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現代医療に感謝したくなるオススメ本『世にも危険な医療の世界史』

普段何気なく利用している、薬や麻酔や手術といった現代医療。
もはや現代医療抜きでは健康的な生活は送ることができないと言えそうです。
しかしそんな現代医療が決してあって当然のものではないとしたら?
ほんの数十年前にさかのぼるだけで、至るところで残酷な治療方法が幅を利かせていたとしたら?
今日は思わず現代医療に膝をついて感謝してしまいそうな書籍、『世にも危険な医療の世界史』の読書感想文を書いていきたいと思います!

もう表紙と帯からしてトンデモない医療の数々が伺えます。笑


あらすじ

『梅毒患者は水銀風呂に入れろ』
『頭痛持ちには水銀入りの頭痛薬』
『泣き止まない子どもにはアヘンを』
『体調不良?ならどんどん血を抜いていけ!』
今なら医者でなくても”あり得ない!”と一蹴してしまうようなトンデモ医療行為が、たった数十年前には行われていた。
かつて人類の”常識”だった残酷で残念な医療・医学の全てを紹介した本!
『本当にこんなことをしていたの……?』とゾッとしつつも楽しめる一冊。

感想①確実にゾッとする思いを体験できる一冊!

読み終えた直後の正直な感想は『現代に生まれていてよかった……』でした。
というよりも読み進めながらも常に、今を生きることができてよかった、と思い続けていました。笑
史上最高の大統領と呼ばれるあのリンカーンでさえも、頭痛の治療として水銀入りの薬を飲み続け、重金属中毒となり症状が悪化するという目に遭っています。
その他にも梅毒にかかったら水銀風呂、体調不良で死ぬまで血を抜かれる、『膿を出せば出すほど病気が治るぞ!』と焼けた鉄を皮膚に押し付けられる……ちょっと考えただけでもこんなの”医療”とは言えないですよね。
それでもこんな”医療行為”がまかり通っていた時代が実際にあったんだ、と思うと背筋が寒くなってきます。
一種の怖いもの見たさで読書自体はどんどん進みますが、読めば読むほど現代医療のある世界に生まれて良かった……と思わずにはいられません。
とにかく、東西問わず何かあれば血を抜きすぎです。笑

感想②ちょっと待って、でも現代でも似たような事行われてない?

思わず『現代医療があってよかった』と思わずにはいられませんでしたが、それと同時に『でも同じような事今も起こっているよね?』とも感じました。
確かに、そう遠くない昔には知識不足からトンデモ医療がまかり通っていました。
でも今だって根拠の乏しい怪しい”医療”に多くの人が集まっているように思うんです。
特に顕著にそれを感じるのはダイエットの分野。
『○○を飲むだけで痩せる』『○○をするだけで痩せる』といった言葉にどれだけのお金がつぎ込まれていることか……。
私も置き換えダイエットなるものに挑戦しあっという間に玉砕した覚えがあります。
今では効果的で健康的なダイエットの方法がそれなりに確立されているのに、それでも人間はラクな方に行こうとしてマユツバな方法に飛びついてしまうんですよね。
ちなみに本書には『断食』という章があります。
プチ断食は身体にいいとか週末断食によって内臓を活性化させるとかの次元を超えて、餓死するまで他人に断食を強制させるという恐ろしい事件がいくつも取り上げられています。
もし一見便利で都合の良い”医療”を見つけたとして、せめてすぐには飛びつかない理性は持っていられるようになりたい、と切に思います。

感想③現代医療ももっともっと進化してほしい!

本書によって改めて現代医療への心からの感謝を感じつつも、もっと進化してほしい部分もあるなという考えも持ちました。
本書では女性の身体に関するトンデモ医療にもいくつか触れています。
ここで触れるにはあまりにヒドイものばかりなので詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、”女性に関する医療”について現代でも改善されていない点があると思うのです。
ずばりそれは出産時。
時に鼻の穴からスイカをひりだすとも揶揄されるような出産の痛みを、未だに日本では麻酔無しで耐えることが一般的になっています。
『麻酔無しで手術』『麻酔無しで抜歯』ならあり得ないとなるのに、『麻酔無しで出産』は普通。
いつか出産を経験するかもしれない身として、それはあまりに絶望的な価値観だと思うのです。
実際無痛分娩にもデメリットがあるのは周知した上で、今後は無痛分娩を心置きなく選べるような社会・経済になっていってほしいと感じました。
私も将来子どもが欲しくなることがあれば、まずは無痛分娩のできる病院を確保してから考えるようにしたいと考えています。

まとめ:ともあれ本当に現代に生まれて良かったと思わずにいられない良書

あれこれと書き連ねたものの、やっぱり現代に生まれて良かった、と思わずにはいられません。
ほんのちょっと(?)昔に生まれただけで毒を致死量まで飲む羽目になったり、焼きごてを当てられたり、死ぬまで血を抜かれて死んだり……やってられないですよね笑
ちなみに翻訳本なので独特の言い回しも目立ちますが、それも味の一つとして楽しめました。

本書のオススメ度:☆☆☆☆★

トンデモ医療本としても世界史の本としても面白かったのですが、ちょっと過激?な記載が多いのと人によってはグロテスクに感じる部分があるかな?ということで、オススメ度は星四つかな、というところです。
怖いものみたさで読んでみたい、という方は良い感じにゾッとできると思うので、ぜひ読んでみてください!

書籍データメモ

  • 書籍名:『世にも危険な医療の世界史』

  • 著者 :リディア・ケイン氏/ネイト・ピーダーセン氏

  • 訳者 :福井 久美子氏

  • 価格 :2,200円+税

  • ISBN :978-4-16-391017-8

  • 発行年:2019年4月20日

  • 発行所:株式会社 文藝春秋


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