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サロンの課題解決が地域を変えるかもしれない:次世代/専門職の視点から考える〈行方市〉

こんにちは!
私は令和6年度より、行方市麻生地区にて高齢者サロン「楽らっく」の立ち上げと運営を手掛けております田宮 優と申します。
本日は、地域におけるサロンの役割や現状、サロンの今後の課題や展望について、作業療法士として/若者としての視点も交えながらお話させていただきます。少し真面目な内容となりますが、最後までお読みいただければ幸いです!

| 自己紹介(改めて)

私は2000年生まれ、茨城県行方市出身です。高校は鉾田第一高校を卒業後、茨城県立医療大学の作業療法学科に入学し卒業しました。その後、他市で作業療法士として介護予防事業や患者様や利用者様へのリハビリテーションの提供に携わっています。現在、作業療法士として2年目を迎え、地域作業療法や介護予防、社会的処方・社会参加支援、さらには地域づくりや地域おこしの分野にも関心を持ちながら活動しています。現在は常勤で働いている傍ら、地域づくり、地域おこし活動、高齢者サロン「楽らっく」の運営、他市のサロンに訪問し講師として協力させていただくなど幅広く活動させていただいています。時には作業療法士としての役割を柔軟に捉え、地域に寄り添った取り組みを目指しています。


| なぜふれあい・いきいきサロン事業に関心があるのか

私は現在、作業療法士として利用者様や患者様にリハビリテーションを提供する業務を主軸に、他市での介護予防事業に携わっております。超高齢社会が進展する中で、「病気を治す時代」から「病気を予防する時代」へと大きな変化が求められています。そのため、専門職として、高齢者の方々が住み慣れた地域でその人らしい生活を維持できるよう支援し、地域での自立した生活の実現に向けた取り組みに力を注いでおります。

◆専門職としての関わりの課題

通所型サービスについて 厚生労働省

リハビリテーション職は、介護予防事業の通所型サービスC(短期集中予防サービス)に携わる機会が多いと思います。そこでは、3~6か月という限られた期間内で、精度の高いアセスメントと心身機能向上を目指した支援を行うこと、短期間での集中的な取り組みにより、参加者の意欲を高め、主体的な生活への動機付けを促すことを意識的に取り組んでいることと思います。

出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「新しい総合事業の移行戦略-地域づくりに向けたロードマップ」(平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)

介護予防事業における通所型サービスCは一定の成果を上げている一方で、課題も多く存在していると考えます。特に、プログラム終了後に参加者が日常生活へ円滑に移行できる「ソフトランディング」のデザインが重要であり、これが事業の成否を左右する大きなポイントとなっています。そのため、地域資源の活用が欠かせません。具体的には、ふれあい・いきいきサロン、公民館講座、趣味クラブ、さらには通所型サービスA/Bとの連携を積極的に図る必要があります。

しかし現実には、参加者の固定化、卒業後のフォローアップの不足、地域連携の不十分さといった課題が依然として存在します。これらの課題に対応するためには、リハビリテーション職だけでなく、多職種連携による包括的なアセスメントと、地域資源の適切な接続が不可欠です。地域全体で支える体制を築くことで、参加者が主体的な生活を継続できる環境を整備できると考えます。

これらのことは、私自身の専門職としての挑戦であり、同時に個人的な課題でもありますが、高齢者が自分らしい生活を取り戻し維持できる仕組みを作るために、引き続き全力で向き合っていきたいと思います。


◆「住民連携」「地域づくり」につながる両事業の連動性を意識が必要


私は、これまでの専門職としての関わりを通じて感じた課題から、今後の地域福祉・高齢者福祉においては「住民連携」と「地域づくり」の両事業の連動性が必要不可欠だと考えています。しかし、これを実現するのは決して簡単なことではありません。社会福祉協議会や地域包括支援センターも、高齢者福祉だけでなく地域福祉全般にわたる多忙な業務を抱えており、それを補う形で私たち専門職がまず土台を作っていくことが重要だと感じています。

その中で、私は「通所型サービスB」に注目しました。このサービスは、住民が主体となる「ふれあい・いきいきサロン」は介護予防・日常生活支援事業の「通所型サービスB」に位置付けられるとも言われています。サロンは住民運営の集いの場として地域とのつながりを築く重要な役割を果たしています。この仕組みに専門職が関わることで、地域福祉への貢献や住民との連携の促進につながる可能性があると考えていました。

そこで私は、サロンの立ち上げに取り組みました。サロンを通じて地域住民の交流や支え合いを生み出し、少しでも地域福祉の向上や事業間の連動性の強化に寄与したいと考えています。このような取り組みが、地域全体で高齢者を支える仕組みの構築へとつながる一歩になることを信じています。

| サロンとは(ふれあい・いきいきサロン)

▶ふれあい・いきいきサロンの歴史(介護保険制度の変遷を交えながら)

「ふれあい・いきいきサロン」事業は、平成6年(1994年)より、全国社会福祉協議会を中心に取り組まれ始めました。介護保険制度が施行されるより前に始まった事業なんですね。

