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小説感想

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#小説

カクヨムで「藪の中賞」を募集した結果&忌憚のない意見。

カクヨムで「藪の中賞」を募集した結果&忌憚のない意見。

 カクヨムの自主企画で「藪の中賞」を開催してみた。

【募集要項】
「芥川龍之介の『藪の中』のような小説」を読みたくて探しています。
・「藪の中みたいな小説」とは。
関係者の言うことが食い違うなどして、真相がわからないこと。
「未解決事件」がイメージとして近い。
【条件】
ジャンルはホラーかミステリー(ジャンルが違う作品は削除します)
5万文字以内くらいで(こちらは目安なので長くても参加可とします

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「『腕が一本増えた物語』を書くとしたら、『腕が一本増えた原因』を書いてはいけない」というレイモンド・チャンドラーの言葉に衝撃を受けた。

「『腕が一本増えた物語』を書くとしたら、『腕が一本増えた原因』を書いてはいけない」というレイモンド・チャンドラーの言葉に衝撃を受けた。

 先日、書いた「藪の中」のオマージュ「洞窟の中」について、「凄く怖かった」と言ってもらえた。嬉しい。
「藪の中≒未解決事件っぽいブラックボックス的な創作」が大好きなので、「この作品が面白かった」「書いたぞ」という人がいたら良かったら教えてください。

※自分のオススメ。↓

 閑話休題。

 ずっと前にも、何作か小説を書いてみたことがある。
 だがその時は人に読んでもらう以前に、自分で読んでも「面

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コーマック・マッカーシーの文章を読むと、「物語において必要な情報への感覚」が変わる。

コーマック・マッカーシーの文章を読むと、「物語において必要な情報への感覚」が変わる。

 いま「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」(以下「ノーカントリー」)を読んでいる。
 めたくそ面白い。

 ハードボイルドのような余計なものを切り詰めた端的な文章が好きなので、マッカーシーの文章も好きだ。

「ノーカントリー」はマッカーシーの他の作品と比べても、「そこを削る」という感覚がなかった部分まで削られている。
「ここまで削るのか」と驚いた。

 例えば殺し屋のシガーが、ホテルで対立

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懐かしラノベ「変化草子」は、大人になった今だからこそ面白い小説だった。

懐かしラノベ「変化草子」は、大人になった今だからこそ面白い小説だった。

 先日突然、子供のころ読んだラノベをもう一度読みたくなったのだが、タイトルも著者名も何ひとつ思い出せない。
 数少ない覚えている要素で自分なりに調べても出てこない。
 思い余ってnoteで聞いてみた。
 マイナーなラノベだった(と思う)のでダメ元で聞いてみたが、なんと記事をアップして四時間後に教えてくれたかたがいた。(ありがとうございます!)
 人類の叡智を感じた。ネットすげえ。
というわけで、「

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世界が存在することを確認するためにテロを起こす話・「パルチザン伝説」の感想の続き。

世界が存在することを確認するためにテロを起こす話・「パルチザン伝説」の感想の続き。

 読んでいるあいだ、「何かに似ている」と思っていたけれど、読み終わった後で世界観が美里さんの作品に似ていると気付いた。(美里さんは、自分が好きなカクヨムの作家さんだ)

 二作目の「兄貴の本命」について「主人公の夏来が唯一認識出来る『現実』(世界)が、自分を〇す兄なのでは(意訳)」という感想を読んで「なるほど」と思ったことがある。

「パルチザン伝説」も「兄貴の本命」と同じ造りだ。
 主人公から兄

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【銀河英雄伝説】姉上の記事が小バズっているので、姉上周辺の男たちについて雑談したい。

【銀河英雄伝説】姉上の記事が小バズっているので、姉上周辺の男たちについて雑談したい。

姉上の記事が読んでもらえているので(ありがとうございます!)姉上の男事情について(言い方)思いついたことを適当に雑談したい。

◆フリードリヒ四世について

フリードリヒ四世については、地の文が意識的に偏った解釈をしているのではと思っている。
特に「うん?」と思ったのは、「星を砕く者」の下記の箇所だ。

地の文の文脈だとフリードリヒⅣ世がいかに凡庸で情けない奴か、ということを強調する雰囲気が強いが

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「犬どもの生活」が完結したので感想。

カクヨムで連載している「犬どもの生活」が終わった。

毎日、楽しみに読んでいたので感想を書きたい。(*全部、自分の個人的な解釈です。ネタバレ注意)

