Spectrum Tokyo Design Fest に現地参加しました!
こんにちは、普段は名古屋の制作会社で Webやアプリのデザインをしているさくです。
12月10日に「Spectrum Tokyo Design fest」というデザインフェスに参加してきたので、その様子をレポートしたいと思います💪
イベントに参加したきっかけ
1.メディアを経由でイベントの開催を知った
Spectrum Tokyoという、UX MILKの生みの親である三瓶さんが立ち上げたメディアを知り、定期的に訪れて記事を読んでいました。特にシグニファイニャの記事が好きです。
その流れでメディアを主体としたデザインフェスを開催するとの告知を発見し、ぜひ参加してみたいと思いました。
2.リアルで体感したい&コミュニケーションしたかった
近年はオンラインセミナーに参加することが増え、場所を問わず参加できる恩恵も感じていましたが、どうしても一方通行のコミュニケーションになってしまうことにモヤモヤしていました。
そんな時にこのイベントを知り、リアルの場の空気を体感すること、実際にデザイナーの方と会って話をすることで得られるものは大きそうだと感じました。
そんな経緯があり、どんな体験が得られるかわくわくしながら名古屋から東京へ向かったのでした。
身体知から日常を体験する、人の行動を追体験するワークショップ
はじめに、株式会社ゆめみのCXO・栄前田 勝太郎さんが主催するワークショップに参加しました。
せっかく現地参加するなら、その場でしか味わえないワークショップに参加したい!と思ったのが申し込みのきっかけです。
実際のワークショップの内容は、「今日の朝起きてから5分間の自分を再現してください」というものでした。
最初は何をさせられるんだろう?との疑問もよぎりましたが、自分が認知している行動を外在化して、その曖昧さを認識する目的があるのかなと理解しました。
実際にやってみると意外と5分間を再現するのは難しく、行動を思い出しながらなぞっていると実際には15分間かかっている行動を5分に圧縮して行なっていたりと、認識と実際の行動とのズレを体感できました。
次にペアワークでお互いに自分の朝の行動を教え合うのですが、これがなかなか面白かったです。
自分の体験を相手に伝える難しさを実感したり、当たり前に理解していると思っていた自分の行動を客観的に見ると全然違ったものに見えたりして、これがメタ認知か…!とまさに身体で体験できるワークショップでした。
ペアワークでペアになってくださった方とコミュニケーションを取るきっかけになったのも嬉しかったです。
エシカルデザインとわたし
Classi株式会社のSenior UX Designer、松本 直幸さんのセッション。
エシカルデザイン、なんとなく知ってはいたのですが定義が曖昧だったので、興味深く聴かせていただきました。
エシカル(ethical)=倫理的な という意味で、エシカルを意識してデザインすることはユーザーの自由を尊重することにつながるとのこと。
エシカルデザインは人間の経験、人的労力、人権の3つで構成されており、それぞれに対してデザインが貢献できることはかなりあることを改めて認識しました。
松本さんはエシカルデザインを、「ワクワクうれしいデザイン」と定義されていることが印象的でした。言葉だけ聞くと難しく捉えてしまいがちですが、ユーザー視点でユーザーがハッピーになれる体験を作っていくことがデザイナーの使命であり大切なことなのだと感じました。
デザインのリファクタリング(慣れを大切に)
リファクタリングとは、プログラムの外部から見た動作を変えずに、内部の構造を整理することを指します。主にエンジニアリングの分野で取り組まれてきた活動ですが、安藤さんはそれをUIデザイン、UXデザインの世界でも取り入れよう!という提案をなさっていました。
安藤さんが例として挙げていたYoutubeやAmazonの初期からの変化を見ると、長期的なスパンで少しずつ改善されてきたため、ユーザーである私たちには急激にリニューアルしたという印象は与えずに変化してきたことが分かります。
これまでユーザーに培われてきた「慣れ」や「習慣」を無視して大規模なリニューアルをして本当に良いのか?という問題提起にハッとさせられました。
小さな改善で大きな効果を生むことが大事で、大規模に刷新することのリスクも考えないといけないなと痛感しました。
特にUXライティング(文言)を改善することはコスト対効果が高いけれど意外と見逃されがちな部分なので、デザイナーからもっと積極的に改善提案していこうと思います。
これからの組織とデザイナーの関係、そして新しいデザイナーの姿とは?
