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可愛いお医者さんごっこ
医療器具に見立てたおもちゃを床一面に広げた息子が、私に問う。
「ママ、どこか悪いところありますか?」
「お腹の脂肪が気になります」
「じゃあちょっと見せてください」
「ついつい食べ過ぎちゃって、お腹が飛び出てるんです」
「あー、本当ですねぇ!ぽんぽんだぁ!」
(容赦無い反応に傷付く私)
そして息子は聴診器らしきもので私の背中やお腹の音を調べ、飲み薬を処方し、ついでに脚とお腹に絆創膏を貼ってくれた。
「黄色の絆創膏だよ。ピカチュウ絆創膏だよ」
「ありがとうございます、可愛いですね」
「あとはこのお薬を飲んでください」
薬を処方するところまでちゃんと再現して、おしまい。
かと思いきや、「次はママお医者さん役やって」との依頼が飛び込んできた。
「ママ今度こっち座ってね。僕は患者さんやるから」
「はいはい。今日はどうしましたか?」
「僕、パイナップル食べたらパイナップルになっちゃった!」
「えぇ〜!それは大変だ!ちょっと身体を調べてみましょう」
子どもの大胆な発想力には驚かされる。
私は医者として深刻な顔をしてみせながら、息子のお腹や背中に聴診器を当てた。
「お腹の中からみずみずしい果汁の音がしますねぇ。黄色くなってますよ。それに、髪の毛がパイナップルの葉っぱになっちゃってます。あなたは完全にパイナップルです」
「どうやって治すんですか?」
「まず、塗り薬を塗っておきますね。皮膚が硬くなっているので。それと、人間に戻るお薬を1日3回、毎食後に飲んでください」
「はい、分かりました」
さぁ、これでおしまい。
……ではなかった。
次は、「ロケットを見てたらロケットになっちゃった!」と言い出した。
「人間に戻りたいですか?」
「はい」
「でもせっかくだからロケットの姿でどこかへ行ってみたらどうですか?」「えっと、じゃあ…宇宙に行ってきます」
こうしてロケットになった息子は宇宙へと旅立った。
その後、人間に戻る薬をまた処方しておいた。
もちろんこんな風に発展してしまったら、終わるわけがない。
「今度は飛行機になっちゃった!」
飛行機になった息子は私を乗せて北海道へと向かった。
そこで、バニラアイスとチョコアイスとイチゴアイスを半分こにして食べた。
「今度は船になっちゃった!」
船になって、はるばるイギリスへ。
私はキャンディーやケーキを買い、息子はイチゴ味のマンゴーを食べていた。
イチゴ味のマンゴーって何だ。
ついでにお隣のフランスにも行って、フランスパンやマカロンをお土産に買った。
ネタが尽きたのか、これにて私とのお医者さんごっこは終了。
人間に戻った息子はターゲットを爺様に変えて、症状も聞かずに大量の薬を処方し始めるのであった。
おしまい
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