
太陽の塔の内部潜入がオマケになったのは、先に「みんぱく(国立民族学博物館)」に行ってしまったから♪
「太陽の塔」は岡本太郎氏がデザインした1970年アジア初の万国博覧会のシンボル。今もなお、大阪・吹田に遺構のように佇んでいる。僕が生まれたのは1971年なので万博は知らないのだけれど、高速道路(中国自動車道)から「太陽の塔」が見えてくると吹田に着いたと知らせてくれる目印のようであった。
岡本太郎氏は“芸術が爆発だ!”というフレーズの当人である。TVメディアでの使われ方の影響だろうか、天才で掴みどころのない芸術家というイメージが先行しているけれど、彼の著書『今日の芸術』は読みやすくて、シンプルな思考に触れることもできる。また、太陽の塔は浦沢直樹氏の漫画『20世紀少年』に出てくる「ともだちの塔」のモデルでもある。
万国博覧会当時はメインパビリオンの動線となっており、内部にはエスカレーターが稼働していたと聞く。閉幕後50年近く経っているが、それまで一般への内部開放はされておらず、傷んだ造作の補修や耐震補強などを経て、昨年(2018年)にリニューアルオープンとなった。
冒頭写真は太陽の塔内部にある"生命の樹"。リニューアルされたエントランスから"生命の樹"の階段までのフロア(地下)は写真撮影可能。
太陽の塔地下にある"地底の太陽"
同フロア壁面に展示されていた太陽の塔のドローイング
太陽の塔の裏側にある"黒い太陽"
太陽の塔への入館は事前予約が必要となっており、僕が取れたのは14:30入館となる。20分前には受付集合という段取りであったので、それまでの時間を同じ万博記念公園にある「みんぱく(国立民族学博物館)」で時間を潰してから太陽の塔を堪能しようかと計画してみたが、行ってみるとそれどころではなかったのである。
数時間どっぷり鑑賞した「みんぱく(国立民族学博物館)」
初めて「みんぱく(国立民族学博物館)」を訪れたのは20年以上前のこと。当時、大学の友人らとツーリングのひとコマとして立ち寄った記憶が少し蘇ってくる(懐かしい♪)。「世界」というとTVを通して知りえる知識程度で、特に海外への関心もなく、誰かの発案で流れに身を任せて休憩がてらに「みんぱく」に立ち寄った気がする。今思うと民族学の奥深さなんてまったく心に残っていなかったのだ。
「みんぱく」と言えば、最近は「民泊」を指すけれど、ココでは「民族学博物館」を指している。
今回も足早に2時間ほど鑑賞してから昼食を取って太陽の塔に向かおうと、20年前と同じように特に期待せずに立ち寄ったのだけれど、まったく違う体験となってしまった。
当然、20年の間に博物館も大きく様変わりをしているだろうが、むしろ僕自身が何度も海外を訪れる機会があったり、海外の文化に関わる仕事をしていたり、日本の伝統工芸や地元の神事に関わることになったりと、僕そのものがまったく別人になっていたこと(プロフィール)で刺激的でとても心地よい時間を過ごすことになった。
午前中には万博公園にいたが、昼食は惜しまず飛ばして数時間どっぷり鑑賞する。太平洋の赤道付近ミクロネシアからオセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、南アジア、西アジア、東南アジア、東アジア(朝鮮半島、中国、日本)というように区分された地域展示はまさに世界旅行。インターネットで世界を徘徊するアナログ版のようでもあるし、Wikipediaのテーマパークみたいな感じ…(スゴく褒め称えたいのだけれど、いい表現が思い浮かばないー♪)
写真撮っても良いとのことだったので当日の展示を振り返っておく。
A1 オセアニア
太平洋に浮かぶ大陸や島々を中心とした広大な領域。会場エントランスの床全面にその地図が描かれており、意外にサイパンが日本の近くなんだと知ったりできた♪
小さな舟で島々での交易や生活をしていた民族。その長閑な暮らしぶりが伺い知れる。16世紀初頭、ヨーロッパによる大航海時代にて様々な民族との接触が起こることで日本同様大きく様変わりしていったのであろう。無人島に流れ着いた男性のサバイバル生活を描いた映画『キャスト・アウェイ』が頭を過る。
A2 アメリカ
いわゆるラテンアメリカとして中南米を主に紹介されていた気がする。将来、仕事で関係を持つことになるとは学生の頃には思いよらない。北アメリカはインディアンの関わるものもあった気がするが、あまり記憶に残っていない。ちなみに、ネイティブ・アメリカンは「インディアン」、「サモア人」、「ミクロネシア人」、「アレウト」、「ハワイ人」、「エスキモー」全てを表す総称らしいー
腰機(こしばた)
メキシコ・オアハカ州サン・ファン・コラードで使われていた織物を作る道具。先を柱などに括り付けて、手前は腰で支えてテンションを作る構造。木枠など無い。
こちらもメキシコ、キリスト教の偶像だったか?
