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「金持ちフリーランス 貧乏サラリーマン」から考える勤務弁護士のキャリアプラン② 今が辛い、ならフリーランス


こんにちは。齋藤です。

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やまもとりゅうけん著「金持ちフリーランス 貧乏サラリーマン」を下敷きに、勤務弁護士のキャリアプランを考えるブログの2回目です。

前回で前置きを長々と書いてしまいましたので、今回はさっさと本題に入っていきたいと思います。

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3 勤務弁護士のメリット

前回は、ボス弁側から勤務弁護士というシステムについて見ていきましたが、勤務弁護士の側にももちろんメリットがあります。

・仕事が得られる

司法修習を終えた途端、いきなりクライアントからガンガン受注できる人間はそうはいないと思われます。仕事がなければ生活できませんので、事務所に所属してボスから仕事をもらうことで収入を得られます。

・優れたボスと一緒に働ける

例えば、ボスが人格的にもひとかどの人物で、そばにいられるだけで価値がある、というような方であれば言うことはありません。

・弁護士業のノウハウが得られる

また、ボスの指導を受けることで、弁護士の仕事に必要なスキルや、事務所経営のノウハウといったものを学ぶことができます。

以前の「20歳の自分に受けさせたい文章講義」レビューの際にも書きましたが、司法修習で指導されるのは裁判所に提出する書類の書き方だけですので、クライアントとの接し方やクライアント獲得の方法、仕事の進め方、案件の進捗管理の方法、相手方本人や相手方の弁護士との接し方、その他もろもろの弁護士業の様々なスキルは、基本的にはOJTでボスから学び取る必要があります。

特に、弁護士のメインストリームである、大学(ロースクール)を経て司法試験合格→司法修習→弁護士というキャリアでは、電話の取り方、メールの書き方ひとつとってもビジネス仕様にチューンされてはいないため、まずは「仕事」というものにイチから慣れる必要があります。

高卒や大卒で仕事をしている一般のサラリーマンが20代前半で仕込まれているスキルがない状態で、いきなりイチ弁護士として顧客と付き合っていかなければならないため、通常当たり前に要求されるビジネスマナーすら身についていないことを見抜かれると、恥ずかしい思いをするどころか下手をすれば顧客の信頼を失ってしまいます。

ですので、こうした弁護士業における法律知識以外の一切のノウハウは、その後の弁護士人生を左右しかねない極めて重要なファクターであり、ボスや先輩の勤務弁護士(いわゆる兄弁・姉弁)の指導を受けなければ学ぶことが難しい部分であると考えられます。

私の話をさせて頂きますと、ビジネスメールの書き方や電話の話し方、顧客との接し方まで一年目に先輩弁護士からかなり丁寧にご指導頂いたものと思っているのですが、ちゃんと習った経験がないため、ビジネスマナーについては自信のないまま探り探りやっている状況です。

私の場合、さらに致命的なのは、仕事を取る、クライアント獲得、についてのノウハウを学ぶ機会が全くないまま独立せざるを得なかった、という点です。

法テラス一年目の養成事務所での仕事では、一人でまともに仕事ができるようになることで精いっぱいで、どのように事務所を経営するのか、という目線を持つ余裕はなく、法テラス滋賀で働いているときは、「法テラス」の看板で来る仕事をこなすのにやはり精いっぱいで、そうした視座で事務所を見ることはできていませんでした。

このように、事務所経営等々の弁護士業にまつわる諸々の知識を学ぶことができるということが、勤務弁護士の最も大きなメリットといえるのではないでしょうか。

・事務所の看板をフルに使える

本書では、サラリーマンのメリットとして、「会社の看板をフルに使える」ことが挙げられています。

「出世して決裁権を持ち、会社のお金と人材を動かせるだけの力を持てば、その力を頼りたい人が集まり、人脈が無限に広がっていきます。その人脈は、サラリーマンとしてさらに大きな仕事をし、さらに出世してお金を稼ぐにしても、独立して新たなビジネスを始めるにしても大きな味方となってくれるでしょう」

このことは、勤務弁護士にも当てはまります。

大手事務所や老舗事務所に勤務し、事務所やボスの看板の持つ顧客誘引力をフルに使って大きな案件を手掛けられることは、弁護士にとってなにものにも代えがたい魅力といえます。

