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サイコロ塾レッスンレポート:分析!協力ゲーム編

こんにちは!今月のレッスンレポートは2回分を合わせて報告します。テーマは、「協力ゲーム」です。
取り上げたゲームは、「どんぐりやま」と「オバケやしきのすうじのアクマ」の2つです。

2つのゲームを遊んでもらって、「協力ゲーム」を作るために、どんな要素をゲームの中に入れれば良いかということを子どもたちに考えてもらいました。

それでは、レッスンレポート開始です。


1、どんぐりやまをプレイ!

12月の1週目には、「どんぐりやま」を子どもたちにプレイしてもらいました。
「どんぐりやま」のルールはとても簡単で、自分の番がくると手札の中から1枚を全体の場に出していきます。
全体の場には9段のピラミッド型にカードを並べていきますが、必ず下の段から並べなくてはならず、2枚のカードの上には、そのカードに書かれた数字の和か差となる数字のカードしか並べられません。

「どんぐりやま」のプレイ風景1

カードに書かれた数字は、「0」から「6」までです。例えば「1」と「4」というカードが下に並べられていたら、その上には「5」(和)か「3」(差)のカードを置くことができます。
また、各数字カードの枚数は7枚ずつの49枚と、「0」から「6」までの好きなカード、もしくは「7」以上の好きな数字として使うことができるワイルドの「☆」カードが1枚の合計50枚です。ワイルドのカードは、話し合って好きなタイミングで場に出すことができます。

これら50枚のカードを使って、9段のピラミッドを完成できたら勝利です。

「どんぐりやま」のプレイ風景2

1年生の子どももいたのですが、置くことができる可能性のある場所が複数あった場合には、数字の計算に少し苦労していたかなという印象です。
また、足し算・引き算を頻繁に使うので、「勉強みたいな感じがした」という感想を持った子どももいました。いつもより、「勉強(算数)」に近いという印象を持ったのかもしれませんね。

1回目から積極的に「ここは置けるよ」「☆使わない?」など声かけをしていたのですが、1回目のチャレンジはあえなく失敗してしまったので、2回目のチャレンジの前に「どうすればよかったか?」を話し合う時間を作りました。
子どもたちは、いろいろな意見を出してくれました。

「どんぐりやま」攻略のための意見出し

「負けた理由」と「では、どうしたら良いか?」ということを尋ねたのですが、すごく実践的なアイデアを出してくれたと思います。
実際、これらのことに気を使ってゲームを進めることでグッと勝利に近づけるのではないか、と思わせる内容ですね!
子どもたちの「ゲームを理解する力」や「分析する力」が成長していっていることを感じます。
さてさて、結果はどうだったかな?

2回目のチャレンジの終了時の様子

惜しい!あと2枚!
2回目のチャレンジも登頂までは行きませんでしたが、確実に1回目に得た知見を生かしてプレイしていたように思いました。「☆」カードを使うタイミングにしても、ここぞ、というところで使うことができていたように思いますが、数字カードを数えていったゆえに、途中で登頂できない(勝利できない)ということが見えていた子どももいたようでした。

実は、上記は1つ目のグループの様子を紹介してきたのですが、もう1つのグループは残念ながら「協力する」というゲームプレイをすることまで取り組めませんでした。
どういうことかというと、全体の場の様子がどうなっていくかに注意・関心を維持することができず、自分の番が回ってきたたびに、その時々の状態から考え始めていた、ということです。(ソロプレイを複数人でやっていたという印象)
これでは、「協力」ゲームをし、そのデザイン上の構造を理解するという目標が達成できそうになかったので、こちらのグループでは次回もう一度「どんぐりやま」をプレイしてみるつもりです。

「協力する」ことに関するヒント

子どもたちに上のようなヒントを示したのですが、そもそももう少し「協力する」というゲームの目標について強調して伝え、「他の人への関心」を喚起する必要があると反省しました。次がんばります。


2、オバケやしきのすうじのアクマをプレイ!

