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透明なシェイクスピア

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もっとクリアに刺さるシェイクスピアを! 新しい翻訳の試みを語ります。 (付記)紙の本、神保町の共同書店PASSAGE(パサージュ)で取り扱っていただいています。どうぞよろしく。…
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#誤訳

透明なシェイクスピア crystal−clear Shakespeare まえがき

いま、この文章を読んでくれているあなたへ。 あなたがこのページにたどり着いたのは、たぶん、偶然ではない。 あなたは捜していたのではないですか? 「シェイクスピア」を。 シェイクスピアは難しい、と言う人たちがいる。 シェイクスピアは難しくない、と言う人たちがいる。 どっちなの、と、思ったりしませんでしたか? 結論から言おう。 どちらも正しく、まちがっている。 シェイクスピアは難しい。400年前の英語だからあたりまえだ。 しかも詩だ。 小説ではない。戯曲だ。戯曲で、かつ、

「生きるべきか死ぬべきか」、それは誤訳だ。『ハムレット』の"例の箇所"について(透明なシェイクスピア(1))

To be, or not to be, that is the question.『ハムレット』三幕一場の「例の箇所」だ。いま、この記事を読んでくれているあなたは、どういう日本語訳で覚えているだろうか? 「生か死か」? 「世に在る、世に在らぬ」? 「生きるべきか死ぬべきか」? あえて言おう。どれも、誤訳だ。 え、どこが誤訳なの? と、あなたは問うかもしれない。 "be"という動詞には「存在する」という意味があるから、その不定詞"to be"は「存在すること」つまり「生き

ハムレットは普通に「え、元気だけど?」って言ってるだけなのに(透明なシェイクスピア(4))

新訳を出すなら、その使命の一つは、それまでの間違いを訂正することであるはず。 ところが、意外にも、「誤訳」ほどそのまま受け継がれていってしまうという現象がある。 今回は、その話をしようと思います。 「元気だ、元気だ、元気だ」って何? ハムレットが歩いてくる。「このまま生きるか否か」、悩みながら。 ふと目を上げると、オフィーリアがいる。祈祷書を手にたたずんでいる。 ハムレットは近づいて、声をかける。「かわいい女神さま、おれのために祈ってくれ」(※末尾にちょっと説明つけました)