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小さなにんじんから知った、うれしい褒め方

次女の初節句だった。

先日、わが家は年中にんじん料理を作る、というお話をさせてもらったが、やっぱり雛祭りの日も、にんじんが登場した。

メインは手巻き寿司パーティーなので、今日作ったのは、お吸い物と、にんじんの小鉢のみ。ちょっと、心を込めた。

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食卓をのぞきこんだ、長女。

『わー ! かわいい〜!♡♡
 きれ〜い♡♡ おいしそ〜う!!たのしい!!!』

歓喜の声で、くしゃっくしゃの笑顔になって、拍手をしながら、褒めてくれる 2 歳の長女。

『おかーさん、かわいい!すごい!♡』

(私)「えっ、ほんと?すごい? ありがとう!お母さん、うれしい〜」

長女がパチパチと拍手をするのにつられて、私も拍手する。

『ねぇ、おとーさん、みて!にんじんさん、かわいい!
 おかーさん、かわいい!おとーさん、かわいい♡』

パチパチ、パチパチ!娘の拍手。
にんじんにまぎれて、なぜか、私も、お父さんも、かわいいことになっている。

『ほら、おとうさんも、拍手して♡』

お父さんも強制的に拍手させられる。
パチパチ、パチパチ、パチパチ…
みんなで、拍手喝采。
なんだ、このめでたい感じは。

今日の主役であるはずの次女 (10 ヶ月) も、“なんか、たのしそう” と察し、嬉しそうにしている。

食卓の小さなにんじんが、家族の盛大な拍手に包まれる。
まるで、コンサートホールで、アンコールの拍手が鳴りやまないように、食卓を囲む拍手は、続く。


なんだ、この光景…。
たった、にんじんの小鉢をつくっただけなのに、 このおめでたい風景。

これぞ、お祝いじゃないか…!

それに、なんか私、いま、すごく褒められている。
盛大に、褒められている…!
うれしい…

この時、私は気付いた。

喜びを伴う褒め方は、すごく、嬉しい。


これまで、「褒め方」について考える機会が幾度かあった。

大学教員になったとき、教員として学生を褒めるのは、どうするのが適切か。
母親になってから、子どもを褒めて伸ばすとはいうけれど、どのように褒めたらいいか。

それに、昔、すごく褒める先生がいて、とにかく、なんでも褒めまくる先生だったのだけれど、どうも、私はその褒め言葉を素直に受け止められなくて、無理やり褒めてあげている感に、違和感を感じてしまった。

だから、褒め方って難しい、と感じていた。
なのに。

いま、まだたった 2 歳の子に褒められて、ものすごく、うれしい。
単純に褒められて、単純に、うれしい。


2 歳の長女に、褒めて「あげている」というような感じは、まったくない。
なんだろう、この純粋な、透き通るような、うれしい褒め方。

そうか、娘は、褒めているなんてきっと思っていない。
思ったこと、感情、そして娘の心そのものが、たまたま、「褒める」という形となって、表れているだけではないか。

にんじんが、かわいいお花になっているという、“ 喜び ”
いつものにんじんが、今日はおしゃれをしているという、“ 驚き ”
かわいい器ににんじんが盛られ、楽しい食卓の雰囲気に感じた、“ 嬉しさ ”


そういった、喜びの心を、「褒める」という形で表しているだけではないか。

そうか。褒められて嬉しい褒め方は、“ 心を伴った ” 褒め方だ。
そしてその、心を伴った褒め方は、すごく純粋で、すごく、嬉しい。


これまで、学生さんを褒めようと考えるとき、褒めて伸ばすことを目的としてしまって、純粋に、褒めるとことに対する驚きや、感謝、喜びといった自分の心を、ないがしろにしてしまっていたかもしれない。

子どもを褒めるとき、育児のお手本には「具体的に褒める」などと、色々と書かれていて、きっとそれが理想的なのだろうけれど、そのように頭を使って褒め方を工夫しようとすればするほど、私には不自然で、難しかった。

ならば、そんなふうに頭を使う褒め方よりも、もっともっと、心で褒める褒め方をしてよいのではないか

はじめて赤ちゃんがつかまり立ちした時に、
「すごい!上手!」
と興奮して、思わず褒めてしまうときとか。

よその人が見たら、ぐちゃぐちゃの線にしか見えない絵を、「おかあさん」と言って書いてくれたときに、
「わぁ、なんて素敵な絵、うれしい!」
と心から喜んで、褒めるときのように。

自分の中に芽生える感情や心を、
「褒める」という形で、純粋に表したらよいのではないか。


前に、「すばらしき 2 歳児」という記事を書かせてもらい、その中でこう述べた。

「私がとくに尊敬しているのは、長女の褒め方だ。「妹ちゃん、かわいい」と、極めて純粋に、楽しそうに褒める。褒めたその先に、なにかを求めているわけではない。自分もかわいいと言われたいから、かわいいと褒めるわけでもなく、褒めたら相手が喜ぶだろうから、褒めるわけでもない。単純に心からかわいいと思うから、かわいいと褒める。」

そのときは、どうして娘が、こんなにも、心にすっと入ってくる褒め方をできるのか、わからなかったが、今ようやく、つながった気がする。

褒めるということの奥にある、自分の感情を、大切にすればいいんだ。


初節句の小さなにんじんと、それを喜ぶ子どもたち。
そんなお祝いの一面から、うれしい褒め方について、気づかせてもらったように思う。

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