メロドラマに潜む狂気 「ナイル殺人事件」感想
コロナ禍の延期に次ぐ延期を経て、2月25日に満を持して公開された「ナイル殺人事件」。
ケネス・ブラナー演じる名探偵エルキュール・ポワロシリーズの第2弾だ。
ナイル川を進む豪華絢爛な客船「カルナック号」で起こる不可解な殺人。
その巧妙なトリックに「灰色の脳細胞」を酷使して泥臭い推理で挑むするポワロが存分に楽しめる作品である。
今回の記事は、もちろんストーリーに関するネタバレは避けるが、全くの予備知識ゼロで見たい人はブラウザバックをオススメする。
豪華絢爛な観光映画
今作の舞台はエキゾチックな香りがするエジプト。
ピラミッドや神殿、由緒正しいホテルなど、劇中には情緒溢れる風景がたくさん盛り込まれている。
ここ数年のコロナ禍のせいで、全く旅行に行かなくなった身としては、異国を旅する「観光映画」としても十分楽しめた。
しかも今回はなんとIMAX上映もされている!
65mmパナビジョンカメラで撮影された、なんとも味のある映像を大画面で楽しむことができた。
IMAXといえばアクション映画のイメージがあったが、こんなシブい作品をIMAXに漕ぎつけた関係各社に感謝したい!
黒に黄色を基調としたタイトルロゴやエンドクレジットも超ステキだ。
今作も個性派勢ぞろい
そして今作も前作に負けず劣らず、個性派なキャストが布陣を固めている。
「ワンダーウーマン」のガル・ガドット。
「コードネーム U.N.C.L.E」のアーミー・ハマー
そして「ブラックパンサー」のシュリこと、レティーシャ・ライト
などなど、実力派俳優で布陣を固めている。
なかでも、ガル・ガドットの恋敵を演じるエマ・マッキーがすごく印象に残っている。
本作のキーパーソンである魔性の女性を演じているが、時に妖艶、時に人間臭い演技に見とれてしまった。
知らなかった女優さんだったが、もっと他の作品でも見てみたいと思った。めっちゃ美人やし。
そして前作ファンとしては嬉しいトム・べイトマン演じるブークが続投!
どうやらブークは原作には出てこない人物のようだが、今回のポワロシリーズではさながらワトソン君のような位置で、仲の良いポワロとの掛け合いのシーンは、張り詰めた劇中の中でもほっこりする要素だ。
主役のポワロ演じるケネス・ブラナーはもう言うまでもない。
私は「ケネス・ブラナー万能説」を提唱しているほど、彼が今の映画シーンに無くてはならない存在だと思っている。
詳しくは前作のレビューをご覧されたし。
最強の"昼ドラ"
ポワロの名言に「人は愛のために何でもする」というのがある。
この言葉がまさに本作を体現しているように感じた。
物語りの序盤から、愛憎極まる男女関係が展開される。
これは語弊があるかもしれないが、「超豪華な昼ドラ」を見ている感覚だ。
幾度となくあらわれる修羅場に、終始ヒヤヒヤした…
本作は前作と比べて事件がなかなか起こらない、"立ち上がりの遅い映画"なのだが、そんなことは全く気にならないほど、男女の駆け引きにシビれた。
明かされるポワロのオリジン
そして、今作には原作で語られていないポワロ誕生の秘密が描かれる。
オープニングシーン、「あれ?入るスクリーン間違った?」と思うぐらいタイトルとはかけ離れた意外な場面設定から始まる。
「なぜポワロは探偵になったのか?」
「ポワロはなぜ口髭を生やしているのか?」
「ポワロ自身の恋愛事情」
そんなポワロの内面にフォーカスした謎が明かされるのも、原作ファンにとって興味深いのかもしれない。
恋は盲目
前回の「オリエント急行殺人事件」は、人に沸き起こる純粋な憎しみや恨み、はたまた敵討ちのような側面を描いた作品だった。
しかし今作は、恋愛、セックス、そして嫉妬といった"人間の愛欲"というものにフォーカスした作品だと思う。
「恋に落ちると人は周りが見えなくなる」とはよく言ったもので、この記事を見てくれている貴方も経験したことがあるかもしれない。
「世界がゆがむほどの恋愛」が、時には取り返しのつかない過ちを生む。
妖艶なエジプトを舞台に展開する「極上の愛憎劇」を是非とも映画館で体験してほしい!
こちらはパンフレット。監督やキャストのインタビューや、原作者のアガサ・クリスティーの生涯や他作品の紹介まで、充実した内容だった。
キングスマンの時にも思ったのだが、「サイズの小さなパンフレット、クオリティ高い説」を是非とも提唱したい…
こちらはIMAX版ポスター。めっちゃカッコいい!
ポスターもらえるかなと淡い期待を持ったのですが、ダメでした。