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【新米パパママにおすすめ】公認心理師が教える/幼児健診の歩き方/1歳半健診編#6「言葉の理解」


こんにちは!
幼児健診の歩き方ナビゲーターの
のびしろ丸です。

今回、第6弾のテーマは、「言葉の理解」
今シリーズの第4弾「言葉」では
1歳児の言葉とその表出、
「言える言葉」についてお伝えしました。


前々回の記事はこちら↓


今回は、子どもが言われていること(指示)を、どのくらいキャッチしているかの理解度、
「わかる言葉」
について話をしていきたいと思います。

ことばの氷山


子どもの言葉は、氷山にたとえられます。

表面に出ているのが、言える言葉
その水面下にはわかる言葉、
さらにその下にはわかることがらが潜んでいるといわれます。
今回お伝えするのは、真ん中の「わかる言葉」です。

ことばの氷山  

わかるのが先 言えるのはあと


「ことばの氷山」は、
子どもが言葉を獲得していくプロセスを表しています。

最初に、「わかることがら」である
行為・体験があり、
次に、言われた言葉を理解する
「わかる言葉」に発展していきます。
最後に来るのが、わかる言葉の表出、
「言える言葉」です。

指示理解


1歳半健診では、子どもの言葉の力を、
大人の指示に応じた行動をどの程度とることができるか、で評価します。

健診では、この言葉の理解を「指示理解」と呼んでいます。

私が所属する自治体の健診の問診票では、
下記の質問が指示理解に該当します。

Q.「○○持ってきて」など簡単なことばの指示に応じますか。
  (たとえば何を持ってきますか)

回答は、
はい、いいえ、わからないの選択式に加えて、
持ってくる具体的な物の名称を尋ねる記述式の
2段構えの形式になっています。

1つの質問、複数の指示


身近な大人から
「持ってきて」と言われたものを、
子どもは言葉の引き出し中から、
探し出して持っていかなければなりません。
言葉をようやく覚えはじめた子どもにとって、
これはなかなかのミッションです。

この質問の難しいところは、
1つの質問の中に複数の指示
入っているところです。

さらに、
言葉の理解だけではなく、
指示に込められた意図の理解も必要とする
高度なミッションです。

子どもにとって容易なことではありませんが、
指示する大人の側も、「はい」と「いいえ」の判断を誤りやすい質問なのです。

次の章で、詳しくみていきましょう。

4つに分割する


まず、この質問を4つに分割します。

①「言われた物」を②「探して」
③「言われた人」に④「持っていく」

①言われた物(コップ)を
「コップ持ってきて」と言葉で言われたとき、
テーブルなどの上から、
②探して
③言われた人

④持っていく(=渡す)ことができれば、
「はい」に該当します。

①~④まですべてクリアして初めてこのミッションは、「はい」というジャッジになります。

たとえば、①②をクリアしても、
指示したママではなく、
近くのパパに手渡したり、

③④をクリアしても、
言われてはいない別の物を
持っていくとするなら、
「はい」にはならないのです。

このように細かく言葉の理解をみていくのには、次のような理由があります。

どの段階にあるか


言葉の習得は個人差が大きい領域なので、
1歳半健診では、幅広く子どもの育ちをとらえています。

健診の目的は、のびしろのある子どもに、
「できる」と「できない」
あるいは、
「わかる」と「わからない」で
単純に線を引いて、
白黒つけることではありません。
それではかえって、子どもの伸びていける芽を
見逃してしまうことになりかねないからです。

この質問を通して、健診で把握するのは、
「どの段階にあるか」という点なのです。

理解の幅と興味・関心の幅


この質問では、
理解の幅は次のように測ることができます。

ゴミポイ(ドア閉め)なら<指差しで示したら<視界内の物を言葉だけで<視界の外の物も言葉だけで

下記の図では、左の方にいくに従って
言葉の理解の幅が広がっている様子を示しています。

「〇〇持ってきて」でわかる1歳の言葉の幅


また、持ってきた物のタイプから、
興味・関心の幅を推しはかることができます。

関心のあるもの限定<身の周りの子どもが使う物<大人が使う物の順に、興味・関心の幅が広がっていきます。

乳幼児期の興味関心の広がり


このように、「○○持ってきて」の指示から、
子どもの発達段階を知る様々な手がかりを得ることができます。

みんな違うからこそ


節目の年齢の健診のタイミングで、
お子さんの発達段階を把握することは、
今後の発達の伸びを予測し、伸ばしていく関わり方を考えるうえでとても大切
です。

同じ1歳半でも、お子さんは一人ひとり違います。

言葉だけで持ってくることはまだできないものの、指差しをすれば、大人が使う物も指示した人に手渡せる段階のAちゃんと、
2語文を話し、言葉がたくさん出ていても、興味のある物だけに応じる段階のBくんとでは、発達の状態像はかなり違います。

健診の心理相談では、
相談されたお子さんの状態像を見立てて、
親御さんと共有します。

「今は、こういうことがわかるんだな」と、
お子さんのその時点での言葉の力の段階を把握することで、意思疎通がスムーズに図れるように、関わり方などもアドバイスをさせていただいています。

人とつながってこそ


今シリーズの#4「言葉」では、
言える言葉の数の多さ(語彙数)そのものは
重要ではないという話をしました。

同じように、
「わかる言葉」も語彙数が豊富であればいいというものではありません。
コミュニケーションとして活用していることが大事なのです。

たとえば、単語をたくさん知っているお子さんがいるとします。
「ママ」も「コップ」も「持ってきて」もわかるとします。
ところが、ママから「コップを持ってきて」と言われたときに、反応しなかったり、拒否をする場合もあります。

指示理解には、
言葉の表面の理解だけではなく、
意図の理解も必要なことは先ほどお伝えした通りです。

「持ってきてほしい」という、言葉に含まれた意図や気持ちを汲みとる力、つまり、コミュニケーションとして言葉と関われているかについても、「〇〇を持ってきて」から読み取ることができるのです。

コミュニケーションは、
言葉だけではありません。
聞き取りの得手不得手もあります。
言葉に頼り過ぎず、
アイコンタクトやジェスチャーやハグなどを組み合わせて、その子に合った気持ちが繋がるアプローチを見つけていきましょう。

「ことばをはぐくむ」中川信子 
「乳幼児心理学」山口真美 金沢創 編
「子どもとことば」岡本夏木

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