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自主映画を、撮る。その26

11月5日、谷町線喜連瓜破駅前。(2022年執筆)

(※新企画「主宰を探せ」のコーナー!!)

主宰はつい勢い余って予定時刻より2時間近く前に現地入り、無理もない。それこそ「環境問題」をテーマにした作品で昔審査員特別賞に輝いて進学先の学部説明会を幽霊部員ながら公欠するという離れ業でもって一路東京へ。ややもすると今回のようなプレミア上映会の場にはそれ以来初めての参加。そりゃあテンション上がりますわ、心ここにあらず。

大阪大会のエントリーは全33作品、その全てを観られる機会とあり一切土地勘のない平野区は喜連瓜破まで。途中オサラバとはなりますが、共に今回の48時間を戦ってくれた仲間が駆け付けてくれる場。是非未来ある若者にも、この空気感を味わっておいて欲しい。今年限りのプロジェクトとは正直全然位置付けてません、あくまで「文化」として根付かせるための一手。

延べ8時間近く、観客席に陣取った形。

各プログラムの上映後には、過去の海外受賞作のエキシビションまで敢行。「世界水準の映画」を目の当たりにすることで得られる見識や、広がる世界観があって、これは初期の全体会議の場でも主宰が口酸っぱく語った部分。つまり我々はなにも思い出作りや学生時代の焼き回しがしたくて今回の応募を決断した訳ではなくて、コンペというのは「勝つためにあるもの」です。

そのためには「勝ち方」を知らなければなりませんし、それに則った戦略を打ち立て事前準備を進める必要がある。やれジャイキリだのフロックだのと騒ぎ立てるのはあくまでメディアにとって「オイシい」企画だから、出場勢には何ら関係のないファクターです。我々はシンプルにカンヌを狙いに今回エントリーしたまでで。それ以上でもそれ以下でもない。

ABC全グループ、計33作品+海外受賞作全て観た。

往復2時間近い道のりを経てとりま撮影時から続く喫煙癖から近くの喫茶店に腰を下ろしたのが午前10時前、都合により細切れ参加となる後輩達を迎え撃った。世界を争う舞台としては割とサイハテまで来た感もありましたが、蓋を開けてみれば400席以上ある立派なシアターでのプレミア上映。これは一生の思い出になると踏んで急遽、80年代風メイキング復活。動画を参照。

特別賞の授賞会場に臨んだ記憶が昨日の出来事みたく思い起こされる。担任からも「そりゃ、行かなアカンやろ」と後押しされた。物分かりの良い先生で本当に良かったですねえ、一生に起こるか起こらないかレベルの経験で。その割には行きしなの新幹線で盛大に酔ったり、お坊ちゃん学校ですかだのこっちじゃ関東学院がカンガクですけどねなんて色々言われたりもした。

心はお祭り気分、それでも上映時刻が迫るにつれて。

後輩世代の引率係まで任されるとなると、さすがに意味合いが違ってくる。「勝つためにエントリーする」と豪語したのは紛れもなく主宰でしたから、薄れゆく記憶を頼りにほんの少しでも彼らの創作意欲を掻き立てられるよう最低限アテンドしたつもり。一度限りの思い出作りでなくあくまで「文化」として映画制作を根付かせたい一心で、共に出展作品を全部観た。

シンプルな感想。想像以上にレベルが高く、それでいて指定の多いコンペと思えぬほど作品性もバラエティに富んでいた。一つとして同じ作風はない、各人のカラーや世界観をエンドクレジット抜きで最短4分〜最長7分の範囲で描き切れていて。主宰は中学高校と、時間制限にうるさい音楽賞レースへと片足を突っ込んでいたはずでしたが。また一味違った緊張感がありました。

主宰の斜め前に、審査員の先生が座っておられて。

すっかりお祭り気分を味わえるつもりでいた30過ぎのおじきが図らずも観客賞を左右する投票用紙片手に(※通し参加するとそのリスクが3回やってくる)前のめりで1作1作舐めるように試写してまいりました、まさか自分達の作品に1票投じるなどという愚行は一切しておりません。率直に、技術論度外視で面白かった作品へ各回投票してきましたのでどうぞご安心下さい。

今回のプレミア上映後は、コンペ形式から解放されて参加者のSNSあるいはアカウントから自由に作品公開可能。この瞬間を待ち侘びていた同志は非常に多かったはずです、それこそ48時間中には盛り込めなかった要素や相応の注ぎ足しを経たディレクターズカット版を観られるチャンスまで膨らんだ。ここからが本当のお祭りです、皆さんどうぞ検索してみて下さい。

講評、舞台登壇を受けて感じた来年への所感。

まずはお題の消費方法について、やはり審査員の数だけ審査基準があって。正面切ってジャンル小道具あるいはセリフと向き合う姿勢の大切さや他方、細かなライティングや音声に至る部分までしっかり評価対象となる大会で。本当に授賞式当日までどの団体が勝ち上がるのか、あるいは賞レースに絡むのか素人の主宰には全く検討も付きませんでした。素晴らしいこと。

わりかし主宰の携わった作品に対しても細かな質問が飛んだ、初出場の団体とあってか待遇も手厚い。もう自分達の映画へ客観的に向き合う余地は完全になくなりました、後はご覧になった方々へと委ねる他ない。それでもここまで踏み込んであれこれ聞いてくれたのだから期待値は高いものと解釈してよろしいか!?授賞式は約2週間後、結果は神のみぞ知る。

カンヌ受賞作クラスの「モキュメンタリー」を目撃。

各グループの上映後、エキシビションとして海外作品が流れた。その中でも我々が今回挑んだ難題「モキュメンタリー」で世界と十分渡り合える作品に出会いましたので、是非読者の皆様にもシェアさせて下さい。昨年2021年の受賞作『BUILDING A LIFE』まさに我々Orange Candy Houseが理想郷として描いたサイコで際どい作風を見事形にし、米映画ファンを唸らせてみせた。

一方、大阪会場史上最多応募となった今大会において改めて当コンペの意義あるいはルールに則った作品作りが求められる場面に幾度となく遭遇した。あくまで勝ち負けにこだわるのであれば来年以降、カンヌを見据えた戦い方へとシフトしていく必要はあるのかもしれないなあと感じる部分も大きく。この辺りはシーズン2終わりあるいは一段落ついた頃にお話しても良いかな。

次回、授賞式編。

さて、長らくお楽しみいただいてきました「自主映画を、撮る。」シーズン2ですが次回で一旦最終回となります。果たしてカンヌを夢見た総勢17人の精鋭達は授賞式当日どんな景色に出会ったのでしょうか、希望あるいは絶望。もう今から次回作が撮りたくて仕方ない、もう映画なんて懲り懲りだ等々。是非ご期待下さい、忘れかけていた青春時代にもう一度戻れる瞬間です。

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