人事評価制度の根幹はなにか? -壺中人事塾での学びシリーズ-
9月頭から、人事担当者のための塾「壺中人事塾」に参加しています。「図解 人材マネジメント入門」などのご著書で有名な坪谷邦生さんの塾です。
塾の活動は、坪谷さんから直接教わる「学習会」、少人数のチームでディスカッションしながら持論を磨く「研鑽会」などから構成されています。「学習会」はいつも坪谷さんが、参加者が自ら思考できるようにいくつかの問いをお渡しくださり、その問いに対して各自が思う解を場に出しながら進みます。この塾での学びが毎回とても深く、自分の学びのためにストックしておきたい気持ちと、日々人や組織のことでお悩みの尽きない人事・経営者のみなさまにも少しお裾分けができればと思い、noteにすることにしました。
今回のテーマは「人事評価」です。
評価される原体験
講義の中で、自身がこれまで「されて嬉しかった評価」「嫌だった評価」について振り返る時間がありました。
されて嬉しかった評価・・・・
私の場合思い浮かんだのは、自身が「これはやったぞ!」と思える施策について高く評価された時。もしくは「これはうまくいかなかったな」と思ったミッションについてもっと期待していると率直にいってもらった時。まとめると自分の評価と上長からの評価が擦り合っている&率直なフィードバックを受ける時かなと。
逆に、嫌だった評価。
これ、一生懸命考えたんだけど、思いつかない・・・・本当に思いつかない。忘却の彼方にいっているだけかもしれないけど・・・
これまで人間関係の悩みがもちろんなかったわけではない(なんなら人間関係の難しさでメンタルダウンした経験もある)けど、自分の直接の評価者であるマネージャーは、変な人はいなかったなあ・・・と思うのです。どの上司も、常に自分の成長のために率直なフィードバックをくれたし、組織がよくなるようにちゃんとコトに向かって仕事をしている人たちだった。考えてみればとても幸せなこと。
こうして自分の評価される原体験を振り返りながら、こんな調査報告をシェアしてくださいました。
働きがいを高める人事評価とコミュニケーションの鍵とは?
リクルートマネジメントソリューションズの調査で、企業で働く会社員519名に、人事制度の実施状況や満足度などを調査した結果のレポートです。
この内容もとても興味深かったのでいくつかここにも抜粋させていただきます。
まずこちら。人事評価制度への満足度を問う設問ですが、半数は満足していないんですって。
あとこれもおもしろい。「評価をめぐる上司とのコミュニケーションで意欲が上がる瞬間・下がる瞬間」のまとめ。
こうしてみていると、
・自分が頑張っている分を感謝・承認されるのはやっぱり嬉しい
・自分の成長のために建設的なアドバイス・フィードバックをくれるのも嬉しい
・逆に、批判するのみで未来に向けたアドバイスがないことは不満を生む
こんなことが見えてきますよね。至極当たり前というか真っ当な話というか、自分の原体験とも一致する部分が大きくあります。
人事制度運用における人事の役割とは?
こうして考えてみると、イチ従業員としての評価制度に求めていることは、ごくごくシンプルで当たり前のこと。なのに、設計する人事の立場になった途端、MBOだのOKRだのなんだのと、やたらとテクニカルな視点、トレンド、HOWに視線が行きがちですね。
坪谷さんの書籍から少し抜粋します。
では人事の役割はなにか?というと、この、評価者・被評価者双方の信頼関係を構築するために、使いやすい道具を渡してあげることだとあります。具体的には、透明性の担保、丁寧なフィードバックを行う仕掛け、評価者の育成に、都度のフォローなど(「図解 人材マネジメント入門」より)。
人事評価制度に限らずあらゆる人事施策に通ずることかもしれないですが、様々な具体的な打ち手や流行り廃りはあれど、決定打はない。こと評価制度の運用については、枝葉に左右されず、「その道具は人と組織の信頼関係を助けるか?」この視点を常に持っておくべきなのだろうと思います。
放課後より
毎週の坪谷さんの「学習会」のあと、残れる人は残って雑談する時間があり、通称「放課後」と呼ばれています。ここで参加者の皆さんが場に出してくださる悩みや葛藤などが本当に深く、共感の嵐。それに対しての坪谷さんのコメントがこれまた、共感しすぎて首がもげそうなのです。
この日の学習会で特に学びが深かった言葉をご紹介して、今日の記事の結びとします。
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誠実さは後天的に身につかない。誠実な組織をつくろうと思うならば、誠実な人をマネージャーにすべき。
葛藤しない人事はニセモノ。
従業員からの反対意見が出た時、自分を支えるのは人事のプロとしての持論である。
人事とは「人を生かして事を成す」こと。これを「そうだよね、あなたはいつも人を生かして事を成す仕事をしているよね」と周囲の人から思われるようなレベルで、人事自身が一番体現しているべき。
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