・サラリーマンの安定

また、「サラリーマンは安定している。それだけでも大きなメリットだ」との考えもあるところです。

しかし本書は、この考えに疑問を呈しています。

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例えば昨今のコロナショックのように、

「会社がつぶれるか否かの瀬戸際に立たされるような、想像を絶する緊急事態が起こった場合、サラリーマンはやはり、大きなあおりを食う」

と指摘しています。

私が法テラスで働いていたときも、この「安定」というメリットはないものと思って働いていました。

政治的なきっかけで設立された「法テラス」という制度がいつまで続くのか、制度が維持されたとしても、「常勤弁護士」という勤務形態が残るのか、50歳くらいまで「常勤弁護士」の仕事を続けられるのか、そんなことを考え始めるとキリがなく、まして、45歳や50歳「常勤弁護士」を辞めることになった場合、普通の「マチ弁」として仕事ができるのか、との考えがひとたび首をもたげると、「安定」が「不安」になるまで時間はかかりませんでした。

結局のところ、サラリーマンが「安定」しているとされていたのは、高度経済成長により会社の業績が右肩上がりで、終身雇用が保証され、給与が右肩上がりだった時代的背景によるところが大きかったような気がします。

デジタル革命やコロナショック等で社会構造が激変していく将来にあって、会社という組織の浮沈に、自身の人生の浮沈を紐づけてしまうことはもはやリスクとなってしまっているのではないかと考えたとき、果たしてそうした考え方が誤りとまでは言えないのかもしれません。


4 勤務弁護士のデメリット

本書では、サラリーマンのデメリットが殊更主張されています。

・収入面の話

この点の本書の記載はかなり刺激的な文言が並んでおり、不快になる方もおられるかと思いますが、こうした考え方もあるという視点の提供の趣旨で取り上げたいと思います(私が100%賛同している、という趣旨ではないことをまずはお断りしておきます)。

まず、本書では、以下のように述べて、「会社」というシステムにおいては、働いた仕事に見合う給与は得られないと切って捨てています。

いわく、「会社」においては、「使えない社員を雇い続ける金銭的リスク」は、「従業員の平均的な給与水準を下げる」ことでしっかりヘッジしている、とされます。

つまり「使えない社員」を雇い続けることによるあおりを食っているのは、あなたのような、「やりがいを持ちながら仕事に励んでいるサラリーマン」ということになります。
サラリーマンが稼げないのは、「使えない社員」の給与を「使える社員」が賄っているからなのです。

極めて一方的な見方で到底賛同できず、反論はたくさん思いつく(本書は、基本的に、物事を単純化して、キャッチーな文言で届けることが狙いとされているのでこのような書き方になるわけで、細かいツッコミを入れても仕方ないという部分もあるかと思います)のですが、他方で、一度でも「あの同僚と自分が同じペイなのか・・・」と思ったことがおありの方には、悲しいかな、ある程度刺さってしまう話なのかもしれません(そして、このことはサラリーマンのみならず勤務弁護士も同様かと思われます)。

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もちろん、収入面が全てではなく、やりがいなど仕事には様々なファクターがあるのは当然ですが、他方で、「自分のペイが仕事量・質に見合っていない」と感じてしまったとき、「やりがい」などの漠然とした価値では容易にその考えを払拭することはできないものと思われます。

他方で、少なくとも次の引用箇所は首肯しうるものです。

「会社」というシステムは

「会社全体の最適化」という意味ではよくできていますが、「個人の働き方」や「個人の人生」には最適ではありません。
サラリーマンは、これをよく心得ておく必要があります。
会社は、あなたの「働き方」や「人生」などを考えてくれません。あなたの「働き方」や「人生」を考え、決めるのは、あなた自身しかいないのです。


・「仕事」も「人」も選べない理不尽さ

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フリーランスは、嫌な仕事は断れます。
サラリーマンは、「組織の一員」として働くことを求められますから、嫌な仕事を自分の一存で断ることはなかなかできません。その割に、失敗したら責任を背負わされるのです。

