Amazonを頂点とした物流業界をモチーフに「今の資本主義、もう無理じゃね?」をテーマに描く【『ラストマイル』映画感想文】
Amazonを頂点とした物流業界をモチーフに「今の資本主義、もう無理じゃね?」をテーマに描いた映画で、宅配便を使った爆弾テロが起こったら一体どうなるを見る、シン・ゴジラ並みのシミュレーションムービーでもある。
テーマをセリフに頼らず映像できっちり表現していて、ブレがないので安定して見ていられるのだが、いかんせんこのテーマを描くためにキャラクターが用意されてしまっており、特に肝心の犯人が国家規模の大犯罪者の割に動機の薄さが気になる。
満島ひかりも途中のミスリードの機能とアメリカ帰りのキャリアウーマンがちゃんぽんされた結果、妙なキャラクター造形となっており、相方の岡田将生が全力の受けの芝居でもってリアリティラインを調節している。この岡田将生の芝居は大変素晴らしい。
シリアスな事件がスピーディーに語られていくのは心地よいが、途中のちょいちょい挟まれる抜け感を出すための例え芸や、ロッカーのメッセージの不明瞭さ具合など、後から振り返ると気になるノイズが目立つ。
TBSドラマ関連の面々も同じでメインのキャラクターに絡む場面がほぼ無く、同じ画にも収まらないので機能しない。だからこそのシェアードユニバースなのかもしれないが。
シングルマザーの家庭や、親子ドライバーといったベタな人間ドラマが差し込まれるが、シミュレーションムービーのドライな部分とハレーションを起こしており、ベタついた人間ドラマを排したシン・ゴジラがいかに的確であったか思い知らされる。
しかし大規模エンタメ作品として、社会問題を明瞭に描いたという部分は素晴らしく、逆にシェアードユニバースにする事で興行を担保し企画を通したのでないかと思わされるぐらい硬派なテーマを描いた映画であった。罪の声という社会派映画を作った自信も感じさせ、今のTBSは大変豊かな企画力と実行力、パワーと心意気を持った覇権テレビ局なのだと実感させられた。