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飲食店は人づくりと仕組みづくりー9


「スタッフ教育は大事」と考える経営者は多いはずです。
しかし、十分な教育を実施できている企業はほぼありません。
特に教育コストの限られた中小企業はなおさらです。
いきなり現場に入れられてしまった社員は結果を出せずに退職していく。
こんな負のスパイラルをよく見かけます。

人間を育成することよりも、
業務に必要とされる知識や技能、
専門的な技術、スキルを教え込むことに終始してしまいやすいです。
本来であれば、
人間的な成長を促し自立できる精神を育むために指導していくべきです。
例えば、
モチベーションを上げるために褒めるとか話を聞く、
のは末学、
何のために仕事をして誰のために役に立ってるのか?
我々が何を目指しているのか?という部分を伝え、
浸透させるのが本学

というわけです。


今回は「末学」と「本学」のスタッフ教育について解説します。


手法や手段を教える「末学」その目的や背景を教える「本学」


社員教育において、管理者がまず知っておいていただきたいのは、
いくら教える内容が正しくても、
教え方が間違っていると「教えたことにならない」ということです。


学問には「末学」(まつがく)と「本学」(ほんがく)の
2種類があります。
簡単にいうと「末学」は手法や手段を教える学問、
「本学」はその目的や背景を教える学問です。

やり方ではなく在り方を教える!
も同じようなお話ですね。
時間をかけれないとどうしても末学のほうが手っ取り早く簡単に伝わるので、
そうなってしまいやすいですが、
本学を身に着けること=人間力を身に着けることに
繋がるので、
本学を教えている先輩はあなたに出会えてよかったといわれやすいですね。

例えば名刺交換を例に挙げると、
名刺交換の手順や相手の名刺の扱いを教えるのが末学
名刺交換はお互いの紹介と信頼関係構築のために行うものと教えるのが本学です。
名刺交換後の相手の名刺をぞんざいに扱う社員がいれば、
名刺自体の扱い方を指導するのではなく、
名刺を相手の化身と考えて大事に扱うことのメリットやデメリットを教えるのが本学優先の教え方です。
つまり末学よりも、本学を教えないと意味がないのです。

どうしても人は安易に
「仕事を任せるためのテクニック」という末学を教えており、
「任せるとはどういうことなのか」という本学を教えることを疎かにした結果です。

「末学」主体で教えることの3つのデメリット
私たちは本学を教える大事さを知っています。にもかかわらず、疎かにしてしまうのはなぜでしょうか?おそらく教える相手の反応の違いでしょう。

本学には精神論的な要素があります。
「こうあるべき」「……は大事だ」と教えるよりは、
「……という言葉を使うといい」「……というアプリは便利だ」という形のあるものを教える方が相手もメリットを感じます。
形のあるものを教えるのは比較的簡単なことから、どうしても末学を優先してしまうのです。

ここで末学を教えることで生じる3つのデメリットについて説明します。

1つ目は手段の形骸化です。
その手段を取ることが目的になってしまい、
教えた時点からレベルがどんどん落ちていきます。
例えば、お店で店員が「いらっしゃいませ」と挨拶をします。
これは本来、お客さまに対して歓迎の意図を伝えつつ、
店員がお客さまの存在を認識したという防犯上の理由もある行動です。
しかし、末学で挨拶の仕方だけを教えて、それが形骸化した場合、
お客さまに嫌悪感を持たれる怒鳴り声や聞き取れないつぶやきとなり、
本末転倒となってしまいます。

2つ目は伝承されないことです。
伝言ゲームをしたことがある方ならわかると思います。
組織では教えたことが伝承されるのが理想ですが、
教えた人間がまた別の人間に教えるとその内容が徐々に変化していき、
やがておかしな方法に変わってしまいます。

3つ目はモチベーションが下がることです。
教育で大事な要素に「必要性」があります。
本人が必要性を感じないことは、たとえ教わってもすぐに記憶から消えてしまいます。
なぜその行動が必要なのかを理解していないと、徐々にその行動を取るのがバカらしくなります。

「本学」主体で教えることの3つのメリット
逆に本学を教えることで、デメリットがメリットに変わります。
本学は教えるのに時間がかかりますが、それは投資と考えてください。
しっかり投資すれば、十分なリターンがあります。
本学を教えると3つのメリットがあります。

1つ目は、応用が利くことです。
考え方や意味を教えることで、
状況が変わっても自らアレンジして対応するようになります。
これにより教える手間も大いに省けます。

あるレストランで新人のフロア係にベテランの先輩社員が客席の案内の仕方を教えていました。
「君がお客さまだとして、自分で座りたいなと思う場所に案内しなさい」。素晴らしい教え方ではないですか。

別のレストランでは、ランチタイムが過ぎて客席がガラガラの状態で
「お1人さまはカウンターと決まっておりますので……」という残念な対応をしていました。
応用が利くのは、お店としてお客さまに対する本来の目的(サービスなど)が理解できているからこそできることなのです。

2つ目は、伝承されるようになります。
先ほどお話ししたように、
末学は伝承されるにしたがって形骸化していきます。一方、本学は何年、何十年経っても伝承されます。

これは末学で教える手法が複雑であるのに対して、
本学はシンプルであるからです。
ですので、やり方を教える前に会社が大切にしていること、
そして方針などの本学をしっかりと教えることに力を入れたいものです。

3つ目は、やる気が上がることです。
経営者や上司はある物事の全体像が理解でき、
1つひとつの工程の大事さを知っています。
しかし、社員や部下は全体が見えておらず、かつ工程の意味も理解していないことが多いものです。

例えば、
道路工事をしている若い作業員が現場監督にその態度を叱られました。若い作業員は「毎日、毎日、同じ作業で面白くない」と言い返したそうです。
現場監督は作業員に対し、今造っている道の重要性を話しました。
「この道ができれば向こうの村に住んでいる人が、こちらの街に今までの半分の時間で行き来できるようになる。あの村には高齢者が多いので喜ばれるだろう。みんな早くこの道ができることを願っているんだ」。

この話を聞いた若い作業員はどう感じるでしょうか?
自分の作業に重要性を感じてやる気を出すと思いませんか?

皆さんも部下に「チェックしろ」と指示を出すでしょうが、
チェックしないとどうなるのか、チェックがどんな意味が持つかを説明されているでしょうか。
その仕事の重要性を感じなければ、誰もやろうという気になりません。

部下の行動が見違えて良くなる、「本学」の教え方のポイント
ここまでに本学を教えることの大事さをご理解いただけたかと思います。

仕事をするうえで「なぜそれをやるのか」という考えは教えておくべきです。
そうしないと本末転倒の行動を取りかねませんから。

仕事上の本学の教え方にはいくつかのポイントがありますが、

仕事の順番を付ける目的
段取りを付ける目的
報告・連絡・相談をする目的

これだけでも教えておけば、皆さんの部下の仕事は見違えて良くなるでしょう。

あなたはやり方ばかり教えていませんか?
在り方を伝える癖、部下に人間的な成長を促す話法を学び、
素敵な上司が一人も増えると社会が良くなりそうですね!

参考文献
7つの習慣:スティーブンRコヴィー
はじめの一歩を踏み出そうー成功する人たちの起業術:マイケルEガーバー
論語と算盤:渋沢栄一
極意:加納聖士

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