「犬どもの生活」は、前二作(「妹売り」「兄貴の本命」)から続けて読んだほうが何倍も楽しめる。もし読んでみようかな、という人がいたら前二作から読むことをオススメしたい。

この三作は登場人物もストーリーも切り替わっているが、自分はひとつの物語だと考えて

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カクヨムで見つけた凄い作品の感想の続き&「凄い創作」とは何なのか。

カクヨムで見つけた凄い作品の感想の続き&「凄い創作」とは何なのか。

この記事で紹介した小説「妹売り」について、「他の人の感想を読みたい」と書いたら感想をもらえた。(ありがとうございます~)

「妹売り」について自分が感じたことがよりクリアになったので、それを踏まえて感想をもう一度書きたい。

最初に、なぜ感想の第一声が「面白い」ではなく「凄い」になったかと言うと、自分は「妹売り」に対して面白い(とも書いたが)よりも、圧倒的に「凄い」という感覚が先行している。
正確

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BL小説における女性キャラの、存在の耐えらない軽さ。

*タイトル通りの内容です。苦手な人は回避するようお願いします。

最初に断っておくと、主に自分が読んだ同じ作者さんの商業BL二作品「てけてけぽん!(仮称)」と「みらくるくる(仮称)」についての話だ。
「BL小説」は主語デカすぎである。(すみません)

ただ、自分が読んだBLは、他の作家さんの作品でもこういう傾向があったので、一応「BL小説の女性キャラについて自分が感じたこと」として話したい。

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「私説三国志 天の華・地の風」感想4 プリンセス孔明による「主人公教」になりかかっているけど、大丈夫か?

「私説三国志 天の華・地の風」感想4 プリンセス孔明による「主人公教」になりかかっているけど、大丈夫か?

「私説三国志 天の華・地の風」を五巻まで読んだ感想。
*タイトル通り、今回は否定気味な感想です。

前回。

四巻で劉備が死んだ。
ここまでは面白かったのに、五巻で(自分の中で)一気に失速した。

五巻は急激に「主人公教」が進んでいる。
「主人公教」とは、物語内で主人公の言動や価値観を相対化する視点がなくなる(もしくはあるが、物語的に効力を持たないことが明らかな)現象を指す自分の造語だ。

相対化

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「私説三国志 天の華・地の風」感想3 孔明の恋愛が自傷行為に見える、国政の描写が細かく読んでいて面白いなど。

「私説三国志 天の華・地の風」を三巻まで読んだ。

前回の感想。

国政の描写なども細かく描かれていて面白い。2巻は、落鳳破で龐統が死んだところで話が終わった。

「天の華・地の風」は様々な独自解釈が入っていて、龐統は劉備に取り立てられた後も呉と通じている設定になっている。

自分が仕えていた周瑜を殺した孔明を許せず、劉備の養子の劉封を抱き込んで派閥を作る。

龐統は孔明の策略で殺されるが、劉封は

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「私説三国志 天の華・地の風」感想2 主人公・孔明に見る「プリンセス」の厄介さと恐ろしさ

「私説三国志 天の華・地の風」感想2 主人公・孔明に見る「プリンセス」の厄介さと恐ろしさ

前言撤回。大人になった今でもわからない。一巻に続いて二巻の途中まで読んだ。

前回の感想に「子供だった自分には、その時読んでもこの愛憎劇はわからなかっただろう」と書いたけれど、早くも前言撤回。

今でも分からん。

二十代の時でさえ「結局、好きなのか嫌いなのかどっちなんだ」というしょうもない感想を言いそう

とも書いたが、いま読んだ時点で「結局、周瑜のことが好きだったのか」と仰天してしまった。(し

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