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えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む(4)
笹井宏之さんの歌を鑑賞する、パート4です。
ぼくは詩人なので、短歌の鑑賞というには詩人目線すぎるかもしれません。
序論、本論、結論というていではなく、一首評(のようなもの)を重ねていくかたちで、笹井さんの創作物がなぜ「ああいうふう」に見えるのかを感じとっていきたいとおもいます。
4 変換するうつわ
*
えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい
笹井さんの表現にはパフォーマティブという特性もある。
ここでの「パフォーマティブ」のいみは、ことばの内容よりその表現のされ方が優先されるということだ。内容と形式というわけかたでいうと、ディスクール(表現形式)という用語もあるが、あえてパフォーマティブを使いたい。
この歌は作品集のタイトルになったのもあって、とりわけ人口に膾炙したといえるが、これが笹井さんのひとつのフラッグシップになりうるのは他にもわけがあるとおもう。
ぼくが関わった『えーえんとくちから』(PARCO出版)の打ち合わせで、編集者の用意してくれたタイトル候補に「えーえんとくちから」があって、それにぼくも賛成した。そのときに考えたことが、そのまま、これが代表歌である理由になるとおもう。
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