おかめの顔を再構築(笑)
蕎麦を食べようと、新宿高島屋にある小松庵。
百貨店の中という場所にふさわしい上等なそば屋で、お腹いっぱいになるには少々たよりないけど、おいしいもので小腹満たしをするのにほどよい。
伊勢丹の食堂街はいい食堂街ではあるけれど、そば屋が貧弱。
テナント各店が粒ぞろいというのが高島屋のいいところじゃないかと思う。
そば粉十割の生粉打ちそば売り物で、いつもは「生粉打ち三昧」という料理をたのむことがほとんど。冷たい蕎麦に温かいそば、天ぷらに鴨とそば屋の花形料理がずらり揃うところがうれしい商品で、今日もそれにしようと思ってお店に来たら、ランチ限定のちょっと変わったセットがあって心惹かれた。
おかめそばととろろご飯のランチセット。
おかめそばは温かいのと冷たいの、どちらか一つが選べるという、その冷たいおかめそばというのも珍しく、冷たいそばのセットをたのむ。
汁そば用の深い器に冷たいおそば。ひえひえのそばつゆが徳利にたっぷり用意され、小さな器にご飯にとろろ、あおさの佃煮。出汁で割ったサラサラのとろろをご飯に吸い込ませ、ズルズルかきこむのでなく箸で持ち上げ口に運べるというのがおしゃれ。あおさの佃煮の磯の香りがよきアクセント。
そば粉を混ぜて仕上げた蕎麦豆腐が小鉢にちょこんと盛り付けられてワサビが香りを添えて華やか。
ただおかめ蕎麦に顔がない!
卵焼きにかまぼこ、甘辛に煮た分厚いしいたけ。
焼いた鴨肉、湯葉に細切りにしたきゅうりに海苔と具だくさんで彩りゆたか。
…、ではあるのだけれどそれがキレイに盛り付けられてこれでは五目であるとか八宝であるとか他の料理の名前が思い浮かんでしまう。
おかめそばには顔が無くちゃさみしくて、それでここは再構築。
鴨肉を唇に見立ててしいたけの鼻。かまぼこの大きなお目々に額に細切りきゅうりに湯葉。海苔の髪の毛、卵焼きの耳とかわいい顔が出来上がり。
ちょっとジャビットくんみたいな顔してる(笑)。さて食べましょうと徳利のタレを注ぐのだけどかわいい顔が濡れていくのがなんだか申し訳なく感じちゃう。
食べすすめると顔は壊れる。食べやすいよう海苔をちぎってちらしたり、卵焼きの耳が短くなったりとしながらそれでも一度顔に見えたものって、ずっと顔のように見えてく。オモシロイ。
ざくざく歯切れてバッサリ口の中でちらかる力強いそば。そばの香りは華やかで、タレの香りに負けぬ迫力。ちなみにここの冷たいそばだれは香ばしくって苦味と酸味が際立つ味わい。そばでたっぷりからめとりスルスル食べて口、潤わす。
そばをそろそろ食べ終えるというタイミングにて、蕎麦湯とそば猪口がやってくる。そばだれを注いでネギをたっぷり入れて蕎麦湯を注いでコクリと一口。甘くて出汁の風味がフワッと鼻から抜けてホッとする。