2つ目の協力ゲームとして、「THE GAME」のイラスト違いのゲームである「オバケやしきのすうじのアクマ」をプレイしました。
実は、「THE GAME」については過去のサイコロ塾のレッスンで使用したことがありますので、よかったらルールなどはそちらをご覧いただけたらと思います。

前回このゲームを使用した際は、「程度や量を伝えるコミュニケーション」というテーマでレッスンを行いましたが、今回は「協力ゲーム」の構造を知るということをテーマにしています。

このゲーム自体、ルールはそこまで難しくないのですが、やはり「どう出していけば良いか?」ということに子どもたちは苦労している様子でした。
中には、「自分が今から出そうとしているカードの数字」と、「すでに場に出ているカードの数字」の差の絶対値を比べて、「こっちが良い」ということを判断できる子どももいますが、それでも「10戻し」などには気づかないことが多かったです。

「オバケやしきのすうじのアクマ」の途中経過

とはいえ、なんとか山札をなくすところまでは達成できました!
肝心の「協力する」という部分について子どもたちの取り組みですが、「どんぐりやま」と比べると、若干コミュニケーションの量が少なかったです。
自分がカードを出そうとするときはもちろん、他の人が出そうとしている場面でのコミュニケーション(「できればここには置かないで」「ここは出せる」など)が重要なゲームとは思うのですが、手元にあるカードへの注意と比べて、全体の場に対する注意が弱く、気がついたら(自分の番になったら)出せるカードが「ない」という事態に陥っていることが何度もあったように思います。

1回のプレイで時間をたくさん使ってしまったので、2回目にチャレンジできなかったのは残念でした。とはいえ、「どんぐりやま」と合わせて「協力ゲーム」のゲームデザインについて考える素地は体験できたかなと思います。

3、協力ゲームを分析しよう!

さて、「どんぐりやま」と「オバケやしきのすうじのアクマ」の2つのよく似た協力ゲームをプレイして、「協力ゲーム」のゲームデザインに関する分析を子どもたちにしてもらいました。

ゲームの分析をしている様子

まずは、「どんなときに協力する必要があったか?」について、それぞれのゲームであげてもらいました。

<どんぐりやま>
・持っている数字カードを出すとき
・「☆」のカードを使うとき
・なんのカードを出すかわからないとき

<オバケやしきのすうじのアクマ>
・ここ出したいから、ここ出さないでというとき
・これを出してほしいというとき
・10もどせるカードを持っているとき

プレイの仕方そのものと重複する部分もありますが、それぞれのゲームで「協力」がどういうふうに扱われているか、子どもたちにも伝わっていたように思います。

上の項目について考えてもらった上で、「それでは、協力することを難しくしているのはどんなこと?」ということを分析してもらいました。こちらの質問については、実は明確に2つのゲームで共通する「答え」を準備していましたが、

「協力」することを難しくしているのは?の回答

写真のように、大体の子どもたちが「カードの内容を言ってはならない」という制限に関するルールに言及できていました。

個人的に「協力ゲーム」を作るためのゲームデザイン上のキモとなる部分は、「プレイヤーの何かしらの行動を制限すること」にあると思っています。その点について、子どもたちが2つのゲームを通して感じることが十分にできたのではないかなと思います。

「協力することを難しくしているルール」を考えている様子

それからもう1つ。レッスンを始める前に想定していなかったのですが、子どもの意見でハッと気づいたことがありました。

「協力ゲーム」のゲームの目的に関する記述

それは、ゲームとしての「勝利(敗北)条件」に関するものです。ちょうど、上の図で黄色でマーキングしている部分に当たります。
子どもたちにこれまで紹介してきたゲームは、「他の人と比べてどうか?」ということが勝利条件や目標になることが多かったのですが、「協力ゲーム」ではそれとは異なります。
全員で共通の勝利条件をもち、それと同時に全員で共通の敗北条件を持つ、ということが「協力ゲーム」たり得るために必要ということです。

この気づきを受けて、最後に子どもたちに「協力ゲームをデザインするために必要な要素」を次のようにまとめて伝えました。

「協力ゲーム」をデザインするために必要なこと

来月からは、ゲームを制作していくことになりますが、子どもたちが作ろうと思ったゲームが協力ゲームの場合、上記のようなことを思い出してもらえればと思います。


次回予告

次回からはいよいよ「ゲーム制作」に入っていきます。これまで3ヶ月で、「裏向き一斉公開のメカニクスとその特徴」「ジレンマ」「協力ゲームのデザイン」など、ゲーム制作に関する各論を紹介する形で子どもたちにゲームの分析をしてもらいました。

願わくば、こうした分析を通して、具体的に作りたいゲームがイメージできていればと思いますが、ひとまずは「コンセプトを作る」というところから子どもたちとゲーム作りを一緒にしていければと思います。

それでは、次回のレポートもどうぞお楽しみに!

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