『マクベス』第五幕第七場・第八場・第九場
【第五幕第七場】
マクダフ 向こうだな、騒がしいのは。暴君め、現れろ!
きさまを他のやつに討ち取られたら、
女房子どもが浮かばれん。
にわかごしらえの雑兵どもに用はない、マクベス、
この剣、きさまを斬るか、あるいは使わず
鞘におさめるか、どちらかだ。[…]運命の女神よ、
きゃつに会わせろ、それ以上は望まぬ。
【第五幕第八場】
(マクベス登場。)
マクダフ […]待て、地獄の犬め、向きなおれ!
マクベス きさまにだけは会いたくなかった。
失せろ、おれの魂はすでにきさまの一族の血を
浴びすぎた。
マクダフ おれの返事はな、
この剣だ、言語道断、
極悪非道の鬼めが!(両人戦う。)
マクベス むだなまねはよせ、
いくら切れる刀でも空気は斬れぬ、
それと同じだ、おれの血も流せぬ。[…]
おれのいのちは魔力で守られている、
女から生まれた者には倒せぬ。
マクダフ あきらめろ。
きさまがあがめる守護霊とやらに教えてもらえ、
マクダフは母の腹を裂いて取り出されたのだ、
月満ちる前に。
マクベス ――それを言うか、呪われろ、きさまの口は!
せっかくの気力も萎えたわ。
鬼婆どもめ、もう信用ならぬ。
二枚舌で人をあしらいおって、
聞かせた約束は守りながら、
期待は打ち砕く。(マクダフに)きさまとは戦わん。
マクダフ ならば降参しろ、腰抜けめが。
生きて世間に恥をさらせ。
珍獣よろしく引き回し、
柱に看板、こう書いてやる、
「暴君をご覧じろ」とな。
マクベス 降参だと?
若造マルカムの足もとの土をなめ、
有象無象の罵詈雑言など、受けてたまるか。
バーナムの森がダンシネーンに来ようとも、
女から生まれぬきさまを相手にしようとも、
おれは最後の一番に賭ける。[…]来い、マクダフ、
先に音を上げたほうが地獄往きだ!
【第五幕第九場】
マクダフ (マルカムに)国王万歳! いまや殿下が国王です。ご覧ください、
憎むべき王位簒奪者の首を。ついに自由の世となりましたぞ。[…]
スコットランド王万歳!
一同 スコットランド王万歳!
マルカム これより時を移さず、
各人の忠義を閲し、
みなに報いよう。[…]また、
この死せる殺戮者と、悪鬼のごとき妃の手先となって
残虐をはたらいた者どもは、裁きの庭に引き出す。[…]
その余の儀は、神の御恵みのもと、
時と所、方便を得て、とりはからおう。
ともあれご一同、おのおの方に礼を言う、
スクーンでの戴冠式にはぜひ参列ねがいたい。
(ファンファーレ、一同退場。)
――完――