ボードゲーム制作プロジェクト:制作①コンセプトメイキング編
こんにちは!
今週の祝日にボードゲーム制作プロジェクトの第3回目のワークショップを実施しました。
今回からいよいよゲーム制作に入っていきます。今回はその最も大事だと思われる”コンセプト”を作るところをやっていきました。
このnoteでは、具体的にワークショップをどのように進め、子どもたちが自分たちの作るボードゲームとして、どんなコンセプトを作ったかについて報告していこうと思います。
1、”コンセプト”ってなんだ??
コンセプトという単語、普段から自分でもなんとなく使うことはありますし、決して軽視しているわけではありませんが、ことボードゲーム制作においては後回しにしがちです(あくまで自分の場合の話です。どうしてもメカニクスから考えていってしまうので…)。
ボードゲームのデザインは、「コンセプト」「メカニクス(ルール)」「フレーバー(世界観)」のいずれかから手をつけ始めることが多いのかなと思います。子どもたちにゲームデザインをしていってもらう場合、正攻法は「コンセプト」を作ってからではないか、というのがこれまでのゲーム制作プロジェクト、ゲームジャムから得た知見でもあります。
そこで、きちんと明文化して知識・情報として伝えることが必要だと思い、そもそも、「ボードゲームにおいて”コンセプト”とは何か?」という話から「これまでワークショップの中でプレイしてきたゲームのコンセプト」、そして、「自分自身が作ったゲーム(アニマルコレクティング)のコンセプト」について改めて考えて見直しました。
まずは、コンセプトについて。通常の工業製品と違い、「ゲーム」には、体験の二重性ゆえにその内と外に目的が存在していると考えます。このうち、「内」の目的とは、ゲーム内でプレイヤーが達成する目的です。例えば、「他のプレイヤーより高い得点を取る」とか、「一番早くゴールにたどり着く」とかそういうものです。これらは、ゲーム内では「ルール」や「ゴール」によって表現されます。
対して、「外」の目的こそがゲームにおけるコンセプトにあたると考えます。それは、「何かを集めるコレクション欲を満たす」「大金を使って満足感を得る」「世界を救う勇者の体験をする」などです。ゲームから得ることができる体験、「誰に」「なぜ」「どんな」体験をしてもらうかを反映したゲーム外の目的こそがコンセプトだと考えました。
かなり入り組んだ話ですが、子どもたちは真剣な眼差しで話を聞いてくれていたように思います。
ちょっと閑話休題。ゲームデザインのコンセプトの1つの方向性として「問題解決」があるよ、という話を挟みました。
「デザイン」という言葉全体として言えることですが、そこには「特定の目的を実現する」というニュアンスが含まれています。ある問題に対して、ゲームをデザインすることが解決につながるということは、立派な制作のコンセプトになり得るんだよ、ということを子どもたちに伝えました。(ゲームの社会的活用は僕の専門ですしね)
さて、小難しい話をした後に子どもたちには、ちょっとしたクイズを出しました。これまでワークショップの中でプレイしてきたゲームのコンセプトを当ててもらうものです。
皆さん、どれがどれかわかりますか?デザイナーの本当のコンセプトはわからないので、あくまで後付けで僕が考えてみたものですがなんとなく想像できそうですかね?Q3がちょっとわかりにくいかな。子どもたちに回答してもらうことで、ゲーム内容も思い出すきっかけにもなったようです。
後半は、「アニマルコレクティングのコンセプト」について子どもたちに話しました。先にも書きましたが、僕は「メカニクス」を先行してゲームを考えていくタイプなので、実は振り返って「コンセプトとは何か?」と聞かれると困ってしまったわけですが、それでもなんとか制作のきっかけを思い出して、コンセプトを捻り出しました。(最近作るゲームは意識的にコンセプトは何か?ということはしっかり考えるようにしています。この理由については後ほど)
アニマルコレクティングのコンセプトはズバリ、「カルテットをベースに、子どもたちが「記憶」「論理的思考」が楽しめるゲーム」でした。実は先ほど書いた「問題解決はゲームデザインのコンセプトになり得る」というのは布石でして、「カルテットの内包しているゲームデザイン上の問題を解決する」ということをコンセプトとして据えていたというわけです。
その後、ゲーム的に面白くするため枝葉をつけたりはしたものの、根本はここにあったのだと、今回の資料作りを通して再度気づかせてもらいました。子どもたちには「アニマルコレクティング」は「ブラフ」のゲームとして紹介したため、ちょっと虚をつかれたかもしれませんね。アニマルコレクティングを「ブラフ」のゲームとして紹介した様子はこちらで。
ちょっと長めの講話?になってしまったのですが、ともかくコンセプトが重要だ、今日はコンセプトを作るのだ、ということを子どもたちに印象付けて、実際のワークに入っていくこととしました。子どもたちに提示した今回の目標がこちらです。
さてさて、この目標の達成に向けて、ワーク①とワーク②に進みます。
2、ワーク①「面白いゲーム」に関するキーワードをたくさん出そう!
