河川文化圏が創り出すアイデンティティ
生まれも育ちも兵庫県なので、兵庫県の河川のお話しになるのですが、他の地域でも同じようなことなのだろうと推測して読んで頂ければ有難い。
兵庫県の代表的な川として千種川・揖保川・夢前川・加古川などがある。そのぞれの川に特異性があり、それが河川文化圏の各地域のアイデンティティを創り出しているということ。
私が育った佐用は千種川という川が流れ、子供の頃は夏になると毎日のように泳いでいた川です。地方に出て、出身が佐用だと話しをすると『洪水のところやね』という返答が大半で、千種川の美しさが伝わらないのが残念に感じていた。さらに時折、故郷に帰ると残念なのが、洪水という脅威によってコンクリートで固められていく風景と、水嵩が減り、岩がなくなり、泳いでいた場所は泳げない場所に変化していること、、。
三面コンクリートなどの河川問題は後々話すとして、河川が地域の文化・アイデンティティを創り上げているという話しをすると。龍野市の揖保川では素麺・皮革産業・醤油が盛んで、加古川は昔は綿で栄えてた、それぞれの産業が気候や風土によって関係し、地域を取り巻く周辺地域との連携が見えてくる。
なぜ龍野が薄口醤油の発祥となったのか、皮革産業が盛んになったのかなどを調べていくと、水が超軟水であったことや赤穂の塩産業や丹波牛の発展が龍野の皮革産業に関係している。そして千種川より揖保川の方が洪水確率が少なく穏やかであった為、同じ超軟水でありながら揖保川に産業が流れていったとも考えられる。
では何故千種川は洪水確率が高いのかというと、千種川の根っこにあるタタラ製鉄での資源的な面も関係すると思うのです。そして脅威というのは、今の現代土木ではコンクリートで固めましょうだけど、昔の人には信仰で鎮まりたまえであったと思うのです。千種川に30余並ぶ大避神社には、秦河勝という人物が祀られているのですが、秦河勝は伝統芸能の祖であり、神であると同時に荒神様としても祀られています。
自然の脅威が信仰を生んでいたことを考えると、荒神様を祀る千種川に必要なのはコンクリートで固めることではなく、本来は自然に敬意を払うような川を繋ぐお祭りなのではないかと考えてしまうのは、私が祭り好きだからなのか、、。
プラス伝統芸能の神様であれば、祭事・祭りで鎮めたもう!とはならないだろうか?それが千種川のアイデンティティを守ることじゃないのか!と思ったりしている今日此頃なのである。
そんなに風に川には川のそれぞれの文化があり、周辺地域との連携で成り立つ産業が発展していることが分かる。この川が創り出している文化圏というのは、山から海へと流れる河川文化圏である縦軸で発展している。高度成長期の中で道路・高速道路・新幹線などでの横軸が拡大し、私達はここ何十年かで縦軸で発展してきた文化圏を知らぬ間に失っていたのである。
この縦軸の文化圏を取り戻すことで、周辺地域とのトランスフォーメーションがもう一度起こせるような気がしている。それはもう一度、各地域がアイデンティティを取り戻すことから始まるような気がしている。
ニュージーランド政府は、マオリの人々が祖先と仰ぐワンガヌイ川に法的な人格を認めた。
河川に人格を認めることは、
私達のアイデンティティを守るということだ。
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