ボリビアの福の神「エケコ人形」に通じる?
中庭スペース(屋外)にあるアステカ文明(15ー16世紀はじめ)にかけての遺跡の複製。神殿型石彫(複製)、シウコアトル巨像(複製)、コヨルシャウキの巨像(複製)、コアトリクェの巨像(複製)
空想的な生き物の工芸品「アレブリへ」。
典型的なアレブリヘはメキシコ市で制作される怪物の紙人形だが、オアハカ州の木彫も形や色彩が「空想的な生き物」を思わせることからアレブリヘと呼ばれることもあるようだ。正しい認識とすると、オアハカのものは「カラフルな木彫り」という感じで特に決まった言葉は無いみたい、「アレブリへ」じゃない!
A3 ヨーロッパ
かつてのヨーロッパでの交易や戦略的な拠点であった都市ベオグラードにあったイコン(聖人、天使など聖書における重要出来事など画いたもの)や亜麻からリネンの作り方など...(写真は撮影していなかった)
A4 アフリカ
アシャンティ王国、17世紀以降王都クマシを中心に勢力を誇り、早くからヨーロッパとの接触もあって文化への影響が残る。写真は王族が使ったであろう日除け傘(パラソル)。京都の神事(やすらい祭、ずいき祭)で見られるような花傘のような形状だ。
カメルーンの人像。
非常に多くのビーズ(犬の歯、卵の殻、貝殻、種、琥珀、鉄、化石、鉱物、ガラス、プラスティック...)で装飾されている。
A5 西アジア
「キスワ」
メッカの聖モスクの中心にはカアバ神殿があり、そこにはキスワとよばれる黒い幕。アラビア文字が刺繍された曼荼羅みたいだー。(なんと、1970年、大阪で万国博覧会がひらかれたおりにサウジアラビア政府より寄贈されたものらしい!)
B1 音楽
...いろいろ楽器があったような? ギター(ギタロンも含む)が壁面一杯に展示さていた。ここだったかな、アジアの打楽器(金属)の試し打ちスペースがあって、ビデオに合わせて叩いてみたけど、難しいわ♪
B2 言語
はらぺこあおむしの絵本がたくさん並んでいたけど、今回はスルーした。。。
B3 企画展示
準備中でした。
B4 南アジア
ヒンドゥー教のドゥルガー女神だったか?
立体マンダラ。
チベット仏教の祭壇、仏教的世界を立体的に表したもの。
なんだったか...
ネパール・カトマンズのマンダラ。
金属製の板に彫りを入れて作られている。
ドゥルガー女神が描かれたミティラー地方の宗教画。
結婚式や男子の成人式などに家の壁を飾るための絵で、描くの女性だという。
B5 東南アジア
ジープニー(フィリピンの全土でみられる乗合タクシー)。
頭に書いているのは「SARAO」という自動車メーカーのスペル。
獅子舞のような仮面。
先ほどのジープニーの面影がある気がするけど、どうかな?
