フォーに涙し日本食にまた泣いた。
■世界のスープ料理、ベトナム3位。
・最近のベトナムNEWS(2023年11月22日付)、「『ベトナムのフォー』が世界のスープ料理にランクイン」。
・国際食文化サイト/『Taste Atlas』発表、『世界で最高のスープ料理トップ50』で伝統的なベトナム料理である「フォー」が3位(牛肉のフォー)、5位(生肉と火の通った牛肉のフォー)、25位(鶏肉のフォー)に選出された。
■家庭毎に異なるフォーの味。
・イタリアにはスパゲティ、カッペリーニ、ペンネ等麺の種類によって呼び方が異なるように、ベトナムも同様にフーティウ、ミエン等様々な麺の種類がある、その代表格がフォーである。ベトナムのラーメンと言っても過言ではないだろう、フォーの形状は日本のきしめんに似ており原料は米粉と水である。
・北部発祥であるこの国民食は全国どこでも食す事が出来、鶏肉や牛肉をベースにしたブイヨンに様々なスパイスを加えて煮込み、香り高く深い味わいのスープだ。また、家で作られるフォーはその家庭独自の味があり、まるで日本の各家庭のカレーの味や具材が異なるのと同じで、ベトナム人家庭にご招待頂いた時等このフォーを頂くのも楽しみのひとつである。
■フォー屋で「フォー」を注文出来ない。
・余談、私がベトナムに暮らし始めた頃、ベトナム語も読めず話せず状態、そして大抵のローカル飲食店は日本の様な写真付きメニューはなく、ベトナム語オンリーで表記される。フォー屋で「フォー」と伝えても発音が全くダメで、店員に意味不明な顔をされ注文から苦労していた。
・「ファォー」、「フォオ」、「フォァッ」、「フォッ」、「フオー」と私なりに試行錯誤して懸命に伝えるも最終的に外国人が「あぁーっうーっ」と言っているようにしか聞こえないのだろう、その内店員は私との会話を勝手に諦め奥に引込んでしまった、そして私は店内のテーブルにひとり取り残された。
・「と言うか『フォー屋』に外国人が来て、それらしき言葉を試行錯誤し麵を啜るジェスチャーまでしながら必死にフォーフォー言っているのだから多少は汲取る努力をしてくれよ」と私は相手のせいにし始め、半ばダメな日本人と化していた。
・それでも、「生きるために食べなくてはいけない」、とにかく必死になって食事を求めた、誰かが食べている何かを指差し、そして「ひとつ」と伝えるため人差し指一本を見せ漸くフォーにありつけた。
・「ベトナム語は世界で1番発音が難しい言語」と言われており、一朝一夕でベトナム語が話せる訳でもない、翌日も指差しとジェスチャーでフォーを食べた、同じ動作しかできないため次の日も、その次の日もフォーしか注文できなかった。白ご飯や魚やお肉が食べたいのに食べられない、それが大変なストレスになる事を私は人生で初めて知った。フォーを食べながら自然と私の頬を涙がつたっていた事を思い出す。
・生活も落着き、日本人コミュニティとの繋がりも出来始め、仕事帰りある日本人と日本食屋で一緒に夕食を共にする機会があった。半年ぶりに食べる日本の定食は心の底から美味しいと思った、日本食で生まれ育った私は改めてお醤油の美味しさを噛み締め五臓六腑に染み渡っていく事を感じ、お味噌汁、焼き魚、ご飯、おしんこを食べ「なんて美味しいのだろう」とまた涙が溢れた。
・今回の涙の理由は、日本食の懐かしさ温かさ、ご一緒した日本人の方の優しさもあったのだが、少ない所持金で誰も知らない世界で言葉も通じず自分の足で生活をして行けるようにと日々を励んでおり、なんとか生活していけそうな感覚を得られた安堵感からくるものだった。普通の定食、特別な料理でも何でもない、でも私はあの時に食べた日本の味を、少しだけ塩辛くなってしまったあの味をこの先も決して忘れる事はないだろう。