あるカタチのドライブデート
平日の日中、多くの人がそうするように、同居人も仕事に出かける。
彼と私は、それぞれに障害をかかえていることもあり、社会人として外で働くには弱くて柔らかい。
外で働くには弱くて柔らかいについて少し補足すると、私の感覚では、疲れやすいうえ疲れがたまると鬱っぽくなりやすいように思っている。
そんなこともあり、朝の身支度を済ませた彼を見送る際、疲れた顔をしていたり、当日の天気が雨だったりしたとき、私の都合さえ悪くなければ仕事終わりの彼を車で迎えに行くことにしている。
少しでも通勤の負担が減ればという思いから、に、限ったことではなく、片道20分ほどのドライブは私にとって貴重で大切な時間なのだ。
彼の「助かる」という言葉が、より、迎えに行きたい気持ちを掻き立てる。
16:30すぎに家を出ると、徒歩5分ほどで駐車場に到着し、駐車場に設置されている自販機で2人分のジュースを買う。
私はあたたかいカフェオレ、彼はエナジードリンクと決まっている。
車のキーをあけ、乗り込むとすぐに助手席、運転席にそれぞれのドリンクをセットする。
エンジンをかけ、スマホのBluetoothが車のオーディオに接続するアナウンスを確認すると、スマホでSpotifyをひらき、その日の気分の音楽を流す。
たいていは、元気が出そうな洋楽のポップスなのだけれど、ハナウタを歌いたい気分のときには邦楽をかける。
待ち合わせ場所までは、大通りを2回右折するだけの簡単な道のりだ。
到着すると、いつものコインパーキングの「10」番のスペースに車をいれる。
駐車して5分も経たないうちに、仕事が終わったことを知らせるLINEを受けとることが多い。
彼の職場からコインパーキングまでは徒歩5分ほど。
時間が近づいてくると、飼い主を待つ犬の気持ちがわかるような思いで、行き交う人の中に彼を探す。
しばらくすると、身長178cmということもあり、通行人の中でも少し頭の飛び出た彼が、助手席に向かってくるのが見える。
それを見つけ、私は入れ違いでパーキング代を支払いに行く。
支払いを終えて運転席に戻ると、満面の笑みを浮かべた彼が助手席に座っている。
「お仕事おつかれさまでした」
「迎えにきてくれてありがとう」
車を発信させながら、今日はどんな日だったの?という会話が、仕事終わりたてほやほやの状態でできるところがこのドライブのいいところ。
小さな軽自動車の中で、たくさん話を聞かせてほしい。