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漫画の感想

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#小説感想

「公正世界仮説」に反する物語が好き。

「公正世界仮説」に反する物語が好き。

 先日、高橋ツトム「ブルーヘヴン」が好きだという記事を書いた。
 上の記事には入れられなかった好きな理由のひとつが「『公正世界仮説』に反する原理が働いているから」だ。

 盛龍たちが乗る漂流船を見つけた時、ブルーヘヴンの社長と船長は「救助すべきか否か」で揉める。

 社運を賭けた豪華クルーズ船の航行中に、漂流船の救助などしていられない、身元不明の人間を乗せるわけにもいかない、人道など知ったことでは

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「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

 記事が読んでもらえているのをきっかけに、久しぶりに「銀英伝」のことを思い出した。
 前から自分が「ヤンをどう見ているか」を書きたいと思っていたので、いい機会なので書こうと思う。

*原作10巻まで及び他の田中芳樹の作品のネタバレが含まれます。

◆ヤンは「当事者としての選択とそれに伴う責任」を免除する機能。

 自分はヤンをキャラではなく「機能」として捉えている。
「銀河英雄伝説」の面白さと凄さ

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ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

「葬送のフリーレン」を読んでいて、「ノルウェイの森」の永沢のセリフを思い出した。

「君はよくわかってないようだけれど、人が誰かを理解するのはしかるべき時期が来たからであって、その誰かが相手に理解してほしいと望んだからではない」(「ノルウェイの森」(下)P116)

 このシーンの永沢は終始、邪悪と言っていい残酷さをハツミに向けている。このセリフはその悪意の極めつけと言っていい。

 主人公のワタ

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