サイコロ塾レッスンレポート:ヒトトイロ&ito(イト)編
10月のサイコロ塾のテーマは、「ボードゲームを遊んで、お互いの感覚を知ろう」です。
そこで、1回目ではややイレギュラーではありますが、2つのボードゲームを1つのレッスンで扱いました。
「ヒトトイロ」では色に対する感覚を、「ito(イト)」では物事の尺度感をお互いに知り合って、共有したり、相違を楽しんだりする時間になりましたので、報告します。
1、「ヒトトイロ」のルールを知ろう!
ヒトトイロは、モノ・コトに対して持っている「色」のイメージを、他の人と合わせるゲームです。
5つのお題に対して順番に、自分が持っているカラーカード(15色あります)を秘密裏に選んで伏せます。
*本来は、15色のうち10枚を選んで使用するのですが、今回は多様な色からあえて選んでもらうようにルールを変えて紹介しています。
5枚のカードを全員出し終わったら、最初のお題から順にオープン!
お題に対して子どもたちが出したカラーカードの「色」がすべて揃っていたら晴れて成功!というゲームです。
今回も<ゲームの準備>のところで、内容物の確認を一緒にしていった後は、実際にプレイをしながら子どもたちにルールを理解してもらいました。
子どもたちは、「なるほどね」とすぐに理解できていましたよ。
2、ヒトトイロをプレイ!
練習のつもりで1回目のプレイをしましたが、子どもたちの理解がとても早かったので、そのまま5個続けてお題を出しました。
ヒトトイロはなんといっても、お題の選択が大切です。
子どもたちの多様な色に対するイメージを捉えるために、本来はお題カードから選んでお題を出すのですが、講師が考えたお題にチャレンジしてみました。
1ラウンド目は、「リンゴ」→「空」→「植物」→「果物」→「水曜日」の5つのお題を出しました。
本来のゲームでも1つ目のお題から5つ目のお題にかけてだんだんとイメージがしにくいお題になっていくのですが、ここでも、「具体」から「抽象」、「固定」されたイメージから「柔軟」なイメージになるようにお題を選択しました。
さあ、どうだったでしょうか?
「リンゴ」はやっぱり「赤」なんですねー。(写真の1番手前の列)
端から順にカラーカードをめくっていって、みんなの出したカードが「赤」だったときには、「おー」と盛り上がりました。
面白かったのは、次の「空」でした。(写真手前から二番目の列)
写真で言うと、右から順に左に向かってカードをめくっていったので、途中まで子どもたちの誰もが「ふむふむ、やっぱり空は水色だよね」と思っていた矢先、最後に「青」のカードが登場したのでした。
子どもたちの驚き様もそうだったのですが、すかさずそこである子どもから「そうか、夕方の空だったら赤だもんね」と出てきて、さらに「白とかもあるかも?」と他の子どもも発言したことに感心しました。
「自分と他の人の感覚の違い」をゲームを通して感じてくれたのかなと思う場面でした。
ゲームの目的が「みんなでカラーカードを揃える」ことなので、子どもたちはもちろん事前の段階で話し合いをしていたのですが、いざカラーカードを表にしてみると、他の人と感じていたことが違った、という体験をしたのでした。
その後続けて、2ラウンド、3ラウンドと続けてプレイしていき、3ラウンド目には子どもたちにお題をいくつか考えてもらいました。
子どもに考えてもらったお題が、①任天堂switch、②トランプ、③ハサミの3つです。
子どもたちの出したカラーカードはそれぞれ色とりどり(!)で面白かったのですが、中でも特に②トランプが面白かったので紹介します。
写真の黄色枠で囲んだところが②トランプで子どもたちが出したカラーカードです。
「白」を出している子どもが多くいる中で、お題を出してくれた子ども本人が「青」のカラーカードを出していたので、どうしてその色にしたのか尋ねてみました。
すると、「うちにあるトランプの裏側の色」と教えてくれました。
なるほど子どもの「色に対する感覚」が個人的な体験に強く影響を受けるものであることを感じられる一幕でした。
ちなみに、このラウンドでは5つ目のお題として、「幸せ」というものを設定してみました。
子どもたちは「ハート(心臓)」の色だ!っと思ったようで、「ピンク」ということでした。
これを読んでくださっている皆さんなら、子どもが考えてくれたお題も含めて、どんな色を思い浮かべますか?
