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糸川修作の矜恃と東堂尽八の落胆-弱虫ペダルSPARE BIKE 東堂尽八2 読後感想-


レースに出るかどうかは保留のまま、東堂は糸川と当日のコースで早朝練習をする。年代物のママチャリで坂を登る東堂。相変わらず自転車からは音がしない事に糸川は改めて感心する。頂上まで残り2km。糸川は東堂に勝負をしかける。


糸川修作のギアを固定、と心に秘めレースを抜かれそうになっても負けそうになっても最後まで完遂する姿にぐっときました。

ギアを固定するって誰に強制されたものではない自分の心で決めたもの。負けそうになったらこっそり変えたっていいのにそれを良しとせず、勝負に負けてからきちんと悔しがる。修作は自分のカッコ良さをちゃんと持ってる。今の彼のカッコ良さは周りに伝わりにくいものです。ただ無意識の勝負への美学がこの先の未来で東堂や田所の背中を押したのは間違いないと思います。

そして東堂。音がしない、無駄な力を使わないスリーピングクライム。磨きあげる前の原石がこのレースにあります。
色々な事が噛み合った結果生まれた東堂の走り。そこに東堂の気持ちが初めて乗る瞬間をこの話で読者は目撃する事ができます。
頂上を取ること。オシャレを忘れ、我を忘れ高揚する瞬間を見つけた東堂の表情はとてもいい顔です。でも東堂は自分のこの状況に落胆しています。
今までずっと大切にしていたオシャレ。それを象徴する前髪を邪魔だと思った自分に。自分で自分が積み上げたものを自分自身で全否定してるんですものね。

でもそれは落胆ではなく自分の知らなかった自分に気づいた瞬間。”自分の知らない自分”に気づく瞬間がこれからも東堂には訪れます。その始まりの一歩がここにある。

東堂の初レースはどうなるのでしょうか。
東堂尽八 3に続く。

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