『わたしの知る花』 町田そのこ/著 を読みました。
これはきっと“書き下ろし”だ。
久しぶりに触れた町田そのこさんの小説。読みながらその熱量を受け取り、椅子に座り直してさあここから集中したいなと感じたポイントでそう思った。泳ぎながら一旦水面に浮かび上がって息を吸い、また水のなかへ。そんな感じだった。
そして水のなかで、わたしの“花”をみつけた。
この おばあちゃんのようになりたい
『わたしの知る花』は、とある老人 平さんの歴史をたどる物語である。長い人生のなかで彼には一体どんなことがあったのか。読者は5つの連作短編ストーリーでそれぞれの人から見た多角的な世界から一つの真実を目撃する。
縁があって平さんと人生という長い道のどこかで関わったあらゆる世代の人物がこの物語にたくさん登場する。たとえば彼と出会った高校生たちには「よかったね」「いい出会いだね」と親のような感情になって読み取りながら見守った。
一方で平さんと同世代のもう一人のおじいちゃん、おばあちゃんはそれぞれに人生の先輩として保ち続けた信念のようなものをみせてくれた。それは形はないけれど、こころの真ん中にある大切なものだった。
わたしもこのおばあちゃんのように自分でちゃんと立ちたい。
そうかわたしは、いつか長い旅を終えるときにこれまで来た道を振り返り、この足でちゃんと立ってたと思いたいんだ。本を閉じて黄色いスピンに触れた瞬間そう気づくことができたのだ。この作品から、わたしのこの先の人生の指針となる“花”をもらった。
きっと彼らや彼女らと同じように、この先の道のりは順風満帆とはいかないだろう。これまでがそうだったようにいいことも悪いこともやってくる。タイミングに左右されることもあるだろう。時には折り合いをつけながら前に進まなくちゃいけないこともある。意外な人からの言葉が届いてヒントになることもあるかもしれない。
でもこの“花”をずっと忘れないで持っていたら、この物語でわたしが出会ったおばあちゃんのように「いろいろあったけど案外ちゃんと立ってたじゃないか」と笑ってその時を迎えることが出来る気がする。彼女のような境地にたどり着きたいと、今強く思う。
平さん、おばあちゃん。みんな。
教えてくれてありがとう 。
『わたしの知る花』とのご縁に感謝を込めて。
お読みいただきありがとうございました。
桜
一口メモ:
『宙ごはん』『夜明けのはざま』を読んだ方はより楽しめると思います!