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お宝ノートの軌跡 ~小学生から京大までのノートたち~
小中高と、塾に行かず地元の学校に通い、高校卒業後に 1 年浪人したのち、
京大に行きました(博士号取得まで 9 年間いました)。
ノートが大好きで…。
そんなノート好きの勉強法の記録です。
小さい頃からノートに書くのが好きだった。
いまはタブレットとか、はやっているみたいだけれど、私は自分の子どもたちには、紙に自分の手で書く大切さを伝えたい。
手で書きながら、自分の字で考えること。
ノートという見える形で、頭の中が整理されながら、ノートが完成してゆく過程。
好きだったし、いまも好きだ。
*
お正月に、実家で私の色々を整理していると、たくさんのノートが発掘された。
あぁ、懐しい。あれも、これも。
そのまんま覚えている。記憶どおりのノートだった。
ずっと、がんばってきたんだなぁと、少し色あせた実際のノートを手にしながら、ただただ、うれしくなった。
そんなコレクション。
小学生の頃のノート
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ぜんぜん勉強のノートではないのだけれど、これは、「ジャッキー物語」という40 ページくらいの小学生の頃のノート。
飼っていたジャッキーというハムスターについて書いた本みたいなもの。
懐かしく見ていると、父が覗きこみ、
「これ、小3 で書いたの? すごい!章立て、構成…論文みたい!いまの論文の原型だよ、これは!」となぜかべた褒め。笑
小学生の頃はこんなことばかりしていた。あとは、木登り。マンションじゅうの木に登っていた。てっぺんまでのぼったら自分の名前を幹に掘っておりてくる、ということをひたすら繰り返していた小学生時代。ダンボールで自動販売機もよく作った。
それから習い事をたくさんしていて、夕方からは毎日ピアノを 2 時間練習していたから、塾に行く時間は無かった。たくさん遊んでいたけれど、これでよかったと思う。
ただひとつがんばっていたのは、算数。
算数のノートは今はもう残っていないけれど、算数は 3 回勉強していた。
(1 回目) 学校の授業の 3 ヶ月ぐらい前までに「これでわかる 算数」という参考書でだいたいを知っておく。
(2 回目) 本番の学校の授業。
(3 回目) チャレンジ (進研ゼミ) ←ほぼ付録目当て^o^
(1 回目) はすべてをはじめて学ぶので、すごく、すごく、時間がかかる。
(2 回目) で定着させる。まちがえたところをぬきだして、何回も何回もできるようになるまで復習する。ぜったいに、まちがえたところを放置しない。
(3 回目) は仕上げなのでサラッといく。
記憶力がないことは、長所だ。
いつもそう思ってきた。短い公式でさえ、なかなか覚えられない。だから、いつも考えた。なぜそうなるか、自分で理由を、考える。記憶力がなくて、逆によかった。
中学生の頃のノート
これは、中学生の頃の社会のノート。
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荒れ放題の地元の学校だったけれど、プリントの余白に、速記の人みたいに、先生のお話をすべて高速でメモしていた。みんなには塾があるけれど、私にはなかったから。
お話で覚えたほうが、わかりやすい。とにかく覚えられないから、お話にする。
まず、穴埋め式ノートをつくる
→ つぎに、自分でつくった空欄に穴埋めできるようになるまで、何回も覚える。
→ 仕上げに、ノートを見なくても、すべてノートをまるごと暗記して声に出して言えるようになるまで、「お話」を覚える。
(記憶する勉強は寝る直前にすると定着率がぐんとupする。そして朝一番に前の晩の復習をする、それで効果倍増。)
これは理科のノート。…もはや美術の時間と化している。笑
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これらは、社会も、理科も、それから家庭科や体育までもすべて、一冊のルーズリーフにはさみ、大切に持ち歩いていた。分厚いはみ出んばかりのルーズリーフ。重っ。
