銘柄を購入することでリスクヘッジが可能だ。
それを一度に行うのがインデックス投資である。
3:
代表的な投資信託で資産の0.05%~0.2%あたりだろうか。
100万円投資して500円から2,000円の報酬が引かれていくことになる。
リーズナブルな投資形態だ。
巷では表面に出てこない隠れコストを合算した実質コストなども謳われており、筆者としては0.3%を超えると高いかなと感じる。
4:
何も考えなくていいというのは大きなメリットだ。
所有銘柄を入れ替えるコストもかからない。
タイムパフォーマンスも高いだろう。
5:
利息に利息がつく。
分配金は再投資に設定しよう。
数十年後には大きな差になる。
6:
安定した成長率は狼狽売りを回避させる。
そして一度成長すると暴落を経験しても売らなくなるものだ。
「72の法則」というものがあり資産が倍になるまでの期間が判る。
例:年の成長率が10%だった場合
72/10=7.2
となり10年ではなく7.2年で倍になるというものだ。
安定した成長への長期投資は成功体験につながる。
成功体験で握力を鍛えよう。
投資信託のデメリット
次にデメリットを羅列する。
1:信託報酬がかかる
2:指標以上のリターンは見込めない
3:元本を割ることもある
1:
リーズナブルとはいえ信託報酬はかかっている。
毎年積立を行い何十年も抱えていれば数十万円の報酬を知らず知らず支払っているものだ。
2:
決められた指標に投資するので指標が停滞すると資産も停滞する。
指標の成長を我慢強く待つしかない。
成長を見込んでいるインデックスを選ぼう。
3:
バブル崩壊、リーマンショック、サブプライム、コロナなどなど、10年に1度は経済的なショックを経験してきた。
とはいえ、これは個別株でも同じことだ。
どう感じるかは読者に任せたい。
ここからは安定感の高いカテゴリーから順に代表的な投資信託を羅列していく。
全世界株式
所謂オールカントリー、オルカンと呼ばれるものである。
モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルという会社が開発したオールカントリー・アクティブインデックスという指数がある。
略してMSCI・ACWIという。
先進国23カ国と新興国24カ国の合計47カ国、時価総額の大きい約3,000社で構成される指数であり年に4回構成銘柄の入れ替えがある。
全世界を浅く広くカバーすることが”比較的”可能であり世界経済が成長する限り比例して成長していく指数となる。
ここに投資するのが全世界株式だ。
GDPと時価総額は比例関係にある。
世界のGDPは順調に伸び続けており、その中で全世界の時価総額の大きな優良企業一覧に一度に投資しようというわけである。
しかも年に4回新陳代謝までしてくれる。
時代についていけない企業、時価総額の成長が遅い企業が淘汰されていくのである。
これは強いと言わざるを得ない。
ここでは2つの投資信託を紹介しておこう。
eMAXIS slim全世界株式(オール・カントリー)とSBI・全世界株式インデックス・ファンドだ。
まず信託報酬が安い。
0.05%から0.1%といったところか。
eMAXIS slimのほうが純資産が大きいことが判る。
これは信託報酬で業界最安値を目指すスタンスが評価されているのと、インデックス投資信託を早くから始めたことが功を奏したものと見られる。
SBIも後発組として頑張ってはいるが今ひとつというところ。
今回は出典元としてご協力頂くので紹介しておく。
指標は同じオールカントリーなのでチャートは同一の変化をしてくれる。
信託報酬だけ見て好きなオルカンを選んで欲しい。
全世界株式の年平均成長率は5%前後とされる。
安定感は抜群だ。
ただし、全世界株式と謳いつつも6割が米株であることは留意されたい。
日本人がiPhoneを持ち歩き先進国ではWindowsが使われ、意外なことにインド人もマクドナルドを愛用している。
世界経済の成長はすなわち、米国株の伸張をも意味するのである。
米国に時価総額が高い企業が集中しているので避けては通れない構図だ。
リスク分散として全世界株に投資するのにアメリカが風邪を引けば全世界が風邪を引いてしまう以上、致し方のないことなのかもしれない。
