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霧島はるか
2021年2月10日 23:05
柔らかいクリーム色の照明が、辺りをふわりと包んでいる。爆音で聴いたら落ち着きとは無縁の状態になるであろう音楽が、計算された程よい音量で流れているため、妙に心を落ち着かせる。その音楽と、程よく甘い、優しい香りと照明がマッチして、店内の時間をゆったりとした流れにしている。ここに来るまでに通った渋谷駅の喧騒を思い出すと、ここは自分の願望が具現化した夢の中の世界のように思えた。さっきまでスマホでヒ
2021年2月17日 21:36
いつの間にか至る所に穴が空き、そのみすぼらしさったらないボロボロのコンバースに足を突っ込み家を出る。コンバースがそのまま自分の人間性や生活を表しているようで、足を突っ込むたび陰鬱な気分になり、僕の散歩衝動に輪をかける。散歩が好きだ、と言ったら聞こえはいいけど、僕の場合は散歩というより放浪癖とでも言おうか、もはや病気の域に達している。気がつくと見ず知らずの町に来ていて、調べてみればすでに六、
2021年2月3日 22:39
うだるオレンジに包まれた緑の海。湿り気を帯びた夏の風に漂う緑の肌の腐臭。吐き気を催すほどの蝉の声。終わらせるべきだったのだろうか。あの日、あのゲートボール場で。否定の中を生きてきた。否定され続けるのが怖くて、必死に仮面を被り続けた。そのくせ僕も心の中で、全てを否定した。僕を否定し続ける世界は、否定し返してやるのが一番楽だった。でも同時に、受け入れられることも望んでしまった。だか