私がサラリーマンをしている際にもっとも辛かったのはこの点であると言えます。

さらに、本書では、

フリーランスは、組みたくない人との仕事も断れます。
サラリーマンはやはり、そうはいきません。中でも辛いのは、自分を評価する「上司」を選べないことです。どんなに高いパフォーマンスを発揮していても、上司と反りが合わなければ、不当に低い評価をつけられこともあり得ます。「こんな評価はおかしい」と、理路整然と訴えても、周りからは「どっちもどっち」」とみられ、責任の一端を負うことになります。

と述べられています。

私はサラリーマン時代に上司に対する不満などはありませんでした(そもそも、上司という概念が希薄な職場でした)が、上司に恵まれない辛さは容易に想像できます。

5 今が辛い、ならフリーランス

・フリーランスに転身するタイミング

前回の勤務弁護士というシステムの記事の「2 勤務弁護士を雇う理由」で考察したように、ボス弁側から見ると、

①イソ弁が給料以上の仕事量(0.5以上)をこなせない場合や、②ボス弁がイソ弁(ノキ弁)を手取り足取り懇切丁寧に指導し、依頼者との打ち合わせに同席し、起案をしっかりチェックするなどし、そのコストの分だけボス弁の仕事量が低下した場合、ボス弁+イソ弁の仕事量=1.7という数式が成り立たなくなってしまい、イソ弁を雇った場合の経済的メリットを享受することができなくなります。

このことを逆から言うと、イソ弁側から見れば、給料500万円分の仕事量0.5以上をこなせるようになってしまえば、あとは、自分の実際の仕事量0.7あたりの収入700万円との差し引き200万円が、上記3記載のメリット-上記4記載のデメリットの価値、ということになろうかと思います。

勤務弁護士を辞めるタイミング (2)

↑↑↑勢い余ってわけのわからない図をこしらえてしまいましたが、大目に見て頂けますと幸いです。

このような図式で、

仕事量から得られるはずの収益-給料=勤務弁護士のメリット-デメリット

になるまで勤務弁護士として事務所にとどまることが合理的で、

その後、

仕事量から得られるはずの収益-給料>勤務弁護士のメリット-デメリット

という関係になれば、フリーランスへの転身を考えざるを得ない、ということになるかと思います。

そうすると、ボスがあらゆる意味(人柄・法律家としての能力・ビジネスマンとしての能力等)において優れた方であればあるほど、その人と一緒に仕事ができることの価値はプライスレスなものになり、勤務弁護士のデメリットを補ってあまりあるものとなって、仕事量と給料の差分と容易にイコールにはならず、

他方で、ボスがそうでない、と感じれば感じるほど、仕事量と給料の差分と容易にイコールになり、イソ弁側にメリットがなくなったと感じる時期が早くなりがちになると考えられます。

勤務弁護士をやっていれば、どこかで、自分の働きが給料と見合っていない、と感じることが出てくるかと思われますが、そのように感じた際は、その差分とメリット・デメリットのつり合いについて考えてみられてはと愚考します。

まして、ボスや先輩、同僚との人間関係や、仕事の内容等から、現在の事務所にいることが辛い場合、メリットからデメリットを引いたらマイナスになってしまい、給料以下の仕事量でトントンということが起きてしまいます。そうなると、事務所を辞める以外の選択肢はもはや残っていないと言えます。

ここで、またもや私の話をしますと、法テラスの常勤弁護士は基本的にほとんどの仕事を一人でしますので、ボスや先輩に仕事を教えてもらえるメリットというものはほとんど観念できず(あえて言えばかなり手厚い研修がこれに相当するものと思われます)、そうすると、メリットは、「法テラス」という看板で仕事をすることと、仕事のやりがい、ということになるかと思われますが、他方で、デメリットを一旦感じだしてしまいますと、

仕事量から得られるはずの収益-給料>メリット-デメリット

という関係が容易に形成されてしまう関係にあったかと思われます。

これは、そもそも法テラスの常勤弁護士に10年の任期があり、基本的には任期後は退職して別のキャリアを形成することが求められていたからですが、現在では、法テラスの常勤弁護士の任期の制限は撤廃されていますので、今後は、上記のような関係になりにくく、長くとどまることにインセンティブが働く仕組みづくりが必要となっていくものと思われます(そうしないと、任期の制限が撤廃されたところで残る人間は少ないままとなる)。

・フリーランスに「リスク」はない?

