就活生と考える働き方改革【後編】|「実は働き続けたかった」に応える、採用・組織戦略
1.はじめに
こんにちは、株式会社SAKURUGにてインターンシップをしています、Izawaです。以前こちらの記事の前編である「就活生と考える働き方改革:『出産と仕事の両立』に関する6つのナゾ」をリリースし、大変うれしいことに多くの方々に記事を読んでいただきました。前編では出産退職者のキャリア課題や出産・育児と仕事の両立での課題について働くひとの立場から見てきましたが、後編となる今回は近年の企業が抱える採用課題とその解決策をSAKURUGの企業事例を通じて探っていきます。前編で述べてきた働くひとにとっての課題は、実は企業側の採用課題とも密接に関連しています。この記事を読んでいただいた方に採用課題に対する解決策の一つとして、「短時間正社員」という選択肢が伝わり、企業や働く人のニーズを反映させた柔軟な働き方の実現に繋がれば嬉しいです。
前編はこちらよりご覧いただけます。
2.「売り手市場」での採用課題
若年層の採用競争はますます厳しく
近年学生数の減少や一部業界の人手不足が背景にあることから、非常によく聞く言葉が「売り手市場」です。近年は特に長期かつフルタイムで働ける若年層の人材が労働力となるため、新卒や第二新卒、転職活動を行う20代と比較的若い年代の採用がどこの企業でも注力されます。企業は高いコストをかけてでも「他社より良い人材」を確保しようと選考の早期化や大量採用を行っているのです。労働力人口が減少していくと言われている中で、今後の若年層の採用単価は更に高騰し、採用における競争も激しくなるでしょう。
企業が見落としがちな「採用の穴」とは
一方で、企業が見落としがちな潜在的な求職者がいます。新卒・第二新卒より少し上の年齢層である30歳前後の女性です。厚生労働省(2022)は20代後半から30代前半の女性の中で、パートタイムへの転職者が他の年齢層に比べて多いことを示しています。(図:左)この年齢は女性が結婚や出産を機に退職や転職を行う時期と重なることから、家事や育児と両立して柔軟な働き方ができるパートタイムに転職する人が多いと考えられます。(詳しくは前編へ)
ただ、正社員として働き続けたかったと思う女性が多いのも事実です。株式会社パーソル総合研究所(2019)は、小学生以下の子どもがいる正社員を辞めた女性の約6割は「出産後も働き続けたかった」と思っていることを明らかにしています。出産後正社員として働き続けたいと望む女性が多い一方、その実現が容易ではないことからパートタイムに転職をする傾向があるようです。
3.退職・転職の際に知ってほしい「短時間正社員」という選択肢
昨今出産や育児と両立しながら正社員として働き続けることを希望する人のための仕組みとして、「短時間勤務制度」がよく知られています。一方で実現が難しい職場環境もまだまだ存在していることを前回の記事では触れました。そこで今回は短時間勤務の正社員として転職・雇用するという選択肢について見ていきます。
短時間正社員とは
短時間正社員とは、フルタイムの正社員よりも短い業務時間の正社員雇用のことです。近年厚生労働省は「多様な正社員」の一つとして導入を奨励しており、育児や介護といったライフワークとの両立や高齢者の再雇用、パートタイム労働者の転職対応という理由からも導入が希望されています。
短時間正社員導入の大きなメリットとして、女性をはじめとする従業員の定着率向上や採用にかかるコストの削減、会社に対する満足度向上などが挙げられます。また企業側も前職での知識や経験を活かしながら、継続的なスキル向上を行える人材の確保ができるため、業務委託やスポットジョブよりも長期的に企業の成長に繋がるというメリットがあげられます。柔軟な働き方を導入することで、優秀な人材の確保とその長期的な就業継続の実現につながります。
短時間正社員の導入状況は?
短時間正社員制度を導入する事業所は年々少しずつ増加しています。厚生労働省によると短時間正社員制度がある事業所は平成27年の15%から29年度には20.8%と緩やかに増えているようです。またこの中で制度利用者ありと回答した事業所は約40%を超えており、平均して制度導入事業所全体の労働者の2.8%(女性が5%、男性は1%)が制度を利用しています。※1
また短時間正社員の導入が増加している中でも、最も利用されているのが一時的または一定期間を定めた短時間正社員制度です。※2 厚生労働省は将来的にフルタイムでの勤務を行うことを前提として、一時的に短時間勤務を行う正社員制度の導入を検討している企業は一定数あるものの、無期限での短時間正社員の雇用や短時間勤務の正社員登用は少ないとしています。このことから短時間正社員制度の導入は少しずつ進んでいますが、採用の時点から短時間勤務制度を設けている企業はまだまだ限られているようです。こうした背景には労働力確保のためフルタイムでの採用を優先する企業の姿勢や短時間勤務制度を受け入れる環境が整っていないことなどが考えられ、まだまだ制度が広まる余地があるようです。
4.実例で見る短時間正社員制度
私がインターンシップ生として働いている株式会社SAKURUGでは、「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」というビジョンのもと、DEIを推進するジョブマッチングプラットフォームの運営や人材派遣サービスを行っています。
SAKURUGの勤務制度で中でも特徴的なのが「短時間スーパーフレックス制度」です。通常のフレックス制度とは異なり、短時間勤務かつコアタイムなしのスーパーフレックス勤務を導入し、子育て中の社員など多様な働き方に柔軟に対応しています。
また短時間勤務をしている社員はもともとフルタイムで勤務していたのではなく、短時間勤務の求人経由で採用されています。実際短時間スーパーフレックス制度を利用している社員の9割が正社員として採用され、その後の長期的な就業に繋がっています。※3
5.最後に
今回は弊社事例をふまえつつ、近年の採用トレンドや採用課題に対するアプローチを探ってきました。現状では「短時間正社員」の導入は少しずつ進んでいるものの、雇用継続や採用に関してはまだまだ浸透の余地があるようです。また短時間正社員の制度導入だけでなく、産休や育休制度の導入・運営も並行して行うことで長期的就労につながることも覚えておきたいポイントです。
これから労働力人口がますます減少する中で、企業そして社会全体として既存の採用アプローチだけではなく多様な働き方のニーズに寄り添いながら働き方を探索していく必要がありますね。
最後に株式会社SAKURUGでは出産を機に退職や転職を視野に入れている方向けの求人プラットフォームSangoportを運営しています。自社での採用やSangoportでの採用支援を活かして、短時間正社員制度や産休・育休制度の導入支援についてのガイドブックを発行しております。こちらから無料でダウンロードできますので併せてご覧ください。