でもなんとあるとき、このお宝ノートを、教室の引き出しに忘れて帰ってしまったのだ。
あぁ、私のお宝ノート…。全財産…。
いそいで取りに戻ると、偶然それを見つけた先生が拾ってくれていた。しかも中身を見て驚いたらしく、勝手に職員室中に披露していた。到着したときには、職員室中で話題になっていた…。
高校生〜一浪のノート
高校生の頃から PMS が重く体調不良が多かったので、なかなか思うように勉強できなかった。なので結果、一浪することになった。けれど、浪人生活はただ学ぶことだけをしていればよかったので、すごく学問を楽しめた一年だった。
むちゃくちゃ楽しくて、もし合格することが保証されているなら、もう一度経験してもいいくらい。
以前、打ち上げ花火の法則について書いたことがある。
「目の前の具体例を、いったんひゅ〜と空にあげて、一般化して、またべつの問題に出会ったときに、ひゅ〜っと抽象化した方法を戻してくる」と。
高校〜浪人時代のノートは、そんなふうになっている。
たとえば数学のノート。
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色ペンで囲ってあるところが、打ち上げ花火の法則で、「ひゅ〜と空にあげた抽象化した」事項。これを、脳内にたたき込む。しっかり復習して、具体例と共に自分の「打ち上げた空」のレパートリーに加えていく。
これは、化学のノート。まとめノートではなくて演習ノートなので、字がきたないけれど、ちゃんと自分の字で、解けるようになるまで、解く。
基本的に○は付けなくて、× のところだけ赤で書き込むスタイル。まちがえた所が大事だから。
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そして現在
大学に入ってからは、好きだった化学を中心に、とても勉強した。
その甲斐あってか、京大の大学院にあがるときの大学院入試では首席で合格することができた。
そして念願の研究室生活。
そこから、知識の入って来かたが、変わってきた。
これまでは、知識はまとまって入ってくることが多かった。単元ごとに分かれて学ぶことの多かった知識。
それが、大人になると、いろんなときに、いろんな知識が、バラバラと入ってくるようになる。
だから、うまくノートとルーズリーフを使い分けるようになった。
バラバラの知識は、ノートに。
まとめたい事柄は、ルーズリーフに。
バラバラに入ってくる知識は、ノートにメモする。いつ、どこでメモしても、ノートならとりあえず、メモをなくさないから。
私は、メモは A3 のノートでとる。
はじめは、大きい!って思う。メモってふつう、小さなメモ帳じゃないの、と。
でも、バラバラに入ってくる知識を小さなメモ帳にメモしてしまうと、どのページに書いたかを見失って、パラパラとページを探す時間が無駄だ。
だから、どーんと大きい A3 のノートにメモする。いっぱい書けて、しかもすぐにメモした事柄を見つけられるから便利。私はずっとこのスタイルが好き。
逆に、まとめたい知識はノートではなくて、ルーズリーフに書く。そうすると、バラバラに入ってきた知識を、順番を入れ替えながら、整理して蓄積していくことができる。
透明のルーズリーフが好きでいつも愛用しているけれど、リッチな大人なルーズリーフやノートも好きだ。
革製品で、オーダメイドの一冊。これらは日々のアイディアノートにしている。イニシャルも入ってお気に入り。
*
実家でこれらのノートを眺めていると、妹がやってきた。
「おねえちゃんに、受験の心得というのをもらって、それをずっと、何回も大切に読んでいたよ」
…私、そんなこと、言ったんだ。というか、なに言ったんだっけ…?
まったく覚えていないけれど、それでも、そのなにかわからないことを、妹がずっと大切に覚えてくれていたのが、うれしかった。
いつか、まだ幼い娘たちも、勉強をはじめる日が来る。
勉強の内容もだけれど、勉強法そのものを、自分で考えられること。
それが、できる子になってほしい。
そのとき自分の好きなことを、勉強のなかに組み込めたら。学ぶことがますます楽しくなると思っている。
それが私の場合、ノートだった。