【コラム】タカとハト
3月はアメリカでFOMC、日本では日銀金融政策決定会合があるせいか、ニュースにもFRBや日銀関係者の発言が出てくることが多いし、私も気になるニュースがいくつかあって、記事にしていたり。
で、今日もこんなニュースを読んだ。
日銀の審議委員の方が、物価見通しについてややタカ派の発言をしたという記事。
タイトルだけでなく、このニュースあるいはこのニュースに関連した記事をいくつか読んでみると、最終的には植田総裁が言っていることと大差なく、物価目標の達成の見通しについて確度が上がりつつあるという内容でありまた、仮にマイナス金利政策が解除されるとしても緩和的な政策は維持されるという事も言っていてこれも植田総裁と同意見であり、政策変更時期についても、それはその時点のデータを精査したうえでその時に決定されると言うにとどまっている。
要するに今までの方針と特に変わりないのだ。言い回しの問題。
こういうニュースは実は度々登場するし、これまた時々自分も記事にしたりする。
こういう発言って、わりと円安が進行して物価高が進み国民の感情が悪くなっているタイミングで出てくることが多い。
もちろん必ずしも意図的にやっているとは限らないし、こういうことはアメリカでもよくある。
日銀もFRBも複数の当局者の意見を交換して金融政策を決めるわけで、個々の意見に相違があるのは当然、それでなければ公平な判断なんかできっこない。
ただ、発言に関してはいろんな思惑が絡んでいるような気はする。
現状、FRBが最重要視しているのはインフレの抑制であり、そのために引き締め政策を行ってきたわけだが、現実には理想通りに抑え込めていない。けっこう強い指標が出ている。
アメリカは日本と逆でそろそろ利下げをしないと景気が極端に悪化してしまう。史上最高値を更新し続ける米株価は、突如暴落する危機を孕んでいるので、高金利の長期化による企業業績の悪化がその引き金になるとすればFRBの政策失敗ということになる。だから要人はタカ派の発言をしたりハト派の発言をしたりして市場の興奮を抑えようとする。
逆に日本はデフレからの脱却を目指しながら物価高の影響を最小限に抑えるという完全に真逆の政策を同時に行おうとしている。
そもそもが無理な話ではあるのだ。
正常なインフレに誘導すれば必ず物価は上がるのだ。
でもどこか国民感情として物価高は円安が悪いというふうに印象付けられている。
一方で現在のように日経平均が史上最高値をマークした背景には円安の恩恵がある。
大企業の業績は円安のほうが上がるのだ。そうして業績が上がることに寄って賃金が上昇するのだ。
だから政府は今の時期、円安に誘導しておきたい。
しかし国民感情の悪化は避けなければならない。
もちろん急激に激しい円安になれば為替介入をして円高方向に振らざるを得ないのだが、ということは日本が保有するドルを売るということで、これはせっかく安い時に買っておいたドルを売るということであり、ドル資産の減少になるのでできるだけ避けたい。
政府や日銀がこういうジレンマを抱えた時に、上記のような要人発言が出ると、神経質になっている市場は過敏に反応して大きく為替が動く。
でもこれはあくまでも人が話しているだけのことでコストはゼロであり、日本のドル建て資産も一切減らない。
これが口先介入であると私は思う。
要するに市場を牽制し国民感情を抑えるための政策の一環であると考えている。メディアもそれに乗っかって祭りを仕掛けていると、そういうことでしょう。