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いとをかし
ところで、現代の日本人はほぼ使わない大和言葉に「をかし」があります。
「をかし」は、平安時代の王朝文学の中で派生したと言われ、「もののあはれ」と並ぶ美的思考の一つです。
意味としては、「興味深い」「面白い」「趣がある」「美しい」「素晴らしい」などが挙げられますが、「もののあはれ」が陰だとしたら「をかし」は陽のイメージだと言えます。
明るく知的な好奇心をそそる、趣のある、「知性的な美」を意味し、現代の私達が用いる「面白い」に近いニュアンスの言葉です。
私達は「面白い」を滑稽なこと以外に「興味深い」という意味にも使いますが、「をかし」は、そちらのニュアンスが強い言葉です。
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以前見た映画で福山雅治さんが演じる主人公の学者が、口癖のように「実に面白い」を連発し、難事件の謎解きに挑み、事件を解決していましたね。
今年は、私も我が身に降りかかる全ての難題をまるで他人事のように「実に面白い」と言って立ち向かい、笑顔で解決したいと思います。
「実に面白い」は古文に置き換えると、「いとをかし」になります。
清少納言の枕草子には随所にこの「いとをかし」という言葉が出てきます。
これは現代語訳すると「非常に興味深い」あるいは「とても趣がある」などの意味となります。
「をかし」の意味は時代と共に少しずつ変化しています。
平安時代は、「明朗で知性的な感覚美」と位置づけされていました。
室町時代は、「滑稽味を帯びた様」も意味に加わりました。
江戸時代は、「滑稽なこと」を表す意味が強くなり、現代の「おかしい」に至ったと云われています。
冬の朝、この世の全ては「いとをかし」
感動価値の作り方講座 講師
成願義夫
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