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David Bowie『The Next Day』リリース10周年に寄せて。

10年前の4月、主宰は仕事の都合で東京におりました。

就職活動中も片手で勘定できるくらいにしか上京する機会がなく、せっかくの週末だってどこへ出掛けてよいものやら。寮生活をしていましたから何かアクションを起こす度、いちいち同期がくっついて来る。勿論同期のことは大好きでしたけれど、休日までくっつき虫の相手をしていられるほど悠長な人間ではありません。気付いたら仕事の話ばかりしていましたし。

気分転換は決まって、ラーメン屋巡りと抱き合わせのタワレコ探訪でした。渋谷、新宿、池袋を隔週ペースくらいでループしていく。ただのメタ的発言であることは百も承知なのですけれど、やっぱり大阪で買った1枚と「東京で出会った音楽」の間には言葉にし難いほど果てしない断層が広がっていて。はたして何かが大きく違いますよ、お店に着くとそれがわかるんです。

A Reality Tour以降はそれこそ、本域の死亡説が流れるレベルだった。

主宰は『Heathen』(2002)で、ボウイ沼に足を引き摺り込まれた一人です。勿論楽曲単位では「Let’s Dance」だとか「Nature Boy」のカバーだとか、Trent Reznorとの合作だとか。断片的に耳にする機会はあったのですけれどガッツリとハマったなと確信したのは「5:15〜」を聞いてからでしょうか。まさか新譜を耳にするチャンスを与えられるとは、思いもよらなかった。

あれだけ広いタワレコが、ワンフロア全部ボウイ一色になってたのですよ。たしか池袋店。KーPOPやアイドルの新曲が出ればそのくらいの状態になる、今じゃ当たり前の光景かもしれない。でもボウイですよ。それなりの物好きが聞いて楽しむジャンルの音楽だと思ってますから、まさか四方八方全部がボウイになっちゃうなんて出来事は今後そうそう起こらないだろうと。

悪い予感は当たりました。2016年の初め、それは黒星と共にやって来た。

まさかこれだけ短い期間の中で、復帰作と遺作とが我々に届けられるとは。2016は悪夢のような1年でした。PrinceもGeorge Michaelも亡くなりましたから。ジャズ研界隈にも『Blackstar』がきっかけでボウイに魅了された後輩達が山ほどいました。正直、かなり難解な部類の作品だと思ってますがまあ良しとしましょう、楽しみ方に正解なんてありません。

後輩には決まって『The Next Day』をセットで薦めるようにしていました。聞きたい音が全部入っているアルバムだよ、聞く時の心持ちやタイミングによってフェイバリットが自在に移り変わっていく不思議なアルバムだよと。30を過ぎてから特に聞き込む機会が増えたのは「Valentine's Day」ですね。もうすぐ、11年目のホワイトデーがやって来ます。

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