それぞれの決断 3泊4日、北アルプス大冒険(薬師岳〜五色ヶ原)3日目
スゴ乗越小屋に着いて、
すぐに売店の窓口へ行く。
ネパール人が作る本格ネパールカレーが、この山小屋の名物なのだ。
天気が不安でも、とりあえず次の山小屋へ行ってみようと思ったのは、
このカレーが目的でもあった。
ところが、
ルーはあるけどご飯が無いと、ネパール人と思われる山小屋スタッフが言う。
しばらく考え、
「大丈夫、ルーだけください。アルファ米を持ってきたから、」
と言うと、
「じゃあ、、10分後ぐらいに用意する?ご飯戻す時間?」
と、よくわかってる山小屋スタッフさんが言う。
「それで、よろしく」
と、山小屋前のベンチに座り、アルファ米を戻すべく、お湯を沸かす。
お湯でアルファ米が程よく戻った頃、ルーが運ばれてきた。
細かくカットされたじゃがいもや茄子、にんじん、野菜が沢山のネパールカレー、なるほどスパイスが効いていて、本格的だ。
北アルプスの山奥で、ネパールカレーを食べる幸せ、非日常、なんだか夢の中の様で、一人笑ってしまう。
行動食にと持ってきたきゅうりを切って、塩もみし浅漬けにする。そのつまみと2本目のビールを持って、楽しそうに話している男性グループに加わった。
みなさん(ドイツ人1名含む4名)
明日は薬師岳方面へ向かうと言う。五色ヶ原は私だけかなぁ?と思っていたら、そのうちの一人の男性が、あの人も、この夫婦も五色ヶ原に行くってよ。いっぱいいるじゃ無い、良かったね。と教えてくれた。
楽しく会話するすぐ横に、
明日歩く、急な斜面を持つ山が2つ、大きく立ちはだかっている。
ぐっすり眠って、4時の目覚まし時計で目を覚ますと、外は土砂降りの雨と、カミナリだ。
ピカッと光り、ガラガラガラーと豪快に音を立てている。
「これじゃ、外へは出られないなぁ」
と思って起き出すと、すでに出かけた後の寝床がある。
五色ヶ原に向かう予定だった方が、天気が悪くなるからと、朝早く薬師岳の方へ戻ったのだと言う。
カミナリが避けられていればいいが。
昨日一緒に、きゅうりをつまみながら談義した農大生が、カミナリがすごくてと、一度出発したものの、戻って来ていた。
私は予備日もあるし、カミナリが収まるまで、行動出来ないし、と朝食の後コーヒーを飲んでまったりしていた。
カミナリが止んで、小雨になった隙に、五色ヶ原方面に出かけるご夫婦が出発して行った。
携帯で熱心に天気を調べてくれる山小屋スタッフ。それによると、午後からまたカミナリがあると言う。
ソロの男性も、自分の携帯で天気を調べている。それによると、8時ごろには雨が上がる予報だった。そのソロの男性は、8時頃出発すると言っている。
さぁ、決断の時。
私はサッと用意しておいたザックを背負い、小降りのうちに、ご夫婦を追いかける形で出発した。
戻るにしても、進むにしても、
今日の行動時間は6時間、同じ6時間なら、歩いて知ってる道を歩いた方がいいと、薬師岳へ戻る人、
同じ6時間なら、進むでしょ、と思う人、決断は人それぞれ。
今日は、小屋の目の前にそびえる
スゴの頭(すごのず)と越中沢岳を越える、見えているから覚悟とイメージは出来ている。
小雨で展望がよくない中、スゴ乗越小屋のネパール人スタッフに見送られ、小屋を出る。
しばらく下ると、スゴ乗越だ。ここから登り返しが始まる。
急な斜面を登る、
所々、岩に手をついてよじ登る様な斜面もある。進む方向は赤でペイントされているのでありがたい。
展望が良ければどんなに素晴らしかったんだろう。それでも風が雲を吹き飛ばしてくれた瞬間に見せてくれる景色は素晴らしい。
雨でも北アルプスはきれいだ。
稜線歩きが気持ちいい。そして楽しい。来て良かった。しみじみ思う。
風もそこそこ強い、遮るものがない所では、体を低くして歩く。急な岩場を登り切り、スゴの頭の山頂を巻いて、再び降る。そして登る。
岩を掴んでよじ登った山頂が、越中沢岳だ。
山頂標識の側では、雷鳥が何匹もいる。かわいい💕写真を撮りながら追い掛ける。彼らも山道が歩きやすいのか、私が歩いてきた道を、トコトコと登っていった。
越中沢岳を下ると、広ーい平な大地に出た。隔てるものがない、暴風をモロに受けて飛ばされそうだ。
さっさとと通り過ぎると、五色ヶ原山荘からきた女性とすれ違った。
「人とすれ違うと、安心しますね。後もう少し、頑張って」
と、会話を交わす。
後もう少しだけど、もう一つ山を越える。鳶山だ。
ここを下ると木道が始まり、山荘が近い事がわかる。
そして、木道脇は花、花、花。お花畑だ。
相変わらず、霧の中で周りの景色は見えないが、足元の花達は、この雨と風の環境の中でも、元気に花を咲かせている。
まだ雪渓も残っている。
大きな雪渓に感動していたら、小雨が突然叩きつけるよう雨になった。
急げ、木道を走る。幸いカミナリはなっていない。
10分後くらいに五色ヶ原山荘に到着したが、突然のこの雨で、靴の中にも水が入り、びっしょびっしよになった。
山小屋スタッフさんが、
「受付は後でいいので、濡れたものを脱いで、乾燥室へ」
と案内してくれた。
小屋に着いて、ほっとする。
濡れた衣類を脱いで、乾いた服に着替えたら、お腹が空いている事に気がついた。
パスタを茹でて食べる。その間にも続々と登山者が到着する。みんなびっしょりだ。
雨はさらに激しさを増し、窓ガラスを叩きつける。
明日の天気は、今日よりはいいと、山小屋スタッフさんがいうが、果たしてどうなる事か?