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「あんなに優秀な人が独立しないのだから、自分もまだ…」という考えは的外れ

本書のこの部分は極めて示唆に富むものだと思います。

「うちの会社には、自分よりも優秀な人が多い。あんなにも優秀な人たちがフリーランスという働き方を選ばず、サラリーマンのままでいるのだから、自分にはフリーランスなんてまだまだ無理。もうちょっとサラリーマンで頑張って、あの優秀な人たちのようになってから独立しよう」

という考えは「的外れ」だというのです。

この点について、本書は、

サラリーマンは『超優秀な一部の人のみが、その恩恵を受けられる世界』という認識を前提に、「優秀な人ほど、その恩恵にあずかるために、サラリーマンという生き方を選ぶ」と説明しています。

かつて、私も全く同様に考えて、独立を躊躇していたわけですが(法テラスには、私などとは比較にならないほど優秀な諸先輩方がわんさかいます、、、)、少なくとも独立するか否かを決めるファクターはそんな部分ではないわけです。


他方で、次の指摘は弁護士業界には当てはまらないかもしれません。

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よほどの最下層サラリーマンでない限り「独立後のくいっぱぐれ」はない

本書では、「収入の継続が保証されていないことも、フリーランスへ踏み出すことをためらわせる大きな原因」としつつ、「解いておきたい誤解」として、

「フリーランスは競争が激しい。仕事をひとつ取るのも、継続して仕事を取り続けるのも大変」という認識が「誤解」であるとしつつ、

中堅サラリーマンであればだれでも、「サラリーマン時代と同じ働き方」を続けるだけで、無双できる。

と断言します。

しかし、この点、私が独立して感じたのは、やはり「仕事をひとつ取るのも、継続して仕事を取り続けるのも大変」ということです。

特に、私のように、クライアント獲得のノウハウがないまま独立した弁護士にとっては、この点が死活問題となります。

「サラリーマン時代と同じ働き方」をしようにも、そもそも仕事がなければパフォーマンスをクライアントに見てもらい評価してもらう機会さえ与えられないわけですので。

まして、弁護士業界が飽和状態となり、価格競争の時代に突入してしまえば、果たして弊事務所のような小規模事務所が生き残ることができるか・・・考えない日はありません。


・「新規開拓マインド」が身につけば、再就職も余裕

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そこでカギとなるのが、この「新規開拓マインド」だと思われます。

本書では、「新規開拓マインド」とは、

「未知の領域に飛び込む力」

「飛び込んだ先で自分のポジションを開拓する力」

とされています。

そして、

純正サラリーマンに収まらず、フリーランスとして働いた経験がある分、企業側は「新規開拓マインドのある人材」としてプラスい捉えてもらえる可能性が高い

としています。

本書では、このように転職市場での市場価値の話として「新規開拓マインド」が取り上げられていますが、そもそも、この「新規開拓マインド」があれば、フリーランスとして行き詰まることはないものと考えられ、再就職する必要性など生じないものと思われます。

というわけで、勤務弁護士からフリーランスに転身した場合、成否を分けるのはこの「新規開拓マインド」であると考えられ、私の場合であれば、「YouTube 」やオンラインサロンには手を出さないにしても、人脈を広げる方法や、取り扱える分野を広げるための勉強等新たなことに次々とチャレンジしていくことで未来を切り開く必要があると思っています。

この意味も込めて、弊事務所では、先入観にとらわれず、あらたなチャレンジを恐れることなく日々の業務に邁進していきたいと考えております。


またもや長々と書いてしまった結果、今回でまとめ切ることができませんでした。しかも最後はなんだかよくわからない決意表明で終わってしまいました・・・

直截的に書いてしまった部分もあり、癇に障った方もおられるかと存じます。若輩者のたわごとと平にご容赦頂けましたら有難く存じます。


次回③では、

6 やりたいことをやりながら常に「数字」を追う

7 時代に合わせて技能を身に付ける

8 事務所形態についての考察

という章立てで検討を進めていきたいと思っております。

長々とお付き合い頂き誠にありがとうございました。






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