西ジャワの人形劇ワヤン・ゴレックの人形たち。みんぱくでは7分弱の映像も視聴できる。
映像作家ヤン・シュワンクマイエルの作品に出てきそうな紙人形。
C1 朝鮮半島
韓国、京畿動北部の巫神図(ムシンド)。
歴史上の名称や伝説上の人物、道教の神などが描かれたりしてシャーマンが用いる道具。写真では「秦廣大王」と書かれているようだが「閻魔大王」と同じかな?
日本の花札と韓国の花札。その絵柄に服飾の違いがちゃんと表現されている。
C2 中国地域(東アジア)
中国・北京市、2003年に制作された凧たち(けっこう大きい)。蝶やトンボをモチーフにしている。
C3 中央・北アジア
ウズベキスタンの織機にて織られている経絣(たてがすり)。
絹や綿の織物が古くから生産されていたそうで、平織りはアドラス、綾織はアラチャ、繻子織はアトラス、ベルベットはバフマルと呼ばれる。(つい先日、絣織を知ったばかりだった♪)
モンゴルの遊牧民は、ヒツジ、ヤギ、ウシ(ヤク)、ウマ、ラクダの5種類の家畜を群れとして放牧し、冬は北西風を避け、春は家畜の出産に立会い、夏は乳製品を作り、秋は頻繁に移動を繰り返し新鮮な草を家畜に食べさせて、越冬に備えるとのこと。写真はゲル(天幕のモンゴル語)の中の寝具と絨毯。
モンゴルの楽器、馬頭琴(ばとうきん)。
そもそもモンゴルは1992年に憲法にて土地の所有が認められたとのことで、その以前は家畜こそが富の象徴であったが、銀細工など施された馬頭琴もインテリアとして価値があるという。『スーホの白い馬』って悲しい物語だったよね。
ロシア・ブリヤートの火打ち具。
煙草に火を付けるための道具である。煙管(キセル)や嗅ぎタバコの文化があって、刀、箸、火打ち石のセットは盛装する際に帯にぶら下がる装身具とされている。
C4 アイヌ
ロシアの極東に位置するサハリンには、アイヌの他にニヴフ、ウイルタなどの民族も暮らしてきた。ウイルタは伝統的にトナカイ飼育に従事し、トナカイのなめし皮に色糸で精巧な刺繍を施すことで知られているそうだ。
アイヌの衣類。
身近にある植物繊維や動物の皮などを素材にして、季節や目的に応じたさまざまなものが作られた。交易などで手に入る布や糸を用いて華やかな晴れ着を作ったり、ガラスや金属製の装飾品なども身に着けていたとされる。
アイヌには「カムイ信仰」があって、天上にあるカムイの世界では人間と同じ姿で家族や仲間と暮らし、人間の世界に来るときには動物などに姿を変えると考えられてきた。
C5 日本
ねぷた祭(青森県、弘前市)。
地域によって呼び名や形態に違いがあって、青森周辺は「ねぶた」と呼び、横に広がる組ねぶたが特徴。弘前周辺では「ねぷた」と呼び、武者絵、裏の見送りには美人画を描くなど扇の形に特徴がある。
藁などをもちいて作られたさまざまな地方の正月飾りや御幣(神祭用具)など。
熊本県・山都町 八朔大造り物 仁王像。
毎年9月に行われる八朔祭にて、杉の葉やススキなど野山の採集物を用いて作られる。
煙草屋、薬屋、書道道具屋、飴屋、両替屋、数珠屋の看板。
日本各地で物見遊山として観光ブームが起こる。その当時の各地のパンフレット。
ちなみに、昼食は太陽の塔の内部鑑賞を終えてから「みんぱく」のレストランで鶏肉のフォーランチをいただいた。別添えのパクチーを全部のせて、レモンをぎゅっと絞るとそこはベトナム♪ww
改めて調べると、もちろんホームページもあるわけだけれど、図書室やビデオライブラリーなど、その情報は膨大。年に一度は訪れても良いかと思っている。
追記:みんぱく本館展示場バーチャルミュージアム
https://www.minpaku.ac.jp/panorama/main/