介護保険は2000年4月1日に施行され、今年で25年を迎えます。この間、介護保険制度は「歩きながら考える」状態が続いてきました。高齢化の急速な進行と介護需要の拡大を受け、厚生労働省は令和4年度の「介護保険事業状況報告」を公表しました。この報告によると、介護保険と介護予防に関する給付費は前年度比0.8%増の10兆5100億円に達し、過去最高を記録したことが明らかになっています。

2006年の介護保険制度の改正では、「予防重視型システムへの転換」、つまり「介護予防を重視する仕組み」が導入されました。この改正により、要介護者への介護サービスと、要支援者へのサービスを分けて考えるようになり、要支援者を対象とした「予防給付」が新たに設けられました。

さらに、要支援者のケアプラン作成や支援を専門的に行うため、「地域包括支援センター(介護予防支援事業所)」が設置されました。このセンターが、要支援者のケアマネジメントを担う役割を果たします。

加えて、市町村が主体となり、介護予防事業や高齢者を支えるための「包括的支援事業」などを含む「地域支援事業」を実施する仕組みも整えられました。これにより、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、地域全体で支える体制が強化されました。

2006年の介護保険制度改正で「介護予防重視」の流れが進む中、高齢者の中には身体的には自立しているものの、外出する機会が少なくなり、地域とのつながりが減る「閉じこもり」が課題として注目されました。
そこで、高齢者の孤立予防、外に出て人と交流できる場として「ふれあい・いきいきサロン」が注目されるようになりました。このサロンは、閉じこもりの防止や孤立予防だけでなく、高齢者が安心して集える居場所づくりや介護予防の役割も兼ねており、地域全体で高齢者を支える仕組みとして重要視されています。

▶行方市、行方市近隣市町村のふれあい・いきいきサロンの数

社会福祉協議会の各市のホームページで調べたところ、ふれあい・いきいきサロンの数は以下のようでした。

  • 行方市:5つ

  • 潮来市:10つ

  • 阿見町:18つ

  • 鉾田市:32つ

  • 鹿嶋市:40以上

  • 小美玉市:60以上


| ふれあい・いきいきサロンの現状・課題

地域のニーズに応じてサロン活動も居場所づくりや集いの場、介護予防、憩いの場など様々な機能が期待されていますが、一方で課題も存在しています。
現在、他市のサロン代表者との意見交換を通じて、以下のような課題が浮き彫りになっています:

・参加者の固定化および減少
新規参加者の獲得が難しく、既存参加者の高齢化や離脱により、参加者層が狭まりつつある。

  • 担い手不足の深刻化
    運営を支えるスタッフやボランティアの確保が困難で、人材の高齢化も進んでいる。

  • プログラム内容のマンネリ化
    サロン活動が単調化し、参加者のモチベーション維持が難しくなっている。

  • 運営者の負担増加
    人手不足や複雑化する運営課題により、運営者の精神的・身体的負担が増大している。

  • 参加者と運営者の断絶
    サロンは共に創る、運営と参加者という意識ではなく「みんなで創る」ことの意識が難しい。

  • 開催の継続性の確保が困難
    会場の確保や運営資金の制約により、安定した開催が難しくなっている。

  • 周知・広報の課題
    サロンの存在や内容が地域住民に十分に認知されておらず、参加促進が難しい。

これらの課題の背景には、サロンを支える地域資源が地域ごとに大きく異なるという現状があると考えられます。また、個人的には現在のサロンが閉鎖的な「内輪感」を持っている側面があると感じています。この状況を打破するためには、より多様な人々がサロン運営や活動に関わる仕組みづくりが求められます。その結果、地域住民組織との連携が強化され、地域全体での共助の基盤が拡充されることが期待されます。

| 今後、自分は地域で作業療法士/地域の若者としてどうサロンを運営、サポートしていくか?

楽らっくの様子

これまで少し難しい話が続きましたが、自分の運営している高齢者サロンにも注目してみたいと思います。現在、私は作業療法士として、そして24歳の若者としてサロンを運営していますが、意外にも地域に溶け込みやすいと感じています。また、サロンの参加者の皆さんが準備や片付けを手伝ってくださるおかげで、「場づくり」から「役割づくり」への移行も順調に進んでいるように思います。若い20代の私が運営しているメリットとして、場の内輪感がなくなり、結果として「受け皿が広がりやすく」なっている点も挙げられます。例えば、「楽らっく」を麻生地区だけでなく、65歳以上の行方市民全体に開放しているのも、「受け皿を広げる」意識からです。これによりサロンの多様性も生まれ、最終的にはこれまで挙げたサロンの課題にも解決の糸口が見えてくると考えています。


茨城県生涯学習情報提供
システムより


今後は、地域の他のサロン運営者の方々の「プログラムのマンネリ化を解消するサポート」をさらに広げていこうと考えています。2024年は、ありがたいことに約30団体にお伺いさせていただきました。転倒予防体操や認知機能低下予防プログラム、スクエアステップ(スクエアステップ指導員資格あり)、コグニサイズ、ボッチャ、モルックなど、少しでもお役に立てることができればと思っています(そう願っています)。市内だけでなく、市外のサロンや福祉団体とも繋がり、結果的には茨城県全体の地域福祉の発展に貢献できればと考えています。何かご相談や質問があれば、気軽にメール(rakusalon2525@gmail.com)か茨城県生涯学習情報提供
システムで高齢者教育で記載していますのでご連絡ください。

                           田宮 優

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