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真夏の方程式【ぐすたふ】のシネマ徒然草子.Chapter9
今回は、珍しく邦画となります。
このシリーズは、映画一作目が私の感性にどハマりしまして、満を辞しての二作目や!というところでした。
1回見ただけですと、一作目ほどのインパクトはない?と感じてしまいましたが、今回見直す中で色々と考えさせられることがたくさんありました。
さてさて、、皆様はどのように感じたのか、興味深い作品です。
それではレッツごー。
※記事の中にはネタバレも含まれますので、これから映画を見ようと思っている方は作品概要以降、ご自身の判断で読んでいただけますと幸いです
1.作品概要
邦題:真夏の方程式
監督: 西谷弘
主演: 福山雅治、吉高由里子、北村一輝、前田吟、杏、風吹ジュン
制作国、日本公開年:日本、2013年
※画像はNetflixより、お借りいたしました
ストーリー概要:
天才物理学者の湯川学は、海底鉱物資源開発の説明会に出席するため、波瑠ヶ浦を訪れた。
滞在先の旅館には、親の仕事の都合でしばらくその旅館に預けられることとなった恭平という少年がいた。
恭平は湯川に興味を持ち何かと近づいてくるが、子供嫌いの湯川は彼を邪険に扱う。
そんな滞在1日目の翌朝、同じ旅館に宿泊していた男が変死体となって発見される。
当初、事件にはまったく興味を示さなかった湯川だが、恭平との関わりのなかで、彼は事件の真相を追い求めていくこととなる。
2.ぐすたふの「ここを見て!」
印象的なシーンといえば、恭平に海の中を見せてあげようと湯川が奮闘するシーンでしょうか。
一緒に実験をする二人の姿は、まるで先生と助手。
二人の関係性がわかりやすく表現されているな、と感じました。
どこかの記事か何かで読んだのですが、作者の東野圭吾さんも、このお話を作る時にまず、湯川が少年と一緒にいるシーンが思い浮かんだ、と言っていたと記憶しています。(あやふやで申し訳ないのですが…。)
お話の中で印象的なシーンであることは間違いないこのシーンを私もピックアップした一つの理由は、このシーンが開始40分頃のシーンであるということ。
子供嫌いの湯川が、少年と出会い、一緒にペットボトルロケットの実験を行うまでに40分。
この時間の中で、湯川と恭平のファーストインプレッションから湯川の恭平に対する心境の変化などを詰め込むのって、構成がうまくないと観客に違和感を感じさせてしまうんじゃないかな、と思います。
だけど、湯川と恭平のやりとりにばかり時間を割いていたら、他のストーリーが入れられない…。
限られた時間の中で、必要な場面を違和感なく描き切る。
このシーンは、私にとってそれが十分に満たされているので、とても良いシーンだな、と感じたのです。
素人目の意見になりますが、人間の感情の変化をいかに違和感なく表現するかって、私にとって映画の質の一つです。
なんでそこでそうなるの!?っていう突拍子もない感情変化に最後までモヤモヤしながら観た映画も多くあります。
(特に洋画は多いかもしれません…。文化の違いもあるのかな、と考えています。)
こういった部分に、脚本家や監督の色が現れるのかも。
ガリレオシリーズの映画作品は、人間の感情に大きく焦点が当たっているので、そこを大切にしているのかな、と感じました。
といった、ぐすたふのここを見て!でした。
あと加えるなら、全体的に夏の熱気が伝わる映像の質感なのが、とてもツボだなと思っております。
是非ともご覧あれ。
3.ぐすたふのひとりごと
この作品は、東野圭吾作品のガリレオシリーズをテレビドラマ化した作品の映画版。
前章のぐすたふのこれを見て!でも言及した通り、このシリーズの映画版は、人間の感情の機微をとても繊細に描いているな、と感じています。
前作【容疑者Xの献身】は私の大好きな作品なのですが、それも登場人物たちの複雑な感情描写にとても心を動かされました。
だからこそ、その感情表現に惑わされて感傷的になってしまうのですが、後から冷静になって思うことは…。
これ、悪いのお母さん(風吹ジュン)じゃね??!
え…。お母さんの過去の行動が全ての発端となってません?!
お母さんのせいでどんだけの人が不幸になるのよ、ちょっと待ってよ!と、勝手ながら怒りがふつふつ、ぐつぐつ…。
全ての事件の根本であるお母さんの裏切りは、「家族愛」という名の、登場人物それぞれの繊細な感情描写によって、靄がかかったように隠されているように感じます。
お互いを想い合う温かな家族の関係性が、こんな不幸な事件を招いてしまった…。とでも言うように。
(いや、もちろんそれぞれは家族愛ゆえの行動だとは思うのですがね…。)
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
何にも温かくないよ、危うく騙されるところだったよ。
ちょいと待ちなさいよ。
「恋は盲目」然り「愛は盲目」とは、このことか?
この作品の中で描かれる愛は、登場人物だけでなく、我々観客たちも盲目にさせてしまうほどのものだったな、と感じます。
恐ろしい。人間の感情とは末恐ろしいです。
自分たちの見たいように、あるいは見せたいように、現実を如何様にも脚色することができる。
といったように、観た直後と、しばらく経ってから思うこの映画への感想は、私の中で大きく変わりました。
しかしいずれの感想においてもたどり着くのは、ここまで様々な感情と感想を引き起こすこの作品は素晴らしい、ということ。
はあ。まんまとしてやられました。