“ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観” 第10章
今日のおすすめは!
D・L・エヴェレット “ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観”
屋代通子訳
*本との出逢い
堀元見さんと水野太貴さんのYouTubeチャンネル”ゆる言語ラジオ”で話題となったこちらの1冊。
イビピーオってなんだろう、水野さんが語らなかった箇所について自ら読みたいという想いで手に取りました。
学びがあった記述やピダハンの情報などを、これから各章毎に分けて読書記録を残そうと思います。
ゆる言語ラジオリスナー(ゆるげんがー?用例?)に楽しんで頂けたらと思います。
それでは第10章からどうぞ!
*第10章
*カボクロとは
アマゾンの先住民族
今ではポルトガル語しか話さない。
地域経済に根を張って、れっきとしたブラジル人だと思っている。
200年以上近く、ピダハン社会を浸食している。
腕っ節にものを言わせる男社会
運命論者的なストイックな一面がある。
怠け者や太り過ぎに手厳しい。太っている者は自分が必要とする分よりも多くとっている怠惰な無骨者と考える。
かなり裕福なカボクロも使用人と共にジャングルへ収穫に行ったり、土地を耕したりする。
子供は親のしたい事をさせる所有物で、家計を助けて当然だと考えている。
カボクロ同士はお互いに信用せず、疑いの目を受けている。
カボクロは先住民を怠け者だと嫌って、カボクロと呼び、自身の事はブラジル人や「ヒベイリーリョ(川の縁に住む人々の意味)」と名乗る。
カボクロは自分たちを貧しいと思っており、暮らし向きを良くする為には相当な努力も命さえも辞さない。
とてもユーモアがある。
超常現象を信じている。(詳しくは後述)
大変喧嘩っ早い。
ブラジル人の多くが、アメリカ人は人種差別意識が強くて、自分達が他のどの人種よりも優れていると考えていると信じている為、エヴェレットが白人というだけで威圧してくる事がある。
*ピダハンとの関係
ピダハンは、カボクロを「アウウーイ・ギーイ(本当の外国人)」と呼ぶ。他のアメリカ人や都市在住のブラジル人は単にアウウーイ(外国人)と呼ぶ。
ピダハンがカボクロと上手くコミュニケーションできるのは、出会う頻度が高く、同じ環境を共有していて、狩りや漁、ジャングルの知識などおおむね似通った技術を持っているから。
ピダハンは外界の知識の殆どをカボクロから仕入れている。
ピダハンはカボクロと違って、物質的には乏しいが「貧しい」という概念がなく、自分たちが持てるものに満足している。
カボクロが信じる超常現象や信仰に関心を持ち、しょちゅう話題に出したりエヴェレットに質問する。
*エヴェレットの恩返し
第3章で妻と長女がマラリアにかかり、命がけで病院に向かったルートを、エヴェレット一家は年に1度必ず通って、交流を深めていた。
①ある日、パウ・ケイマードの集落に船で近づいていると、滅多な事では他人に助けを求めないカボクロが、エヴェレット達に手を振り助けを求めて来た。
第3章で途方に暮れて、無我夢中で助けを求めていた際に見た土手と同じ家々が広がっていた。
エヴェレット達は「今度は自分たちが手を貸す番だ」と薬品箱を手に女性の家に向かう。
②カボクロ達は、牧師でも誰でもほぼ例外なくハンモックに寝るが、珍しく板とヤシ材で作られ、フォームラバーのマットレスが敷いてあるダブルベットに、セウ・アルフレド(ミスター・アルフレド)で通っている老人が寝ていた。
③アルフレドはダニエルに気付き「ああ、ダニエルさんでしたか」と言う。
エヴェレットが病院に行くを提案したり、何か出る事がないかと尋ねるとこのように話した。
「いいえ。死ぬ事は怖くありません。イエスの元へ行けるのですから。長い間、本当によい人生を生きる事が出来て感謝しているのです。
子供や孫に恵まれ、みな私のそばにいて愛していてくれる。
自分の人生と家族に本当に感謝しているのです。」
④死を目前にしてもなお揺るぎない成熟と、悲しむ周囲の人に慰撫をもたらそうとする姿に感動するエヴェレット。まるで聖人に謁見したような心持ちになりながら、その場を去り、川を下る。
*カボクロのユーモア
金持ちになったカボクロが、背中にお金をぶら下げている新品の服を着ていたので何故かとエヴェレットが尋ねると、
「今までお金を追いかけていたので、これからはお金に追いかけられてみようと思ってね」
男の子がおばあちゃんにコーラを買ってと頼んだら断られたと父親に話すと、「それじゃあおばあちゃんを殺しちゃおうか」と真面目な顔で提案する。
男の子は「だめだよ。おばあちゃんなんだから」とおばあちゃんに走って戻ると、父親は目立たないようにひとり笑っていた。
*カボクロの信仰
以下の思想が混ざり合っている。
・カトリックの教え
・トゥピなど先住民の言い伝えや神話
・マクンバというアメリカ系ブラジル人の心霊術
クルピラというジャングルの美しい女性の妖精が、ジャングルの奥地まで誘い込むと信じている。
クルピラの足は後ろ向きについていて、さまよえる魂は意図せずジャングルの奥地に入ってしまう。
アマゾン川のピンクのイルカは、夜は色白の男の姿になり、若い処女を誘惑するとも信じられている。
食べ物の迷信が多く、食べ合わせによって苦しみながら死ぬ事があると信じている。
例:マンゴーのような酸味の強い果物を食べている最中の牛乳。
*今回で第1章が終わりました!
全17章のうち第10章です。
残り7章とエピローグをこれからもお楽しみ下さい。
*それではまた次回第2部でお会いしましょう!