A.C.O 沖山 直子さんと、Spectrum Tokyoのプロデューサー、三瓶さんによる対談形式のセッションでした。
沖山さんはA.C.O monsterlabというグローバル組織でデザイン組織のマネジメントを行なっているそうで、グローバル組織に参加してどう変わったかやマネジメントに携わる面白さについてお話しされていました。
中でも印象的だったのは、グローバル組織においては英語以上に文化の違いに苦労したということです。日本とは違いワークライフバランスを大事にする文化だったり、コミュニケーションの姿勢だったり…ただ、そういった違いこそが面白く、チャレンジしがいがあるとおっしゃっていました。さまざまな文化や考え方に触れられることも、グローバル組織で働くことの楽しさなのかなと感じました。
また、デザイナーのキャリアについてもお話しされていて、デザイナーという職種に縛られなくてもいいんじゃないか?というお話には驚きとともに、納得感がありました。
今はデザインと一言に言っても業務範囲は幅広く、職種でその仕事内容を表すことが難しくなっています。だからこそ、個人のスキルや志向を掛け合わせてそれを強みにすることで、唯一無二の価値が出せるのではないかなと思いました。
minneのブランドを反映したイラストができるまで
minneのシニアデザイナー・小林 舞さんのセッション。
minneではブランディングの一環として、カラーパレットの刷新やイラストのリニューアルなど様々な活動を行なっているそうです。
ブランディングは「体験の一貫性をつくる」、「資産になる」、「複利を生む」の3点のメリットがあり、minnneが表現したいブランドを浸透させるための一歩としてイラストのリニューアルを行ったとのことで、きちんと目的や実現したいビジョンを描いた上でリニューアルに取り組む活動が素敵です。
また、従来のイラストが抱えていた課題を解決するために人間のイラストの頭身バランス、顔の向きなど細かい部分まで調整を加えているその過程が印象的でした。
イラストがキーになるデザインを担当したときにその細かい違いがかなり印象を変えることを実感していたので、「わかる〜!」と頷きながら聞いていました笑
ただ、人間の重心をずらすと生き生きとした印象になる「コントラポスト」の考え方を取り入れたり、手のポーズの細かな検証など、ここまで解像度高く緻密な調整を加えられていたのには驚きました。
膨大な検討とラフスケッチを重ねてブランドを体現するイラストを追求されたんだろうなと、自分自身の取り組み方も振り返りながら身の引き締まる思いでした。
自分の不安を受け入れる「こころ」のデザイン
メンタルヘルスケアサービス・Awarefyのデザイナー、村上隆紀さんのセッション。
Awarefyでは、認知行動療法を用いてメンタルケアを行えるそう。認知行動療法とは、物事の捉え方や行動に働きかけて不安を和らげる手法です。
不安は厄介な性質を持っていて、不安について考え始めるとさらに不安が増大し、不安で心が満たされていってしまいます。
この負のループを断ち切るには、まずは行動を起こすことが大事だそうです。すると今に没頭し、自分を俯瞰して見ることができるようになります。
確かに何か不安があるときにただスマホをスクロールしていると余計に不安が膨らんできて、さらには時間を無駄にしたという後悔も加わり、どんどん落ち込んでいくという負のループに陥ることがあります…。
そんなときに認知行動療法のプロセスを知っていれば、自分の好きなことなど気持ちを切り替えられる行動をして客観的に不安と向き合うことでメンタルの安定に繋がりそうです。
不安を不安のままにせず、まずは行動してみようとのメッセージに深く共感しました。
実際にAwarefyはユーザーさんのお守り的な存在になっており、うつ状態から回復しても引き続き使い続けている方が多いそうです。そんなふうにメンタルや生活に寄り添ってくれるサービスは素敵だなと感じました。
「つくりたい体験」からはじめるプロダクトデザイン
最後に、nucumoのサービスデザイナー・野崎 智弘さんと三橋 優希さんのセッションを拝聴しました。
お二人は協力してhidaneというブレストツールを開発されたそうです。その経験から、「つくりたい体験」からはじめるプロダクトデザインについてお話しされていました。
ユーザーの課題を解決することだけを目的に解決方法を考えてしまうと、複数の方向性が生まれ意思決定が難しくなってしまいます。そうではなく、そのプロダクトで実現したい体験は何かを起点に考え、その過程で生まれる課題を解決していく。こうしたプロセスを経ることで「つくりたい体験」に近づけていったそうです。
実際にお2人はプロセスの過程で判明した課題を解決するため、1000人以上にユーザーテストされたとのこと。(すごすぎる…!)
プロダクトを作る過程で課題解決に「あれ、私たちがつくりたい体験ってなんだったっけ…?」と迷いが生じることもあると思います。そうしたときに立ち返り、チームの共通認識となるように「つくりたい体験」を言語化しておくことが大事なのだと感じました。
素晴らしいプレゼンをしてくださったお2人はなんと弱冠20歳とのことで…!デジタルネイティブ世代の発想力と実行力にも驚きましたが、何よりお2人ともプロダクト開発を心の底から楽しんでいるのが伝わってきたのが印象的でした。
AMAも非常に盛り上がり、お2人がこれからつくり出す新しい体験やプロダクトが楽しみになる、1日の終わりにふさわしいセッションでした!
Spectrum Tokyo Design Festの好きポイント
イベントを総括して、自分的にここが最高だった!というポイントをまとめておきます。
カジュアルな雰囲気で、登壇者との距離が近く質問がしやすかったです。
セッション後にはAMA(Ask Me Anything)の時間が設けられており、登壇者の周りに集まって質問できるのがとても画期的だなと思いました!(物理的に距離を縮めると質問しやすくなるという発見👀)セッション会場が2つあったのですが、その間にあるコミュニティスペースでランチには美味しいカレーを食べたり、お酒を飲みながら交流できることが最高でした…名前に違わず、間違いなくフェスでした。
名古屋から単独で行ったにもかかわらず優しく話しかけてくださる方がいてめちゃくちゃ嬉しかったです笑(ぼっちを覚悟していたので…)
最後のアフターパーティーではさまざまな分野のデザイナーさんと話せてとても刺激になりました。noteのブースでは、CDOの宇野さんに気軽に相談できる会をやっていて、僭越ながらお悩み相談させていただきました…!
どこの誰とも分からない私にめちゃくちゃ親身になってお話ししてくださり、神様ですか…?となりました。本当にありがとうございました。
さいごに
サービスのUIやUXを考える業務が増えている中、「なんのためにやるのか?」「どう推進するのか?」といった大切な考え方を学ぶことができました。
また、単純にデザインという共通言語を介してさまざまな方と交流できて楽しかったです。名古屋でもこういうイベントできたらいいな…!
スタッフの皆さま、そして交流してくださった皆さまに最大級の感謝です。ありがとうございました!