S&P500
続いてS&P500だ。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが公表しているアメリカを代表する時価総額の大きな企業500社を一つの指標にしてしまい、これに一度に投資する手法だ。
いま最も勢いのある投資信託と言っても過言ではあるまい。
例えば5年前に始まったS&P500の投資信託、eMAXIS SlimS&P500には2兆9000億円の資産が集積されている。
なぜS&P500がこれほど人気なのかを解説しよう。
米国経済が強力に成長し続けることによって、米国株もまた伸張を続けてきた。
視覚的に判るのが上の図だ。
S&P500インデックスは年平均11.48%成長する。
ドットコムバブルもあった、リーマンショックにサブプライム、9.11だって経験してきた。
それでも成長してきたのが米国経済である。
この”実績”を信じてこれからの米国経済の中枢に投資したいというのがS&P500である。
72の法則に当てはめれば6.2年で預けた資産が倍になる成長率だ。
投資したくなるのも判る。
ただ一つ釘を差すべきだろう。
上記の事柄はあくまで”実績”に投資するのだということ。
実績とはこれまでのことであって、これからのことではない。
将来のアメリカを想像するべきだろう。
もちろん筆者は強いと考えているが……。
人口増は経済成長の一つのファクターだ。
労働力の増加、技術革新、資本ストックの蓄積によって経済成長は加速していく。
アメリカの統計当局によれば、2080年に3億7000万人をピークに人口が減少に転じるのだという。
そしてアメリカほど技術革新が進む国も、アメリカほど資本の集まる国も今のところないわけで、素人目にもあと50年は経済成長しそうに思える。
この米国の上場企業の時価総額の80%を抑えるのがS&P500だ。
経済成長する国の上澄みの80%、年4回新陳代謝が進む指標に投資できるというわけで人気ぶりも頷けるというものである。
全世界株式の欄で前述した通り全世界株式の60%は米国株で米国株の80%がS&P500に組み込まれているという状況になる。
そして成長率もS&P500のほうが”実績”としては高い。
いわば、少数精鋭というわけである。
だったらS&P500でよくないか?という意見が出るのも無理からぬことである。
最後にこちらも2つの投資信託を紹介しておこう。
最大手であろうeMAXIS SlimS&P500とたわらノーロードS&P500だ。
たわらノーロードは今年からS&P500に乗り出した新顔であり業界最安値の信託報酬を打ち出し一時話題になった。
すぐにeMAXIS SlimS&P500側も同額まで信託報酬を引き下げ競争を行うことになった。
たわらノーロードS&P500は確かに新顔でまだ総資産も高くはない状態だが、業界に一石投じてくれた勇気ある有り難い銘柄として是非紹介したかった。
資産の増え方も順調で決して悪くない。
NASDAQ100
最後にNASDAQ100である。
NASDAQに上場する時価総額の大きな金融を除いた企業100社の指標に投資するものである。
誤解を恐れず短く言ってしまえばS&P500をさらに少数精鋭にしたものである。
また、S&P500はアメリカ企業に限定されたがNASDAQ100はNASDAQに上場してさえいれば国が問われないのも特徴だろう。
中国の百度、オランダのASML、オーストラリアのアトラシアン、アルゼンチンのメルカドリブレなどが選出されている。
残念ながら日本企業は選ばれていない。
新陳代謝は毎年12月に行われ、基本的には時価総額で100社に入れなかった企業は脱落することとなる。
125位までの下落であれば1年残留することもできるようだが、ここでは些事だろう。
交代で入ってくる銘柄はNASDAQに上場しているNASDAQ100に現在選ばれていない時価総額の大きい順から指名されることになる。
機械的で合理的な指標だ。
ダウ平均、S&P500、NASDAQ100をグラフにまとめたものだ。
圧倒的にNASDAQ100が強いのが見てとれる。
流石の少数精鋭だ。
ただ、1999年-2000年にかけてのドットコムバブル崩壊時に合わせて急落しているのも判る。