3、ヒトトイロのプレイを振り返って
子どもたちに「面白かったところ」を尋ねてみました。
「みんなが何色のカラーカードを出すかワクワクした」
割と話し合いをしながら考えていたように思うのですが、自分はこうだけど、他の人はどうかな?ということを楽しみに楽しんでくれたようです。
「火のことをみんなと違う色としてしまったけど、それ(違うこと)が面白かった」
ヒトトイロでやりたかった(学びたかった)ことはコレに尽きますね。
プレイ中の、「空」の色のエピソードでもそうでしたが、自分と他の人では確かにコト・モノに持つ色のイメージは違うけど、それを排除するのではなく認めて面白いって思ってもらえることができてとてもよかったです。
また、子どもたちに「難しかったこと」も尋ねてみました。
「(うまく揃えるためには)ヒントの言葉が必要」
確かにそうですね。今回はカラーカードを選んで出す間、会話をすることを制限していなかったので、子どもたちである程度事前に話し合いをした上でカラーカードを出すことだできました。
コレが完全に、コミュニケーションなしの状態ではさらに多様な色が表現されていたかもしれません。(それはそれで面白そうではありますが)
婉曲的にコミュニケーションの重要さを知る機会になったかもしれません。
途中で書きましたが、「ヒトトイロ」で学びたかったこと、つまり、「自分と他人の色に対するイメージは同じこともあれば、異なることもあるけれど、それはそれとして面白く、認め合える」ということは、子どもたち自身の体験に集約されたかなと思います。
さあ、次は「ito(いと)」です。
4、ito(イト)のルールを知ろう!(+デモプレイ)
ito(イト)は、自分に割り当てられた数字カードの大きさを、あるテーマにそって表現し、全員で小さい順に数字カードを出していくゲームです。
もちろん、数字をそのままいうことはできません。
子どもたちがそれぞれに持っている、あるテーマに対する尺度感を表現することになります。
こちらのゲームも、<ゲームの準備>のところで一通り内容物の確認をしたら、実際に子どもたちに数字カードを1枚ずつ配り、デモンストレーションをしながら実際に1回目のプレイをしてみました。
1回目のお題は、「生き物の大きさ」に設定しました。
写真は子どもたちが出していったカードの並びです。
ito(イト)は、リアルタイムでゲームが進行するので、その臨場感をお伝えするのが難しくて残念なのですが、なんとこの1回目、子どもたちは無事小さい順にカードを出していくことができました!
5、ito(イト)1回目のプレイ!
さて、実際に子どもたちが「生き物の大きさ」についてどう表現していったかみていきます。
一番最初に思いついたのは3年生の男の子でした。
彼が持っていたカードは「85」、そしてそれを「ゾウ」と表現しました。
続けて子どもたちが動物を表現していきます。
「犬」「ウサギ」「キリン」「ライオン」・・・
1年生の男の子は、なかなか思いつかない様子だったので、少し手助けをして「ダックスフンド」と表現しました。
表現が終われば、あとは自由に話し合いながら、小さい順に数字カードを出していく場面です。
「ウサギ」→「犬」→・・・、と順調にカードを出していく中で、ちょっとした誤算が。
「ライオン」と表現した女の子が、自分はとっても大きい(「ゾウ」よりも大きい)つもりで「ライオン」と表現したのだ、と。
ここで、3年生の男の子と感覚のすり合わせが起きます。
確かに、女の子は自分の中ではゾウよりも大きいつもりで「ライオン」と言ったのだけれど、一般的にはどうか??ということが話題になったのです。
最終的には、無事に「ライオン(59)」→「ゾウ(85)」の順に数字カードを出すことができました。
6、ito(イト)のプレイ中に起こったこと
さて、1回目のプレイで早速子どもたちの持っている、あるコト・モノに関する感覚・尺度感の違いが明らかになりました。
コレは、
「自分の中で思っているそのコト・モノに対する(数量的な)感覚」と
「一般的に考えられているそのコト・モノに対する(数量的な)感覚」
の違いです。
このことを実際のプレイ体験の中で子どもたちが感じたのではないかなと思います。
コレは、別の場面でもありました。
3回目のお題として、「美味しい料理」を設定しました。
ある子どもが「アンパンマンのスパゲッティ」と表現しました。
他の子どもたちが、「ただの白いご飯」や「パスタ」と表現する中、とても個人的で、具体的と感じられる表現でした。
実際、このときその子が持っていたカードは「94」、上限が100なので、かなり高い数です。
「94」のカードを出したとき、他の子どもたちは「えーっ」と、驚いた反応をしました。
でも、それが大事なのです。
個人にとっての尺度感と一般的に考えられている尺度感が違う、という体験を子どもたちはしたのですが、とても貴重な体験をしたと思いますし、カードを出した子どもにとっても、一般的に考えられている見方を獲得する機会になったのではないかと思います。
7、ito(イト)のプレイを振り返って
最後に、ito(イト)をプレイした感想を尋ねました。
「何をいうか(表現するか)を考えるのが面白かった」
「みんなが何と言うかわからなかった」
ito(イト)では、個人の、そのモノ・コトに感じている量的感覚を表現することになるので、まさにその感覚のすり合わせが大切なわけですが、子どもたちもプレイしながら、そういうことを感じたんだなと思います。
また、表現自体を楽しめていたようでよかったです。
一方、
「例えられなくて難しかった」
という感想ももらいました。
実際、極端な数(「1」や「100」)などに比べて、「40」〜「60」など中途半端な数に対して、モノ・コトで表現するのは大人でも難しいですよね。
子どももなかなか表現が見つからずとても苦労していました。(写真)
「ito(イト)」でも「ヒトトイロ」と同様に、子どもたちがプレイの体験の中から、Lessonのテーマである「お互いの感覚を知る」ということができていたように思います。
「個人として」感じているモノ・コトと「一般的な」モノ・コトの違いがあるということをゲームを通して感じてもらえたのではないでしょうか。
次回、10月2回目は「クイズいいセン行きまSHOW!」をプレイする予定です。
次回も子どもたちと遊ぶのが楽しみです!
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