子どもたちが作るゲーム、それは当然面白くあって欲しいと思います。コンセプト作りの初めの一歩として、それでは「面白いゲーム」とは、どんな要素が詰まったゲームなのか、ということをブレインストーミング形式で子どもたちに列挙してもらうワークをやってみました。
ちょっとこの時間帯の写真がないのですが、子どもたちにまずは自分たちが面白いと思うゲーム名をあげてもらい、そのゲームについて付箋で自由に意見をあげてもらいました。
2グループに分かれてワークを行ったのですが、2グループで150弱もの要素を抽出してくれました。「桃鉄」や「マイクラ」、「ポケモンGO」「フォートナイト」など今時小学生の流行りのデジタルゲームに始まり、「オセロ」や「人生ゲーム」などボードゲームの事例も上げながら、その特徴を上げていきます。
思考の「拡散」「発散」のヒントとして、オズボーンのチェックリストやシックハット法を紹介し、保護者の方にファシリテーションをお願いしました。うまいタイミングでアイデアを引き出す質問をしてくれて助かりました。
「キーワード」としては、「集める」「逆転」などが子どもたちから聞こえてきたように思うのですが、ちょっと全体を把握できていないです…。
3、ワーク②「僕たちの作るゲーム」を中心にマンダラートを完成させよう!
さて、2つ目のワークは収束です。マンダラートを使って、ワーク①でたくさん出したアイデアを当てはめてまとめていきます。
マンダラートとは、かの大谷翔平選手が自身の目標達成のために思考整理に用いていた具体的なメソッドでもあります。
今回は、「僕たちの作るゲーム」をテーマに8つの視点からアイデアをまとめていってもらいました。
さてさて、子どもたちはどんなふうにまとめていったでしょうか?
子どもたちが苦戦していた項目としては、「⑤カードをどう使う?」ということがあったようです。今回、制作に関する制約として「ゲームの用具として、カード36枚のみを使う」というものがあります。36枚のカードをどのように使うかという点で、他の項目のいずれかとかち合ったり、現在のところは解決策が浮かばないということがあったようでした。
とはいえ2つのグループともに、色々な視点から各項目を検討しマンダラートの空白欄を埋めていました。真剣に話し合って、悩んで項目を埋めていく様が写真からもありありと伝わってきます。こんな瞬間のためにワークショップをしているなぁと感じさせてくれます。素晴らしい!
4、ワーク③コンセプトを書いてみよう!
そして、最後のワークは個人によるコンセプトライティングです。ワーク①で出したアイデアの数々、そしてワーク②でマンダラートを埋めていった経験を生かして、自分たちが作っていくゲームのコンセプトを書いていきます。
最初に子どもたちに提示した、「これは○○向けのゲームです。〇〇とは△△といった特徴を持つ人たちです。そこで、このゲームでは□□という体験を提供します」という文章を完成させていきます。
マンダラートから要素を抽出して文章作りの参考にしたり、ときに山里さんの手を借りたりしながら、子どもたちだけのオリジナルなコンセプトがいくつもできました。
最後に子どもたちの作ったコンセプトを紹介します!
前々回に「競り」ゲームを扱った影響でしょうか、「お金を稼ぐ」ということをプレイヤーにさせたい子どもが多い!(面白い)でも、少しずつ内容が違っているのが面白いですよね。
あとは、「自信がない人向けのゲーム」というのも面白いコンセプトですね。ぜひ実現してあげたい!
終わりに
最後に、子どもたちに「コンセプト」を作ることがゲームデザインにおいてどうして重要かという話をしました。
ズバリそれは、制作の原点になるということです。これから先の行程では、それこそ「メカニクス」や「フレーバー」というものを作っていくことになります。
その度、あっちにしようか、それともこっちにしようかと迷う場面がやってきます。けれど、コンセプトに立ち帰れば自ずとどちらかわかってくる。自分たちが作るものが、どういうものを目指していたのか、その指針としてあり続けるのがコンセプトであるということを子どもたちに念押しをして、今回のワークショップを締めました。
次回は、ゲームのルール作りをしていきます。ルールのコア、ミニマムサイクルと、それこそゲーム内の目的を作ることを目標にワークを進める予定です。
ボードゲーム制作プロジェクトも前半戦は、あと2回。最大の山場は超えたと思いますが、まだまだこれから。自分自身も気合を入れ直し頑張っていきます。どうぞ次回のレポートもお楽しみに!
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