値動きが激しいためリスク分散の投資に向かないという考えもあり、コアサテライト戦略のサテライトに使われることが多いかもしれない。
コアサテライト戦略とはポートフォリオの一例を指し、守りの投資(コア)と攻めの投資(サテライト)に分ける手法である。
老後資金など、絶対に防衛したいがしかし貯蓄に回すのは勿体ないという資金が守りの投資(コア)としてまず存在し、それ以外のあぶく銭をより大きなリターンのために攻めの投資(サテライト)に回すというわけだ。
一般的にこの手法ではサテライトよりコアが大きくなる。
そのため、コア(中核)サテライト(衛星)戦略と言われるわけだ。
ここでも2つ紹介する。
ニッセイNASDAQ100インデックスファンドとMAXISナスダック100上場投信(2631)である。
まず前者はこれまで通りだ。
今年から運用が開始されたNASDAQ100に連動した投資信託であり信託報酬は0.2035%と非常にリーズナブルなので紹介する。
信託報酬が安いこと以外は他のNASDAQ100指数に連動するインデックスファンドと変わるところはない。
次にMAXISナスダック100上場投信(2631)である。
上場投信、2631。
そう、上場しているのだ。
株式市場に上場している投資信託のことをETFという。
上場投信とは上場投資信託の略であり、ETFはexchange-traded fundの略に当たる。
ETFは上場しているため株と同様に扱われる。
株と同様に扱われるからには新NISAの成長投資枠で購入できるというわけだ。
つみたて投資枠は年の上限が120万円と定められているため、もっとインデックスで投資がしたい、もっと非課税枠を活用したい、という読者の方はご利用の証券会社でETFについて一度検索をかけてみてもいいかもしれない。
成長投資枠で上場していない投資信託の購入も叶うようだが、証券会社ごとに非上場の投資信託のラインナップが大きく異なるようなので気に入らない場合は証券会社の移籍も考慮されたい。
しかしETFは株式なのでどの証券会社でも問題なく購入が叶うだろう。
ETFと投資信託の大きな違いは、投資信託は分配金の再投資が可能な点だろう。
複利を重ねたければこちらがメインだ。
一方、分配金を現金で得られたほうがモチベーションにつながるということもあるだろう。
こちらはETFで問題ない。
尚、筆者はレバレッジに否定的である。
NASDAQ100でも十分にリスクがあると考えているからである。
終わりに
忸怩たる思いである。
個別株の分析を行い紹介していく当noteにおいて、インデックス投資を紹介するなど方向性が違うのではないかという考えもあったからだ。
しかし、紹介しないわけにはいかないのだ。
何故なら安定感が抜群だから。
結果として、筆者は現在のところS&P500よりも多くの投資リターンを得られているがこれがいつまで続くかは神のみぞ知るところだ。
しかし、インデックス投資はリターンの安定した全世界株式であっても年平均で5%は成長してくるのである。
いつか追いつかれる日がくるのかもしれないと思い、他ならぬ筆者もS&P500を購入している。
自分はインデックス投資を併用しておきながら、インデックス投資を紹介せず、インデックス投資よりもリスクのある個別株だけ紹介するのは何か裏切りのような気がしてしまった。
だから新NISAに合わせ紹介することにした。
筆者はこれからも個別株を中心に紹介するだろう。
当然多くの個別株を所有しており、これからも銘柄を増やしていきたいからだ。
そんな筆者でもS&P500のインデックス投資を併用している。
説得力が増すというものである……。
年末という時期もあり新NISAについて解説をしたかったというのもある。
そして新NISAについて解説をするなら自然と併用可能となったつみたて投資枠について説明することになるのだ。
オルカン、S&P500、NASDAQ100、ETFについて紹介する丁度いい頃合いでもあった。
筆者としても、コアサテライト戦略として毎月決められた額をつみたて投資に回し成長投資枠で個別株やETFを物色する予定だ。
有用であったかはともかく、少なくとも筆者の投資スタンスをお届けする記事にはなったのではないだろうか。