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『マクベス』第五幕第七場・第八場・第九場

ついに戦場で宿敵マクダフと対峙するマクベス。
一瞬、逃げようとするところが哀しい(笑)。
そして、帝王切開だって女から生まれたことには変わりないんだから、落ちつけマクベス(笑)。「女の股から」などと訳されてることがありますが、原文はそんなこと言ってません。
もう気持ちで敗けてるんですよ。そこが哀しい。

でね、家に帰るまでが遠足ですよね。主人公が死んだだけじゃ終わりにならないんですよ。だから、マルカムの勝利宣言があって、やっと『マクベス』が終わるわけです。ここは本当に省略しないでほしい。『ハムレット』のフォーティンブラス到着と同じで、よく省略されちゃうんだけど。
でねでね、本当にマルカムのスピーチかっこよくやってほしい。言葉も君主らしく堂々と。「ボクちん」みたいの本当にやめてほしいのです。角川訳なんて、いきなりマクダフがマルカムに敬語使わなくなってるけど、違うから。thouは必ずしもため口じゃないから。ここにも書いたけど。
https://note.com/sala_mimura/n/nd8b0ff76691c

それにしても、祖国にできる最大の貢献が、自分が死んでいなくなること――って、寂しいね。マクベス。

文中の[…]は原文を省略した箇所です。
太字はとくに有名または/そしてサラのおすすめ台詞です。

【第五幕第七場】
マクダフ 向こうだな、騒がしいのは。暴君め、現れろ!
 きさまを他のやつに討ち取られたら、
 女房子どもが浮かばれん。
 にわかごしらえの雑兵どもに用はない、マクベス、
 この剣、きさまを斬るか、あるいは使わず
 鞘におさめるか、どちらかだ。[…]運命の女神よ、
 きゃつに会わせろ、それ以上は望まぬ。

【第五幕第八場】
 (マクベス登場。)
マクダフ […]待て、地獄の犬め、向きなおれ!
マクベス きさまにだけは会いたくなかった。
 失せろ、おれの魂はすでにきさまの一族の血を
 浴びすぎた。
マクダフ  おれの返事はな、
 この剣だ、言語道断、
 極悪非道の鬼めが!(両人戦う。)
マクベス     むだなまねはよせ、
 いくら切れる刀でも空気は斬れぬ、
 それと同じだ、おれの血も流せぬ。[…]
 おれのいのちは魔力で守られている、
 女から生まれた者には倒せぬ。

マクダフ          あきらめろ。
 きさまがあがめる守護霊とやらに教えてもらえ、
 マクダフは母の腹を裂いて取り出されたのだ、
 月満ちる前に。

マクベス ――それを言うか、呪われろ、きさまの口は!
 せっかくの気力も萎えたわ。
 鬼婆どもめ、もう信用ならぬ。
 二枚舌で人をあしらいおって、
 聞かせた約束は守りながら、
 期待は打ち砕く。(マクダフに)きさまとは戦わん。
マクダフ ならば降参しろ、腰抜けめが。
 生きて世間に恥をさらせ。
 珍獣よろしく引き回し、
 柱に看板、こう書いてやる、
 「暴君をごろうじろ」とな。
マクベス            降参だと?
 若造マルカムの足もとの土をなめ、
 有象無象うぞうむぞう罵詈雑言ばりぞうごんなど、受けてたまるか。
 バーナムの森がダンシネーンに来ようとも、
 女から生まれぬきさまを相手にしようとも、
 おれは最後の一番に賭ける。
[…]来い、マクダフ、
 先にを上げたほうが地獄往きだ!

【第五幕第九場】
マクダフ (マルカムに)国王万歳! いまや殿下が国王です。ご覧ください、
 憎むべき王位簒奪者の首を。ついに自由の世となりましたぞ。[…]
 スコットランド王万歳!
一同         スコットランド王万歳!
マルカム これより時を移さず、
 各人の忠義をけみし、
 みなに報いよう。
[…]また、
 この死せる殺戮者と、悪鬼のごとき妃の手先となって
 残虐をはたらいた者どもは、裁きの庭に引き出す。[…]
 その余の儀は、神の御恵みめぐみのもと、
 時と所、方便を得て、とりはからおう。
 ともあれご一同、おのおの方に礼を言う、
 スクーンでの戴冠式にはぜひ参列ねがいたい。
 (ファンファーレ、一同退場。)

                     ――完――




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実村 文 (theatre unit sala)
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